第12話
結奈はうん、うんと頷き楽屋の扉を開ける。
「ゆきくーん!」
蘭ちゃんは楽屋が開いた瞬間福本くんの元へ走る。
「蘭ちゃん、どーしたの?」
福本くんは持ってたギターを置き蘭ちゃんの方を向く。
「ゆきくーん……」
そう言いながら福本くんに抱き着く。
福本くんは蘭ちゃんの頭を撫でながら心配そうに蘭ちゃんを見た。
「何かあったの?」
福本くんの言葉に蘭ちゃんは小さい声で呟く。
「おーさわの元カノに、チビでガキって言われた……」
楽屋の空気が止まった。
「おれの……もとかの……?」
和政が不思議そうにバチを置いて立ち上がる。
結奈がハァ、とため息をつき和政に近づく。
「元カノじゃないけど、あんたの知り合い。
何なの?!あの崎本とかいう女は!」
怒る結奈をカクちゃんが宥めにはいる。
結奈はカクちゃんに和政ではなくカクちゃんに崎本さんのことをすごく悪いように言った。
「カクも、きいてよ!
詩織のことバカにするし、あげく先輩達に向かって身分違い的な発言したんだよ!」
「え?!そうだったのか?」
結奈の言葉に野上先輩が伊達先輩に聞く。
「大澤、あいつ誰だ?」
伊達先輩は野上先輩を無視して和政を見て聞く。
スズと流星先輩は二人仲良く飲み物を持って入ってきた。
「……崎本さんは俺の父さんの知り合いの娘です」
「だけど、むかし下の名前で呼び合ってたって!」
蘭ちゃんの言葉に和政は少し考える。
「あぁ、確かに呼んでたね。俺が小二くらいまでは。今の今まで忘れてたけど」
あまりの静かな雰囲気にスズは心配そうに私の顔を覗く。
「そもそも俺はあの子に会ったのも、こないだのパーティーが二年ぶりくらいだよ」
静かになった結奈にスズは静かにお茶を渡す。
「だけどあの子は大澤のこと好きだよ」
結奈の言葉を聞いて私はビックリした。
「え……?そうなの……?」
そんな私を見て結奈は頭を抱える。
「やっぱり……。
言っとくけど、詩織に言ってたことは全部、嫌味だからね?」
「え?どーゆうこと?」
和政は結奈に歩み寄り眉をひそめて聞いた。
そんな和政の腕を私は掴む。
「しおり?」
「私、何も言われてない」
私の言葉に結奈がため息。
「でも春日はいま……」
「私にはそう感じなかったから」
和政はまだ何か言いたそうだった。
「崎本さんは悪いことしてないから、ね?」
それは事実だ。
「……詩織がそう言うなら、俺は何もしないけど」
私は本当に何もわからなかった。
あれが嫌味だっていうのにも、崎本さんが和政のこと好きだってことにも、そして私は和政のこと何も知らないんだってことにも。
時々、仲の良い友達には鈍感だとか、言われてた。
きっと私は本当に鈍感なんだろうね。
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