音洩れ禁止~防音室にて~
第1話
お昼の時間。
私はお弁当箱を閉じながら思わずため息をつく。
「スズ、お腹空かないの?」
そのため息を聞いて隣に座っていた詩織が心配そうに言ってくれた。
「うん。空かないや……」
私の言葉にビックリする結奈ちゃん。
しかしすぐに納得したように空の箱を包み直した。
「流星先輩に会えないからか」
結奈ちゃんのズバリな言葉に私の顔はすぐに赤くなる。
「……図星かぁ」
結奈ちゃんは楽しそうに私のことを見つめ直した。
「スズも辛いんだね……」
最近元気のないあーちゃんこと
「辛い訳じゃないけど……」
その時、クラスの扉がガタンと勢い良く開き私は思わず立ち上がった。
「おーさわせんぱい!」
その声を聞いて私は慌てて席に着く。
「先輩な訳ないでしょーが」
お茶を飲みながら結奈ちゃんは呆れている。
私の彼氏の
私はその生活にまだ今ひとつ、慣れない。
「会ってないって言っても、たかだか五日でしょ?」
私はこくん、と頷く。
「それくらい今までも会えないことあったでしょ」
それには首を横に振った。
「四月は新入生歓迎会とか入部のこととかがあったから毎日のように来てたし、それからはライブの練習で毎日来てた」
しかし、ライブが終わり今はテスト一週間前の為、部活は停止である。
「こんなに会えないなんて、二年の時の修旅以来だよ……」
それに修学旅行はまだ良い。
だって友達と遊べて、とっても楽しいから。
だけど、この一週間は先輩に会えない上に勉強しなくちゃいけない。
「スズ……、先輩のことを愛しているんだね……」
あーちゃんが私を見てしみじみと呟いた。
私はまだ重いお弁当箱を静かに鞄の中にしまって次の授業の支度をした。
あ、今更だけど自己紹介。
坂本
軽音楽部のギャラスタってゆうバンドでキーボードをやってます。
そしてそのバンドのボーカルが私の彼氏の流星先輩です。
「さーかもーとさーん?聞こえてますかー?」
「へ?あ、はいっ!」
私は慌てて立ち上がるけど、どこを読むべきか分からない。
「坂本さん、聞いてなかったのー?」
「あ……、ごめんなさい……」
先輩に会えないことがこんなにも私に精神的ダメージを与えてしまうとは……。
「……せんぱい」
思わず出た言葉に自分でもビックリ。
勝手に顔が熱くなり、もう恥ずかしくて机に顔を伏せた。
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