元素融合と原子、そして中和剤


 アルトリウスは黒板の四大元素の図を指し示しながら、次の講義へと移った。


 「さて、次に進もう。錬金術において、四大元素を理解するだけではまだ足りない。真に物質を扱うためには、元素融合と原子の概念、そしてそれらを制御するための中和剤について学ばねばならん。」


 彼はゆっくりとチョークを走らせ、「元素融合」と大きく書いた。


 「まず元素融合だ。簡単に言えば、異なる元素同士を結びつけ、新たな物質や効果を生み出す技術のことだ。しかし、これを行うには、元素同士の相性や反応速度、安定性を考慮しなければならない。」


 エメリウスとカインは真剣な表情でノートを取り始めた。エメリウスは以前の予習で少し触れた内容だったが、アルトリウスの説明は遥かに深く、具体的だった。


 「例えば、火と水を無理に融合させようとすると……」


 アルトリウスは手元のフラスコに赤い粉末と青い液体を慎重に混ぜる。次の瞬間、フラスコ内で泡が弾け、勢いよく蒸気が立ち上った。


 「このように反発し、場合によっては爆発を引き起こす。だが、融合に成功すれば、驚くべき効果を持つ新しい薬剤や合金を生み出すこともできる。」


 生徒たちは神妙な面持ちで頷いた。


 「では次に、原子について説明しよう。原子とは、すべての物質を構成する最小単位だ。錬金術では、これを理解することでより精密な調合が可能となる。火・水・風・土は、すべて原子の異なる組み合わせでできている。」


 黒板に描かれる複雑な原子図を見ながら、エメリウスは考え込む。


 「つまり、四大元素もさらに細かく見ていけば、別々の特性を持つ原子の集合体にすぎないんですね。」


 彼の呟きを聞き取ったアルトリウスは、満足げに頷いた。


 「その通りだ、フェルド。元素の根源を知れば知るほど、より自由に物質を操ることができる。だが、自由には制御が必要だ。」


 そして、次に「中和剤」と書き込む。


 「そこで登場するのが、中和剤だ。錬金術師が調合する際、異なる元素同士がうまく結合しないと、不安定な反応を引き起こすことがある。それを防ぎ、融合を安定させるために用いるのが中和剤だ。」


 アルトリウスは薬瓶を取り出し、中に入った透明な液体を生徒たちに見せる。


 「これは初心者向けの基本的な中和剤だ。風と土の反発を防ぐためのものだが、使用する分量や配合を間違えると逆効果になることもある。」


 エメリウスは真剣な表情で瓶を見つめ、カインは小声で「難しそうだな……」と呟いた。


 「もちろん、中和剤にも種類がある。安定化剤、強化剤、促進剤など、用途に応じた調合が必要だ。」


 アルトリウスは授業を締めくくるように手を叩いた。


 「よし、今日の講義はここまでにしよう。次回は、実際に中和剤を使った簡単な調合実験を行う。忘れずに予習しておくように。」


 エメリウスとカインは顔を見合わせ、これから始まる実習に期待を膨らませるのだった。


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