第26話:「隠しきれない微笑み」

学園祭が終わり、しばらくしてからのある日。紗月と美咲は放課後の軽音部の部室でまったりと過ごしていた。


「ねぇ、美咲ちゃん。」

「なに?」

紗月が隣に腰掛け、じっと美咲を見つめている。


「この間の学園祭の夜のこと、覚えてる?」

「……忘れるわけ、ないでしょ。」

美咲は少し頬を赤らめながら目をそらした。


学園祭の夜、紗月が真剣な表情で告白してきたあの瞬間。それから二人は、お互いをより意識するようになり、気持ちが通じ合ったことを実感していた。だが、二人とも口ではお互いを「友達」と呼び続けている。


「ほんとに美咲ちゃんってば、かわいいよねぇ。」

「な、何よ突然!」

照れる美咲を見て、紗月は楽しそうに笑う。


「だってさ、学園祭以来、美咲ちゃんが私を避けてるように見えるんだもん。」

「そ、そんなことない!」

「でも、こうやって近くに座るとすぐ顔赤くなるし。」

紗月がからかうように、美咲の顔をじっと見つめた。


「……そ、それは…」

美咲は言葉を詰まらせ、思わず机の上の楽譜に目を向ける。


「ごめんね、美咲ちゃん。あの夜から私、つい調子に乗っちゃってるかも。」

「……そんなことないよ。」

美咲は小さな声で答えた。


「え?」

紗月が耳を澄ませると、美咲は顔をあげ、少しだけ真剣な表情を浮かべた。


「むしろ、あの夜のこと…すごく嬉しかった。」

「ほんと?」

「……うん。けど、どうしていいかわからなくて…。」


紗月はその言葉を聞き、ふっと優しい表情を浮かべた。そして、そっと美咲の手に触れる。


「わからなくてもいいよ。私たちらしく、ゆっくり進もう。」


その言葉に、美咲の表情が和らいだ。


「うん、ありがとう。」


二人は自然と笑顔になり、部室の空気がふわりと温かくなった。その瞬間、ドアが勢いよく開いた。


「おーい!まだ部室にいるって聞いて来たぞ!」

元気な声とともに、奏と千佳が顔を覗かせた。


「わっ、いい雰囲気だったのに!」紗月がふざけて手を広げる。

「え?何か邪魔しちゃった?」千佳が首を傾げる。

「別に何もないよ!」美咲が慌てて答えると、奏がニヤリと笑った。


「そうか~?なんか怪しいけどな。」

「ほら、片付け手伝ってって言いに来たんだよ。行くぞ!」


奏に促される形で、紗月と美咲も席を立つ。気持ちを隠そうとする美咲に、紗月は小さくウインクを送り、そっと耳元で囁いた。


「また後でね、美咲ちゃん。」


美咲は顔を赤らめながら、小さく頷いた。その後ろ姿を見て、紗月は楽しそうに微笑んだ。




次回予告

新たな日常が始まる中、二人の仲が少しずつ周りにも見え始める。果たして軽音部の仲間たちはどのように二人をサポートするのか?そして次回、思わぬイベントが二人を試すことに!?

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