第6話

「あの、名前の方をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」


そう聞いてきた老人に、

「名前、ですか?」


私は聞き返した。


「あなたのような心優しい親切なお方の名前を心に刻みたくて」


老人はエヘヘとはにかんだように笑った。


「そ、そうですか…」


親切って、私はそんなつもりはないんだけどな…。


そう思いながら、

「桜井つづりです」


私は自分の名前を言った。


「桜井さんですね。


ありがとうございました、ではまた」


「はい」


老人はヒラヒラと手を振りながら、改札の方へと向かって行った。


私はペコリと頭を下げて、彼を見送った。


老人がホームの方に行ったことを確認すると、私は駅を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る