第8話

「んんっ?」


易者がうなるような声をあげた。


「あの、何か…?」


そう問いかけた私に、

「近いうちに、あなたにチャンスが訪れます」


易者が答えた。


「チャンス、ですか?」


「人生の中で1番大きなチャンスです。


このチャンスを逃してしまった場合、あなたは1人寂しく生涯を終えなければいけません」


「そ、そうなんですか?」


「あなたに訪れるチャンスはあなたに幸運を与えてくれます。


間違っても、このチャンスを逃してはいけませんぞ」


易者が虫眼鏡から顔をあげた時、

「莉亜、何してるのー?」


若菜の声が聞こえた。


「えっ、ああ…」


視線を向けると、電話を終えた若菜が私の目の前にいた。


「これ以上遅くならないうちに早く帰るわよ」


「ああ、うん」


そうだ、お金を払わなきゃ。


そう思って易者の方に視線を向けたら、

「…あれ?」


私の目の前にいたはずのその人はいなかった。

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