俺の姉ちゃんが転生者!!!
あえch
第1話 姉ちゃんと、一緒に…
俺は、姉ちゃんが大好きだ…
「姉ちゃん、遊ぼ!」
平和な村で、姉弟二人で…
俺は、俺たちは…幸せの絶頂だった。
俺の名前は『ネルフ・ムラン』
みんなは、俺のことを『ネルフ』って呼んでる。
「ネルフ~、ご飯食べよ~」
「うん!今行く!」
食卓から姉ちゃんに呼ばれた。
俺は、寝室を飛び出して、姉ちゃんの元へ。
姉ちゃんの名前は『ホムラ・ムラン』
「ねえ、ネルフ?そろそろ誕生日でしょ?欲しい物ある?」
俺は、握ったパンを机に置き、少しだけ考える。
何にしよう…うぅーん…
…そうだ、これにしよう。
「誕生日は、姉ちゃんが俺と一緒に居て!約束!」
幼い男の子の声が食卓に反響する。
反響の終わり際、俺は姉ちゃんを見た。
俺の目の前にあったのは、ニヤつきながら、ほんのり赤くて…照れくさそうな家族の顔。
「はーい、うちの弟優勝!可愛すぎ!」
(…優勝?何が?)
はしゃぐ姉ちゃんを尻目に、俺は困惑しながら食べ進める。
食事を終えた俺は、一冊の本を掴んだ。
姉ちゃんが好きなボロボロな本。
ページは所々破れ、読めない部分も多い…
内容は…
「姉ちゃーん、いつも姉ちゃんが読んでるボクシング?とかいう運動の本。俺が持ってるから」
「オッケー、その本持って先に行ってていいよ~」
先に行く…何処に?
そんな心配は要らない。だって、俺は知っているから。
俺は、扉を開けた。そして、迷いのない足取りで進んでいく。
俺と姉ちゃんだけが知っている、秘密の場所へ…
─────────────────────────
伸びをしながら、俺が進んだ先。
風が心地よい広大な原っぱ…ここが、俺と姉ちゃんだけが知っている秘密の場所。
一面の緑を瞳に映し、姉ちゃんのことを考えながら姉ちゃんを待つ。
俺の姉ちゃんには、秘密がある。
この広大な原っぱよりも大きな秘密。
それは…
『ホムラ・ムランは転生者であるということ』
転生者とは、前世の記憶を保持し、別の世界から送り込まれた人達のこと。
姉ちゃんは、少し不思議だし…嘘とか苦手だし…
言われたときは、すんなり納得出来た。
転生者は、ただ送り込まれるわけではない。
送り込まれる際に天使から『ギフト』と『使命』を与えられるらしい。
ギフトとは能力。
使命に関しては…俺にも教えてくれなかった。
転生について教えてもらえたのも特別だったのだ。
本当は能力を使いこなし、強くなってからじゃないと周りに公表してはいけないらしい。
しかし、俺には「ネルフなら良いよ~家族だし!」と、教えてもらえた。
使命も知りたいと願うのは姉ちゃんを困らせる我儘だろう。
もちろん、姉ちゃんにも能力がある。
それは『筋骨隆々』
筋肉量を自在に操れる能力で、上限、下限こそあるらしいが大岩なども軽々持っていたし、普通に強くてカッコいい能力だ。
(姉ちゃんって、やっぱり凄いなぁ…)
心地良い風を受け、漠然と考える。
そこには、嫉妬など一切無い。ただあるのは純粋な憧れのみ。
「ネルフ、お待たせい」
「全然へーき、はい、これ姉ちゃんの本」
「ありがと~、前世じゃボクシングなんてやってなかったから本が無いと何も分からないんだよね」
俺は、脇に抱えていたボロボロの本を手渡す。
題名は 『楽しいボクシングを1から!』
著者は 『ルーク・レオン』
慣れたようにページをめくる姉ちゃん。
俺は純粋な疑問を口にする。
「…そういえばさ、槍とか、剣とか…魔法とかもあるのにさ。なんで姉ちゃんはボクシングっていう殴り合いしてるの?」
「ふふふ、ネルフは分かってないなぁ。」
姉ちゃんは自身の顔前で人差し指を振り、自信満々に口を開く。
「筋骨隆々は、剣とか振るぐらいなら拳振り回してた方が強い!筋骨隆々は拳こそ至高なのだ!」
「…確かに、一理あるかも」
刀は一つ、拳は二つ。
確かに威力が同じなら拳の方が当たりやすそうだ。
俺は、納得の意を込めて静かに頷く。
そんな時だった、姉ちゃんの空気が変わったのは…
「よし、ネルフ。やろうか…」
姉ちゃんは本を閉じ、ゆっくりと俺の前に移動する。
両の拳を顎の前に置き、ファイティングポーズ。
「…手加減してよ?」
俺も同様にファイティングポーズ。
草木の揺れる音が、妙に大きく聞こえた…
─────────────────────────
『楽しいボクシングを1から!』
この本には、四つのことが記載されている。
一つ目 ジャブ(左拳を真っ直ぐ突く、右ストレートよりも威力は低いが速く、速射が可能)
二つ目 ストレート(右拳を真っ直ぐ突く、左ジャブよりも威力は高いが遅く、速射が出来ない)
三つ目 ボディブロー(肘を90度に曲げ、相手の脇腹に拳を突き刺す。左でも、右でも撃てるが基本的には利き腕の方が威力は高い)
そして、四つ目…将来世界を変える、最強のスタイル…
『接近戦(インファイト)』
ホムラ対ネルフ。
余裕そうにニヤける姉ちゃん。
…俺には、そんな余裕は無い。
前傾姿勢を取り、全力で頭を横に振る。
先に手を出したのは…
「来ないなぁ…そうしたら、私から行こうかなっ!」
俺に飛んできたのは、ジャブの二連打。
速い、とてつもなく速い…まるで速射砲のような左。
俺は顔の前に置いたガードでガッチリとブロック。
一連の攻防、姉ちゃんは渋い顔を見せる。
「ちょっ!それ私が能力使ってたら負けてるよ!?」
筋骨隆々を使った拳は絶大な威力を誇る。
その威力は、軽いジャブだとしてもブロックを容易に破壊する程…
対策するならば、避けなければならないが…
(姉ちゃんのジャブは、どうせ避けられない…)
筋骨隆々を使われたら、どうせ負ける。
俺の諦めが、姉ちゃんに届いた。
「…良いよ、筋骨隆々使わずに勝ってあげるっ!」
次の瞬間、速くなる姉ちゃんの速射砲。
それでも、俺は前に進む。
この世界に、ボクシングは存在しない。
ボロボロな一冊の本を除いて。
姉ちゃんには、前世の記憶がある。だから、インファイト以外のスタイルも、見たことぐらいはあるかもしれない…
しかし、俺は知らない。見たこともない…
一冊の本を信じて、突き進むしかない…
「…ジャブじゃ、止まらないかぁ…」
愚直に相手の懐を狙うインファイト。
拳を受けながら、少しずつ、少しずつ…
距離を詰めて、追いつめているはずなのに…
ニヤけたのは、姉ちゃんだった。
「ネルフ…威力を上げる方法は、筋骨隆々だけじゃないよ…」
速射砲のような左。
確かに、俺には避けられない。そう、速射砲ならば避けることは不可能だ。
しかし、『あれ』ならば別。
俺でも避けることが可能。
瞬間、姉ちゃんの右拳に力が籠った。
(…来たっ)
俺の顔面に飛んできたのは、大砲のような『右ストレート』。
威力は絶大。しかし、速射は出来ない右ストレート。
俺は、これを待っていた。
ストレートを屈んで躱し、そのまま一瞬で距離を詰める。
俺の視界に広がるのは、右ストレートによってガラ空きになった脇腹。
初めて、姉ちゃんの顔から笑みが消えた。
空いた脇腹に突き刺す左拳のボディブロー。
俺は、突き刺したと思った。
「んなっ!?」
届きそうで届かない。
俺のボディブローが、直撃することはなかった。
俺の左拳と姉ちゃんの右脇腹に挟まっていたのは左手。
姉ちゃんは、ジャブに使っていた左手を防御に回していた。
拳を掴まれ、俺の動きが止まる。
やばい、右ストレートが来る。
「これで、私の勝ちっ!」
「ぐふっ…」
俺の頬を貫く大砲。
情けない声と共に、俺の視界は闇に消えていった…
─────────────────────────
「…―い」
「…」
「…おーい」
「…痛い」
「あ、起きた」
頬が腫れているのを感じながら、俺は目を覚ました。
視界が濡れている。
あまりの痛みに泣いてしまったのかと思ったが、ぼやける視界で姉ちゃんを見ると手の平で水魔術を作っている。
どうやら、姉ちゃんが俺の顔に水をかけているようだ。
「…姉ちゃん、最後筋骨隆々使ったでしょ?」
「…あ、バレた?」
明らかに威力が違った、流石に分かる。
はぁ、弱い者いじめも良いところだ。
不服そうな俺に姉ちゃんが声を掛ける。
「だって、ネルフ強かったんだもーん」
「…嘘吐き、弱い者いじめ!」
「あはは、ごめんって」
ホムラは、自身の左手を見つめる。
ボディブローを受けた左手。
(…弱い者いじめ、かぁ…)
震えの止まらない左手。
それほどの衝撃を受けた。
姉は、再度微笑んで…
「ネルフは、強いよ!」
「ちょっ、痛いって…」
弟の髪をくしゃくしゃと乱す姉。
ボクシングは、二人のコミュニケーション。
しかし、遊びではなく修行だった。
二人の実力差は、修行と呼べるものであった…
─────────────────────────
姉ちゃんとのボクシングの後、俺は遊びにいった。
遊び相手は、昔からの友達。
まぁ、幼馴染というやつだ。
「…ネルフの頬、凄い腫れてる…大丈夫?」
「あぁ、姉ちゃんと殴り合いしててさ。全然大丈夫」
「良いなら良いけど…ネルフが傷つくのは嫌」
「う、うん、なんかごめん」
彼女の名前は、『エマ・コレッティ』
良い奴なんだけど…なんか、お節介なんだよなぁ。
「…わたし、今日はネルフとおままごとしたい」
「おままごと…良いかも!」
「やった、決まり。ネルフとおままごと」
俺は、ボクシングよりおままごとの方が好きだ。
ボクシングは正直、特段好きというわけではない…嫌いでもないけど。
姉ちゃんとやるから楽しい。これが本音だ。
「…ネルフ、内容はどうする?」
「そうだなぁ…エマが決めていいよ」
「分かった、嬉しい」
楽しそうに、一生懸命考える幼馴染。
楽しいおままごとをして、人も喜んでくれる。
最高だなぁ…
そんな満足の中、俺の脳裏に過ったのは不安。
その正体は…
(あれ?もしかして、俺ってボクシング向いてない?)
ボクシングが苦手になったら、姉ちゃんに嫌われるかもしれない…
ネルフは、そんな有り得ない不安に頭を抱えた。
楽しむ幼馴染と、不安がるネルフ。
そんな光景の中で…ゆっくりと、ゆっくりと時間は進んでいった…
─────────────────────────
ネルフが、おままごとを楽しんでいた同時刻…
姉は悩んでいた。
「はぁ、ネルフの誕生日プレゼント何にしようかなぁ…」
自宅で、水を飲みながら…
弟は、一緒に居られればそれでいい…否、それがいいと言っていた。
しかし、それでも何か渡したいというのが姉の心情だろう。
「…ネルフ、ボクシング好きだし…殴る用にカカシでも買ってあげようかな?」
あれだけ鋭いボディブローが撃てるのだ。
好きで、好きで…毎日努力していなければ無理だろう。
私たちに親は居ない。
だから、私が…姉として、親として、家族として…
ネルフを守るんだ。
コンッ…空になったコップが机に置かれる。
それと同時、音は途切れることなく爆音へと繋がっていった。
爆音…自宅の扉が蹴破られる音。
「…随分と、乱暴な人が来たなぁ…」
…どちらさま?
この言葉に、扉の前で佇む男は口を開いた。
「…貴様を…ホムラ・ムランを殺す者だ…」
言葉を受け、私はゆっくりと椅子から立ち上がる…
殺気、魔力、熱…
ただならぬ空気が、小さな家に渦巻き始める…
─────────────────────────
「ネルフ、わたしと結婚する…」
「…あれ?そんなセリフあったっけ?」
「あった、早く答えて」
内容を決め終え、おままごとをしている二人。
俺は、思い出すように頬をポリポリと掻いた。
「ちょっと、セリフ忘れちゃった…」
「了承でも、断りでも良い…早く答えて」
エマからの圧。
俺は冷や汗をかき、逃げるように口を開く。
「あ!そろそろ帰らないと!姉ちゃんが待ってる!」
少し雑で大きな声。
我ながら、下手くそな嘘だと思ったのだが…
「…分かった」
どうやら、納得してくれたようだ。
ふぅ、危なかった…
「ネルフのお姉ちゃん、凄い強い。怒らせたら怖い…」
「まぁね!姉ちゃんは最強だから!」
俺は、姉ちゃんが褒められた喜びと、少しの後ろめたさを感じて立ち上がる。
エマも真似するように立ち上がった。
「…次回、続きからやる」
「いや、覚えてないと思うけど…」
「大丈夫、わたしが覚えてる」
(エマ、本当に覚えてそうだな…セリフ考えとこ…)
彼女らしからぬ食い気味な言葉。
俺は逃げるように背を向け、帰り始める。
幼馴染からの圧なんて、比べ物にならないほどの空気。
そんな空気が、自宅に渦巻いているとも知らずに…
─────────────────────────
「あら、物騒。殺す?私のこと?人違いじゃない?」
ホムラは、男を目の前にして冷静さを保つ。
冷静さを保ちながらの質問。
男から返ってきた言葉は…
「…筋骨隆々を与えられた女。怪物の転生者…」
薄氷のような冷静が、動揺によって割れる。
ネルフだけが知っているはずの情報。転生者という事実…
ホムラは、動揺していた。
「…能力についても、転生についてもバレてるんだ…だけど、『あれ』については知らないんだね…」
ホムラは間違いなく動揺していた。
しかし、その動揺はすぐに消えることになる。
あるのは、絶対的な自信…
「…私の『強さ』、知らないんだね。乙女の自宅に不法侵入した覚悟は出来てる?」
「…無論だ、もう失敗はしない…」
ホムラが見せるファイティングポーズ。
全ての筋肉が隆起する。
少女の背中が、一回り大きくなった…
「アイスキャノン…」
男の攻撃、鋭く生成された氷がホムラの心臓へと向かう。
生成されたのは三発。
その全てが、恐ろしい速度でホムラの心臓を狙う。
ドンッ!…
「…やはり、化け物か」
ホムラには確かに当たった…しかし、無傷。
彼女は心臓に飛んできた氷に対して半身になり、肩で受けたのだ。
傷ついたのは服だけ。
筋骨隆々は攻撃だけではない、防御においても最強。
「危なぁ。胸で受けてたらおっぱい丸見えだったじゃーん…」
言葉とは裏腹に、ホムラの顔は険しかった。
少し赤くなった肩を見つめ、戦況を分析する。
(…速くて避けられなかった…それだけじゃない、肩で受けたのにヒリヒリする…)
心臓…急所なら、死んでいたかもしれない。
それほどの威力…只者じゃない。
高速で戦況を処理するホムラを見つめ、男は長めの片手剣を抜いた。
男に動揺は無い。
あるのは、殺気のみ。
(魔法では威力が足らん…剣で決める)
(この距離じゃ魔法の餌食、やるしかない…)
ホムラと男、二人の考えが合致する。
二人の頭に浮かんだのは…
『接近戦』
瞬間、ホムラが前傾姿勢を作り素早く前進する。
そこに、男が放ったのは横薙ぎ。
ホムラは屈んで避けた。
(…最速で、最短で首を狙われた…)
空振りした横薙ぎは空気を割き、ホムラの後方にあった壁を横一文字に破壊する。
その事象に、ホムラが感じたのは恐怖。
この恐怖が、筋骨隆々でも受けられないことを物語っていた。
「…だけど、近づけた」
「チッ…」
横薙ぎを避け、ホムラは男の懐に入った。
中距離は男の土俵、剣がある分有利。
しかし、懐は違う。剣の長さが邪魔になる…
ここは、拳の土俵だ。
(一発で良い…当てる!)
筋骨隆々を使ったジャブの連打…
低いところから顔に飛んでくる最速の拳。
男は体勢を整え、後ろに下がりながら躱す。
それを追うようにホムラも前に出る。
ただのジャブが必殺の威力。
ジャブの乱打。そのうちの一発が男の頬を掠めた。
(掠ってこの威力か…)
掠った部分…男の頬が青く変色する。
それほどの破壊力、筋骨隆々の拳。
このままホムラが攻めていれば勝つ。
そう、勝てるんだ。攻めてさえいれば…
「速度が落ちてきたな…」
「…きついっ…」
攻めていた筈のホムラの表情が曇る。
スピードが落ちた要因は『疲れ』
ジャブを撃ち続けたホムラの左腕は、まるで鉛のようであった。
「…終わりだ」
(やばいっ…)
ジャブの合間を縫うように飛んでくる男の横薙ぎ。
避けられない…ホムラは右腕を首の横に置いた。
瞬間、舞ったのは血飛沫。
男の横薙ぎが、筋骨隆々を破壊する。
「…しぶといな…」
しかし、少女の破壊には至らない。
ホムラは、男から距離を取った。
ボトッ…
鮮血と共に何かが床に落ちる。
それは、皮一枚で首を守った物。距離を取った衝撃で千切れた物…
「…だが、右腕が無ければ俺は倒せん」
「…」
鮮血と共に落ちた物は、右腕。
ドクドクと血が流れる…
右腕は死んだ、右ストレートは撃てない。
ジャブは当たらない…
これが現実、非情な戦況。
この時、ホムラは何を考えていたのだろう。
死ぬのが怖い…?絶対にぶっ殺す…?
どちらも違う、脳内にあったのは…たった一人の家族の存在。
「ネルフ…」
薄れていく思考で、巡らせる弟の存在。
だからこそ気付けたのかもしれない、たった一つの勝ち筋…『希望』ってやつが。
ホムラは、足に力を溜める。
筋骨隆々を、最後の気力を…
「…ネルフは、私が守る…」
次の瞬間、最速で男の懐を取った。
横薙ぎは飛んでこない。私がネルフを守る…こいつを殺す!
ホムラは左肘を90度に曲げ、力を込める。
弟が得意な技…ネルフの必殺技。
『ボディブロー』
(…届かせる、絶対に!)
満ち溢れる気力。それ以外にも、この場には何かがあった…
そう、この場にあったのは『違和感』
その正体は…
『男が横薙ぎを撃たなかったこと』
理由は油断ではない。別の狙いがあったから…
ホムラに、襲い掛かる違和感。
「貴様に、フックは無い…」
横薙ぎは、威力は高いが撃ち終わりに隙が出来る。
空振りすれば反撃はおろか、避けることも難しい…
故に、撃たなかった。
男は、ボディブローを読んでいた…
男が狙っていたのは、威力を補完する最上の一手…
ザシュッ…
男は上手く腕を畳み、ホムラを切った。
右肩から左腰にまで繋がる上からの袈裟斬り。
左拳のボディブローに合わせた完璧なカウンター。
「…ぐふっ…」
「…もう一度言おう」
仰向けにホムラが倒れる。
カウンターは相手の勢いを利用して威力を上げる技…
ホムラといえど、耐えられなかった。
仰向けの少女を見下ろし、男が口を開く。
「終わりだ…」
男は容赦しない。
ホムラの首に剣を突き立て、息の根を止めに行く。
「…いっしょ、やくそくした、のに…」
激しい戦いの最後は、恐ろしいほど静かだった…
静かな空間に、最後の言葉が木霊する…
「…ネルフ、ごめん、、、ね…」
…刹那、姉の首が飛んだ…
─────────────────────────
『死』とはなんなのだろう。
一つの事象から様々な物に繋がる不思議な物…
友が死んで、自死を選ぶ者。
悪が死んで、喜ぶ者。
そんな『死』を目前にした男の子。
彼は、決意する。
姉の死を後悔し、人の死を願う…『復讐』
弟は生首を抱え、決心した。
「殺す、殺す…絶対に、殺す…」
細く、黒い言葉…
少年の顔は、酷く歪んでいた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます