*第二十六日目 六月六日(金)
本日も早起き。五時半起床。
建物自体、あまり陽が差し込まない造りなので薄暗いが、天気は良いようだ。
朝食も無いので準備を整え、六時半、おばちゃんに見送られ宿を出る。女性の二人組は、すでに出発した後。
すぐ先の旧国道を右へ。おばちゃんによれば、こちらに向かっても店があるとの事。
バイパスに合流する手前右側の小さな神社の境内で、お遍路姿の中年の女性が一人、何かを食べている。同宿だった人?
国道に入って間もなく、コンビニがある。ここで、朝食用のおにぎりと、昼食用のサンドイッチを買う。しかしまだ、宿を出たばかり。『しばらく歩いてから』と、缶コーヒーを飲んだだけで歩き出す。
先ずは、ひたすら「国道56号―宿毛街道」を行く。
左に見える山の上には、大きな展望タワー。ロープウェイかと思っていた物は、やはりロープウェイ。そちらには、「
(「紫電改」とは、太平洋戦争時の戦闘機)。
心
その山の手前に海を見て、小学生達とスレ違いながら進む。
(左奥の山並は陸続きであるが、このあたりまで、深く「御荘湾」が入り込んでいるようだ)。
やがて、最初の上り。ここで、遍路姿のヨタヨタ歩く中年の女性を追い越す。その少し先に、神社にいた女性の後ろ姿。
(コンビニに寄っている間に、先に行かれたのだ)。
徐々に差が詰まるが、けっこう速い。
本日最初の峠「八百坂峠」は、広い歩道もあり、歩きやすかった。
この峠の後、旧道との分岐の所で、立ち止まって思案している前の女性に追い付く。
「四国のみち」の道標は右旧道になっており、その先に見えるのが「菊川」の集落だろう。だが同時に立つ遍路看板は、国道を指しており、新たに黒マジックで「新」となっている。結局は「同じ所に合流しそう」な気配だし…旧道は「かなりの大回り」となりそうな気配なので、「こっちに行きます」と告げ、「へんろマーク」に従い国道を直進。
右に見えていた集落を過ぎると、再び上り。
日陰や、風が抜けている所は良いが…今日は朝から、一段と暑い。
勾配はそれほどでもないが、上りが続く。
『そろそろどこかで朝メシを…』と思いながらも、適当な場所が見当たらず、歩き続ける。
今日は体調がイマイチなのか? それとも単に暑いだけなのか? いつもより汗が出る。
途中にあった自販機で、ペットの水。
「つめて~!」
良く冷えてる。
「
かなり登ったつもりだったが…それなりの高低差はあるのだろうが、『こんなものか』と思わせる高さ。しかし、入江や小島、眺めは良い。
やがて、遍路道への入口と思われる街が見える頃、右側に休憩小屋・展望台・自販機のあるパーキング。
「
時刻は八時半。ここに三十分ほど。木陰のベンチで、海を眺めながらの朝食。
靴を履き替えてからの悩み事…右足小指の付け根・外側に痛みが出始めたので、靴を脱いでマッサージ。爪先近くの靴
ここで、先ほど「菊川」入口で追い越してきた女性が先に行く。この後、その姿を見る事はまったくなかった。海沿いを行ったのだろうか? でも、先ほどの分岐で追い越した際、「柏から入る」と言っていたのだが…「
ここからはグッと下って、間もなく「内海村柏」。
下り切る手前に、右に入って行く旧道っぽい道。
『
海がよく見えるようにと、左の海側を歩いていたのだが…こういった場所は要注意だ。目を凝らして向こう側を見ると…。
『あった!』
「とまれ」の標識のポールに貼られた、緑色の「同行二人」のシール。もちろん、そちらに向かう。
街はずれの家並を抜け、やがて小川沿いのへんろコース。
「愛媛」は「高知」より、「おへんろ」が認知されている感じがする。特に年配の人は、挨拶を返してくれる。
「柏川」に沿って街並を通過し、「四国のみち」の道標に従い、民家の敷地を抜けるように登山口に取り付く。
内陸に入ると、風が止まってしまい暑い。
遍路道は、森に
ここの山道、取り付きは「柏坂」と呼ばれる急坂。途中、「柳水大師」の看板があったが、かまわず進む。
後半もきつい勾配が続き、距離もある。やがて平坦な場所に出る。
ここに「
登り口からここまで、約2・5キロ。登りもここで一段落。
その後は、尾根伝いなのか? しばらく森の中の平坦路。
森が切れ、風が抜ける道端で足を止める。時計を見れば十時を少し回ったところ。ここで「十時の休憩」。
飛び回る
この道は、途中途中に、色々な説明書きのある看板があった。
「牛は一メートルくらいの高さを越えると下らない」。その習性を利用した場所とか(明治の頃、このあたりでは、放牧が行われていたそうだ)…
猪が身体を洗う場所とか…
梅毒で鼻の落ちた女の話とか…
女みたいな
ここに住んでいた女と、その子供の家の跡とか…
昭和六十年代、「四国のみち」設定のための調査中、狐に馬鹿された話とか…。
そんな看板を見ながら、やがて道は下りに。
途中の十一時。「茶堂休憩所」と思われる小屋で小休止。本日も、腕などに塩を吹き始める。でも、まだまだ山道は続く。
いったん林道に出たが、「HENRO MITI」の標識で山道へ。
途中、民家の屋根が見えたが、崩れかけている。でも、同じ敷地にもう一軒。こちらは洗濯物が干してあるので、人が住んでいるようだ。
その間を抜けて、地道を先へ先へ。
『山の中って、けっこう車が捨ててある』と思って眺めていると、廃屋の前にナンバー付きの車が…すぐ先で、おじさんが草刈機で草を刈っている。
近くのミカンのハウスからは、ラジオの音声が流れて来る。
車一台分の道幅。その真ん中に駐車している車。中にいたおじさんと挨拶。
『人里が近いのだろうか?』
見当はつかないが、『こんな山奥なのに…』といった感じ。
車が入って来るここから先は、両側には森が広がっているが、頭上は開けている。風が抜けず、真上から照りつける太陽。
「あ、暑い!」
やがてやがて…木々の間に水田。その先に、何かの建物と人影。
段々になった棚田の脇を下り、小川に架かるコンクリート橋を渡れば、狭いが舗装された道。
その清流沿いに下れば、小さな集落。
(たぶん「小祝」)。
いったん民家は途切れるが、徐々に開けた水田地帯。
民家もポツポツ現われ始め、「国道56号」を横断。
先刻から歩いて来た川「
対岸の、遠巻きに並走する国道に挟まれた地区は「東組」らしい。
ここでちょうど正午を迎える。予定よりかなり遅れているが仕方ない。
その隣り、「下畑地」に入った頃だろうか? 右に川、左は山際。その左の道端の
六十代だろう。「岐阜」の人で、遍路は二度目。野宿もしているようで、荷物も多い。今回は「逆打ち」で、番外霊場も回っているとの事。
「今日スレ違ったのは、これで十一人目」らしい。しばし話して別れる。こちらも『そろそろお昼を…』と思い、その先にあった小さな工場前の販売機で飲物を買う。
コースは間も無く「芳原川」を渡り、右岸のサイクリング・ロード風の道。
橋を渡って間もなくの所。数本の木々で日陰ができ、風の抜けも良い場所。盛られたアスファルトの道端が段差になっており、腰を降ろすにはちょうど良い高さ。
ここで足を垂らして座り、すぐ前に見える国道方面を眺めながら、お昼のサンドイッチ。両足にはエアー・サロンパスを吹き掛ける。
でも、本日は予定が遅れ気味。ノンビリはしていられない。午後一時になったのを確認し、ザックを背負い、ストラップを締めていると…近くに止まった白い乗用車。そこから降りたおばさんがやって来て、チラシを
左を流れる川と、すぐ右を走る国道に挟まれた歩道。風の
やがて「津島大橋」で「岩松川」を渡れば、「津島町」の中心部。
川を渡る手前に、「四国のみち」の石柱。右・旧市街の方を指していたので、そこは無視。川の上流に向かって左岸。少しゴミゴミした国道を行く。
右は直下に川。歩道は左なので左側通行。役場や、郵便局の本局もある。道は徐々に上り勾配。本日は、この先にもう一つ、峠が待っている。
街を出る前に、通り掛かった左・道路際のコンビニに立ち寄る。手持ちの飲物は、すでに空っぽ。峠越えに備え、おやつも調達。時刻は一時五十分。
コンビニ前には駐輪場なのか? 屋根のあるスペース。ついでに、そこの日陰に入って休憩。道路向かいに見える民家の庭先には…臆病な子犬。風にあおられたのだろうか?
倒れたビーチ・パラソルが動くたびに、ビクついている。「日が当たって暑いだろうに」と思って眺めていると、ご主人様の軽自動車が帰って来る。この時になって、パラソルの下にもう一匹いた事に気づく。たぶんあのパラソル、二匹のためにかざしてあったものなのだろう。
「さて」
そこからさらに行けば、お昼に出会った遍路のおじさんが言っていた通り、左上にゴルフ練習場と、そちらに向かって延びる錆びたガードレール。
ここで国道を
手入れのされていない、放ったらかしの道。前にも書いた通り、「道という物は進化する」。2キロ近い「松尾トンネル」を持つ新道が出来てからは、忘れられた道となってしまったのだ。かつては大型トラックだって通ったのだろうが…今では「
(そうそう、話は変わるが、「四国のスポーツカー乗りはウイング好き」だ。こちらでは、「走り屋」風のクルマに羽根が生えている割合が高い…そんな気がするのだ)。
峠近くでは、道幅も狭くなる。頂上近くの、ひっそりとした採石場を過ぎると、旧「松尾トンネル」。
(「旧」とは言っても、ここが掘られる以前は、この上の峠を越えていたのだろう)。
ここは、昨日通った「宿毛」の峠と同名の「松尾峠」。
トンネルの中は、薄暗い照明がポツンポツン。懐中電灯を取り出して、中に入る。暑い日差しは無いし…後方から風が抜けるので涼しいし…通る車は無いし…道路の中央を、大手を振って歩く。
トンネルを抜けると下り。下りが終わる頃、左手の山を切り崩している大規模な採石場。場内ではパワー・シャベル等が動いているが…午後のこの時間では、外に出入りするダンプはほとんど無し。
やがて遠くにチラチラと国道が見え出す頃、民家が現れる。コンビニ前からここまで一時間以上、休憩無しで峠を越えて来てしまった。
「祝森」という場所で、国道と合流。その右角に電話ボックス。ここはちょうど橋のたもと。「四国のみち」の石柱も立っている。その石柱にザックを立て掛け、道端の草の上に座り込む。時刻は三時半。
もうこの時間になると、足の裏は「肉が散れて、骨と皮だけ」みたいな感触。両足とも靴を脱ぎマッサージ。
ここで電話帳で宿を調べる。今晩の宿泊予定地「
ここからは、「宇和島」に向けて、ひたすら「国道56号」。時間はすでに四時。市内までは、まだ7キロある。
国道沿いは店々が立ち並び退屈はしないが、意識ははっきりとしない。
でも…「宇和島市」に入る手前。「保田」という場所の先。新しく出来たのであろう、左の海側を通る「宇和島道路」との分岐近く。歩いていた道路左側から、反対側にあった大きな「四国のみち」の地図を見ると…下に書いてある距離の数字、小数点までしっかり見える。
元々目は良かったのだ。高校の三年間は、「二・〇」をキープしていた。だがここ数年は、年のせいもあるのだろうが、低下の一途を
ここで横断陸橋を右に渡る。市内へ向かう「国道56号」は、右斜め・北東方行へ。
ここからは、車道も歩道も狭くなり、それとは反比例するように、車・自転車・歩行者が増えてくる。
先ほどの休憩からそこそこ歩いたし(3キロ以上だ)、足はもうヨレヨレ。
(このあたりで、自転車に乗ったおばさんから、パックに入った「切りもち」二ケを頂く)。
街並は、どんどん深くなる。お城がある山も見え始める。宿に向かうには…ひいては市街地に
(マップに、「
港のある「宇和島」の街は、大きな街。
(かつてここから、九州行きのフェリーに乗った事がある)。
テクテク歩いて五時四十分、ホテルに到着。
フロントのおじさんは、独り言のような口調でブツブツと、聞いていない事までよく喋る。こういったタイプの人、あなたもどこかで見掛けた事がないだろうか?
とにかく…部屋は三階。もちろん、バス・トイレ付き。ここはいわゆる、フツーのビジネス。1Fは駐車場、2Fがフロントと朝食用のカフェ。
(明日は少しユックリするつもり。七時半からの朝食は、「高知市」以来の洋食でオーダー)。
1Fパーキングの一角に、洗濯機と乾燥機もあったが…今日は疲れたし、時間も遅いし、それに何より、わざわざ洗剤を買って、お金を払ってまでやる事もない。
バスタブにお湯を満たしてから、近くのコンビニまで夕食の買い出し。
戻ってから風呂に入り、ビジネス・ホテルに泊った時の恒例行事、湯船で洗濯&足踏み脱水。
風呂上り、本日は500mlの発泡酒と、つまみにポテトチップスとジャーキー・スティックで乾杯。でも今日は、まったく酔わなかった。
その後、お弁当を食べ、テレビを見ながらこれを書く。
明日の行程は30キロ弱の予定。ユックリ起きて、ホテルで朝メシ食べて、お城を見てから先に行くつもり。
明日は午後から天気が崩れると言うし…早く着いたら洗濯でもして…たまには本でも読みたいが…もちろん、そんな手荷物の持ち合わせは無い。
そうそう、昨日・今日で、靴底の溝、かなり減った。元々深くないので、またすぐに穴が開いてしまう?
でも、車やバイクのタイヤなどにも、初期磨耗量が多い物がある。ある程度減ってくると、そこから先の磨耗率は鈍くなるものだ。そうである事を期待しよう。
本日の歩行 44・25キロ
57469歩
累 計 908・51キロ
1180397歩
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