04. 当然の対応です。だって所詮、「レンタル」ですから。
あれから、注文の品であるドリンクとケーキを受け取り、テーブル席についた細田たち。平日で客はまばらだが、それでも誰か知り合いが来ていないか店内をチラチラ見てから、
「あの! しゃ、写真、とりませんか?」
と、細田が携帯を取り出してそういってきたのだ。カリンはこの時、初めて受け取ったその裏メニュードリンクを片手に、同じく携帯を取り出すところであった。
「あ! 実は、私もちょうど写真とろうと思ってたんですよー。この裏メニュー、ずっと興味があったんだけど、長すぎて注文しづらかったから頼んだ事がなくて」
「え!? あ、えっと、その…」
細田がそう動揺するまでもなく、カリンの予想通りであった。要は、相手はドリンクよりも自分とのツーショットを求めているのだ。
なので、カリンは次にこう褒めちぎった。
「でも、細田さんのお陰ですごーく助かった! 細田さんがよければ、記念撮影ぜんぜんOKですよ?」
「え!? い、いいんですか…?」
「はい。私も写真撮りますね」
と、カリンのリードに従い、ここは申し訳なくもインカメラを自分達に向ける細田。
先にシャッターを押したのは自分で、カリンとの撮影を終えると即、緊張した面持ちで元の位置に戻って座ったのであった。長いこと自分が隣にいるせいで、相手に気持ち悪がられたら嫌だという不安があるのだろう。
「それでは、いただきます… うーん、おいしい!」
一方、同じく撮影を終えたカリンは嬉しそうに細田へと一声かけてから、ドリンクを一口。すると、僅か数秒ほどで恍惚に満ちた表情へと変わり、ドリンクを絶賛したのだ。細田も同タイミングで俯きがちにストローを
まったりとしたクリームの濃さと、ちょっぴりビターなチョコソースが程よいバランスを生み出し、チョコチップとキャラメルの食感が楽しい一品。そのボリューム感はまるで「飲むチョコレートアイスパフェ」と言ったところ。
甘いものがいけるだけ、まだ嫌いな味ではないから、内心はホッとした細田であった。
こうしてスイーツ店での軽食を終えたあと、二人は近くの大きなゲームセンターへ立ち寄り、一緒にアーケードで対戦したりUFOキャッチャーを楽しんだりした。
ゲームに関しては一部の女児向けやスロット系を除き、全体を通して細田の方が得意ではあるが、初手でいきなりカリンを徹底的に打ち負かすような意地悪はしない。だが「自分はそこまで幼稚じゃない」と内心言い聞かせている節は、度々表情として現れていた。
でも、これが実際はレンタルによる「ごっこ」だと思うと、徐々に虚しくなってきた様で。
「あ、あの」
カリンが振り向く。
「今日は、あ、ありがとうございました。その… 自分、もってきた料理、おいしかったか感想が、ほしいので」
「え? あー」
カリンはすぐに察した。細田は、カリンの連絡先がほしいのだと。
だが仮にもレンタル彼女、雇用契約外の個人情報を客に提供するわけにはいかない。カリンは穏やかな笑顔で、当たり障りのないようにこう返した。
「それなら、細田さんが予約時に書面へ同意した通り、のちほどオレガノさんの方で『手料理の感想希望』と仰って頂ければ、感想を社長が届けてくれますよ」
「え? あ… すみません、ソレ忘れてました。あ! でも、それだって書く内容とかその、文字数とか、色々制限に引っかかったら大変だと思うし、よければ自分のIDを~」
「いえ、大丈夫です。これが私の『仕事』なので!」
「えっ」
♪~
その時、カリンの鞄の中から、デート終了のアラームが鳴り響いた。
一気に、夢から現実へと引き戻された。
(つづく)
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