第16章 モーガン
次に店を訪れたのは、モーガンという男性だった。彼は非常に自信過剰な性格で、物事を自分のペースで進め、何事にも自分が正しいと信じて疑わないタイプだ。自分の意見を強く持ち、それに従って行動することが多いが、その自信の裏には時折、他人を見下すような姿勢が現れることもある。自分にとって最善だと思うことが、周りにとっても最良だと信じて疑わないため、時にはその考えが他者と衝突を引き起こすこともある。しかし、彼の自発的な行動力と前向きなエネルギーは、周囲に良い影響を与えることも少なくない。
モーガンは店に入ってきたとき、その存在感ですぐに目を引いた。歩き方からして堂々としており、周囲に圧倒的な自信を放っていた。彼はカウンターに近づくと、まっすぐに光一に視線を向け、無駄のない言葉で話し始めた。
「こんにちは、光一さん。少し頼みたいことがあって来た。」
その声には力強さと確信が込められており、どこか余裕さえ感じられる。光一はその態度に少し驚きつつも、落ち着いた口調で答えた。
「もちろん、どうぞ。」
モーガンは軽く頷き、かばんからアイテムを取り出して光一の前に置いた。それは、紙で作られた装飾的な折り紙セットだった。セットには様々な色と模様の紙が収められており、光一はその色彩に思わず目を奪われた。折り紙の一つ一つには、非常に精巧な技術が込められており、見る者にその美しさと丁寧さを感じさせる。
「これ、僕が作ったものなんです。」モーガンは軽く笑いながら話し始めた。「最初はただ暇つぶしに始めたんだけど、だんだん自分の技術が上がってきて、こんなにたくさん作れるようになったんだ。」
光一はその折り紙セットを手に取ると、彼がその一つ一つに込めた時間とエネルギーが伝わってきた。モーガンは自分に自信を持ち、どんなことでも一度始めれば自分なりに結果を出すことができるタイプだ。それは、折り紙に対する彼のアプローチにも現れていた。
「でも、最近、少しだけその成果に対して疑問を感じ始めたんだ。」モーガンは言葉を続けた。「他の人からはすごいと言われるけど、僕は本当にこれで良かったのか、と思うことがある。」
光一はその言葉に驚いた。モーガンのように自信に満ちた人物でも、その内面には自分の行動に対する不安があったことに気づいた。彼は外見こそ強い自信を見せているが、その裏には他人との関係に対する不安や、自己満足だけでは満たされない感情があるのだろう。
「僕は、自分がやっていることが他の人にも役立つと信じているんだ。」モーガンは続けた。「でも、最近はその信念が少しだけ揺らいでいる。折り紙を作ることが本当に意味のあることなのか、他に何かもっと自分にできることがあるんじゃないかと考えるようになったんだ。」
その言葉には、モーガンが持つエネルギーの源泉である自信が少し揺らぎ、迷いが生じている様子が見て取れた。彼は確かに強い人物だが、同時にその強さが一時的なものであることへの不安を抱えているのかもしれない。
「君が折り紙を作ることで誰かが喜んでいるなら、それはきっと意味のあることだと思う。」光一は静かに言った。「物事が無駄だと感じることがあるかもしれないけど、君のその努力が他の人に影響を与えていることもあるんだ。」
モーガンは少し黙って光一の言葉を聞き、しばらくの間考え込んでいた。そして、やがて軽く微笑みながら言った。
「ありがとう、光一さん。少し楽になった気がするよ。これからも、やりたいことを続けていこうと思う。」
光一はその瞬間を写真に収めることに決めた。モーガンの表情には、少しの迷いと共に前向きな気持ちが見え隠れしていた。彼は確かに自信を持っているが、その中での葛藤もあり、それを乗り越えて進んでいこうとしている。それこそが、彼の強さをより深いものにしていくのだろう。
シャッター音が響き、その瞬間が写真として残された。モーガンは感謝の言葉を述べ、折り紙セットを大切に抱えながら店を後にした。その背中には、まだ不安を抱えつつも、新たな挑戦に向かって進む決意が感じられた。
光一はその後、モーガンが持ち込んだ折り紙セットをじっと見つめながら、彼の心の中にあるエネルギーと不安を感じ取っていた。モーガンはその不安を乗り越えて、また新しい目標に向かって進むだろうと、光一は信じていた。
第16章終
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