第6章 ミゲル
次に光一の前に現れたのは、ミゲルという男性だった。彼は自信に満ち、他者との協力を重んじるタイプだが、同時に負けを恐れず挑戦を続けるという強い意志を持っている。しかし、その背後には孤独を感じることも多いようで、他者との関係においては時折、空回りしてしまうことがある。ミゲルは共に成長し、支え合うことを大切にしているが、それを実現するためにはどこか自己主張が強すぎるところがある。
店に入ってきたミゲルは、まるで何か大きな挑戦に向かうような姿勢で、力強く歩いてきた。その表情には、何かを決意したかのような、燃えるような熱い思いが込められていた。彼は光一を見つけると、少し照れくさそうに笑って言った。
「こんにちは、光一さん。少しお願いがあって来ました。」
その声には、しっかりとした自信が感じられる。光一は静かに頷きながら、ミゲルを見つめた。「もちろん、どうぞ。」
ミゲルは少しだけ手を振りながら、かばんからアイテムを取り出して光一の前に置いた。それは、草で編まれた小型の壁掛けバスケットだった。バスケットは手作りで、草の編み目が細かく、温かみのある優しい雰囲気を持っていた。しかし、その中に込められた思いは、ミゲルの熱い情熱を感じさせるものであった。
「これ、僕が作ったものです。」ミゲルは少し誇らしげに言った。「家族のために作ったんです。これを使って、少しでも家が明るくなるといいなと思って。」
光一はそのバスケットを手に取った。草の編み目の一つ一つにミゲルの手の温もりが感じられ、作り手の思いがしっかりと伝わってきた。そのバスケットには、家族への想いが込められているのだろう。しかし、その中にミゲルが抱える「挑戦」の気持ちも見え隠れしているようだった。
「でも、最近になって、少し自信を失ってしまったんです。」ミゲルの声は少し小さくなり、遠くを見つめるような目をしていた。「本当に、この家族のために頑張れるのか、不安になってきたんです。」
光一は静かにその言葉を聞いていた。ミゲルの心の中にある燃えるような情熱は、家族のために役立ちたいという強い意志から来ている。しかし、時にはその情熱が他者との関係において強く出過ぎてしまい、空回りしてしまうことがあるのだろう。それが、ミゲルの自信を揺るがせているのだ。
「僕は、挑戦することが大切だと思っています。」ミゲルはさらに続けた。「でも、時々、その挑戦が他の人に迷惑をかけているんじゃないかと感じてしまうんです。」
光一はその言葉に共感を覚えた。挑戦し続けることは素晴らしいが、そのエネルギーが周囲に対して過剰になりすぎることがある。ミゲルは他者との協力を大切にしているが、その協力が思うように進まないことに苦しんでいるのだろう。
「だから、このバスケットを作って、家族に渡したいと思っていたんです。」ミゲルは少し照れくさそうに言った。「これが、家族への気持ちを伝える一歩になるかなと思って。」
光一はそのバスケットをじっと見つめながら、ミゲルの強い想いを感じていた。それは、ただの物ではなく、ミゲルがどれほど家族に対して真剣に向き合っているかを示す証拠であり、同時にその情熱が時に自分を苦しめることをも表していた。
「あなたの思いは、このバスケットにしっかりと込められています。」光一は静かに言った。「そして、それが家族に届くことを願っています。たとえ、今は不安があっても、その思いが必ず伝わるはずです。」
ミゲルは少し驚いた表情を見せ、やがて心からの笑顔を浮かべた。「ありがとう、光一さん。少し、安心しました。」
光一はその瞬間を写真に収めることに決めた。ミゲルの表情が、少しだけ軽くなり、決意に満ちたものに変わった瞬間を。そして、そのバスケットに込められた情熱と、家族への深い愛情をしっかりと捉えることができた。
シャッター音が響き、その瞬間が写真として切り取られる。ミゲルはその後、少しだけ腰を伸ばし、深呼吸をしてから、再び光一に感謝の言葉を口にした。
「本当にありがとう。」ミゲルはにこやかに言い、そのバスケットをしっかりと抱えて店を出て行った。
光一はしばらくその後ろ姿を見送りながら、ミゲルがこれからどんな挑戦に向かって進んでいくのかを思い描いた。その情熱が、必ず家族に届き、彼自身の心の中で新たな一歩を踏み出す力になることを、光一は信じていた。
第6章終
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