第5話

「災難だったな近衛曹長?」


後ろには先程の会議では口を開かず沈黙を保っていた東雲がいた。その顔は心なしか暗いものだった。


「ああ全くだだがお前も俺に引けを取らんだろう?何せ作戦道理に行くなら化け物の大群を相手にすることになるのだからな」


「それでもまだ君よりマシさ戦車があり支援も厚いそれに……本当に申し訳ないことをした。」


急な謝罪をされた。何かをされた記憶はないしむしろ命令違反を黙ってくれたので借りさえある。しかし東雲の表情がかげる


「この作戦の京都駅確保の部隊に君と君の小隊

を推薦したのは僕だ」


何秒かの静寂が廊下で続いた。先の出撃により騒がしかったはずの基地が今では誰もいなかったかのように世界から色が失われた思考も続かず音もなにも聞こえない。


「君にならできると思ったから、いや君にしかできないと思ったから推薦した。」


情報がまとまらない感情が定まらない怒りも悲しみも困惑もどうすればいいのかが全く分からないだから次の言葉を待つ


「許せとは言わないだが僕にも守りたいものがあるそのために最善を尽くす必要がある。だから友よ君だって利用する。」


だんだんとなんとなく理解ってきた。こいつは馬鹿なんだだからこんな言い回ししかできない


「黙れよ。まどろっこしい言い方をしやがって自分の娘と嫁さんを守りたくてしょうがないんだろ?自分が悪いことをしたかのような言い方しやがって、今の自分の立場を考えろ自衛隊の幹部だろ?だったらそんなことを気にするな勝つための最善の手を考えるのがお前の仕事だろが」


公の場では絶対にできない言葉を投げかける。こいつがこの作戦に俺を推薦したのはその通りの意味なのだろう、だがコイツは俺に謝罪をした軍の幹部にありながら一兵卒に対して私情を挟んで俺と対面している。たとえ友だとしても軍である以上あってはならないことだ。


「ああそのとおりだ、だけど近衛お前が死んだらどうするお前の息子は佳子が亡くなってしまった以上あいつにはお前しかいないんだぞ!。」


6年前に子供を産んで亡くなった妻佳子、今息子は義両親に預けている。自衛隊員であった故にほとんど息子とは顔を合わせてはない

 

「俺が死んでも何も問題は無いアイツは義両親に預けてあるし俺が死ねば保険金が出る。そうすればアイツが大学を出るぐらいならなにも問題はない。」


「お前はあいつの唯一の親なんだぞ!代わりになるやつなんていないし金でどうにかなる話でもないこれからの時代は混沌とした時代だ世界中が混乱している。もし今以上の事件が起きてアイツの身に何かがあったら誰がアイツのことを守るんだ!。」


東雲が俺に掴みかかるような勢いで詰問する。


「何も問題はないそれよりも明日の作戦に集中しよう。俺もお前がこの作戦に俺を推薦したことも気にしないしお前も気にするなそれでも気になるのならお前が俺を助けろ敵を陽動して俺の仕事を減らしてくれ。」


そう東雲を宥めるするとさっきまでの興奮した様子から一転して最初の時のような暗い顔に戻る。


「…分かった………生きて帰ってこいよ」


「当たり前だ、お前もくよくよするなよ」


そう言って分かれる。突然何を言い出すかと思えば罪悪感で押しつぶさそうになったようだ、東雲は昔から頭が良く正しくあろうとしていた。しかし、強い人間では無かった。だから潰れそうになるたびによく飲みに行ったりして愚痴を言い合ったりしていた。


だから今回のことで爆発したのは必然だったのかもしれない自分で言うのはあれだが親友とも言える俺を最も危険な任務に任命されるように進言した、だが東雲の立場を考えれば当然のことだろうアイツの気持ちが分かれば命の危険に晒されたことによる恨みよりも俺なら任務を達成できると信頼してもらったことを誇らしく思う。


「戻った副長、かなり面倒なことになったぞブリーフィングだ全員集めたまえ。」


扉を開け声をかける


「お帰りなさい隊長、補充の隊員一個分隊が先に来ていたので挨拶済ませちゃいましたよ。」


「おいおい挨拶の順番が逆だろうに」


「時間がないので仕方ないですよそれで呼び出しはどうでしたか?」


「喜べお前ら俺たちの任務は民間人の救助だ、副長お前の憧れの仕事まさに自衛隊の花形だぞ?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る