第22話
「お母さん、いつ来たの?」
「お昼過ぎだったかしら。ねえ、仲本さん」
そうですねぇ、とデブが答えた。
デブは仲本という名前だったか。
「お父さんと何かあったの? ていうか、今日はうちに泊まるの?」
「そのつもりだったけれど、どう」
気にしないで、と母の言葉を遮った。
「この人、お世話になっている同僚の友達で預かっているだけだから。
恋人でもないし、友達でもない。ただの知り合い」
「理紗がただの知り合いを家にいさせる訳がないじゃない」
だからよぉ、とあやうく言いそうになったが飲み込む。
「仲本さんは、沖縄のことをいろいろ教えてくれたのよ。
食べ物のことや、たくさんある沖縄独自の行事のこととか」
口調は柔らかいが、母の目は笑っていない。
「お母さん、泊まっていって。
デ、えっと仲本さんの実家は近いから帰ってもらう」
「失礼でしょ。今日は私がホテルに泊まります。
リゾートホテルでゆっくりします」
昔から母は、表情と話している内容が一致しないときがあった。
母の友人の家で、私や姉が悪ふざけをしたら、その場ではにこにこして優しく注意するが、退出するやいなや、鬼のような形相で怒られたことが何度もあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます