risoluto

坂餅

第1話

 年を越し、もう間もなく三学期が始まる前に、あなたに会いたい。


 そう考えた私は、早速連絡を取る。


 翌日、街へ行こうと誘ったわたしは、待ち合わせに指定した場所であなたを見つける。


 いつもの気だるげなあなたの顔、可愛いのに、自分の見た目には無頓着なのかな? とあなたを見るたびに思ってしまう。


 それがもったいなくもあり、いつまでも変わらなくて安心する。中学時代から――と言っても三年生からだけど、それから高校二年生の今まで変わらないあなた。


「おまたせ、あけましておめでとう」

「うん、おめでとう」


 素っ気なくても、ちゃんと返してくれる。嫌そうにしながらも、律儀に。


「で、新年早々なに? 呼び出して」


 でもその口から出る言葉には若干棘があって、さっきの律義さはどこへ行ったのか、あからさまに嫌そうな態度を取る。


「ごめん、忙しかった?」

「忙しかったら来てない」


 忙しくても暇でも、本当に行きたくないのなら来ないと思うから、その嫌そうな態度は演技なのかもしれない。そうであってほしい。


「あはは……そうだよね。えーっと、なんか、せっかくの冬休みだし、お年玉も貰ったし、なんか買いに行きたいなーって」

「一人で行けばいいじゃん」

「だって一人だと楽しくないし、おとちゃんだったら来てくれるかなって」


 わたしがそう言うと、音ちゃんはそっぽを向いて歩き去ってしまう。


「学校始まるまで一週間も無いのに、意味分かんない」


 そんな言葉を残して。


 我ながら、今の言葉はギリギリを攻めたと思う。音ちゃんはわたしの気持ちを知ったらどう思うのだろうか。そんな不安を緊張でごちゃまぜにしてなんとか誤魔化して、わたしは先に行ってしまった音ちゃんを追いかけるのだった。

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