異界顕現

異界顕現とは、心象転写とも呼ばれる技能である。

ユニークスキルを媒介として自身の心象領域を世界に上書きするという破格の技であるが、弱点として発動後の大幅な攻撃力低下が挙げられる。


世界を否定し己の世界を叩きつけるという無法極まりない奥義であるため、使用すればスキルそのものの強度が保てなくなるのだ。

スキルポイントの大量消費も付随するため剣技での戦闘継続も推奨できない。


「なるほどな……これが心象転写……」


俺、アルタイル・アリエルが読む本は「異界顕現論文」。

世界中のスキル研究者たちが学会へ提出した知識が纏められているため、信用性はピカイチだ。


「というか、アイツの眼はカンケーないのか?」


セナの眼―――――――恋成眼。

一族特有の魔眼だとは思うが、本で読んだ魅了眼とは模様が違った。

アイツの「希望」と固有スキルである「眼」は絶対に関係しているはずだ。

だが、本にそのような記載はない。もちろん、まだ未知の部分なのかもしれないが。


俺が見た「眼」は今までに三つ。「恋成眼」、「擬剣眼」、「剣滅眼」だ。


その全てがあの会場にいた者たち。


ただ……


「心象転写は、セナにしか使えない」


ディオンも使えるには使えるらしいが、防御に特化した何かとしか言えないらしく戦闘全般に適してはいない。


だが、セナの「希望」は味方全員にバフを掛けられる。

それに精神鼓舞のオマケつきだ。心象転写に共通している選択対象へのデバフももちろん使える――――――――――――、


……チートじゃん。


「あんな戦いなんて興味ありませんって顔しておきながらなんて凶悪性能してんだあの天使……」


だが、ここまでは「分かっている」ことだ。


今からは、分からない話をする。


俺のユニークスキル【英雄之炎】のことだ。

精神に応じて変化する二色の炎。攻撃特化の「赤炎」と、感情が昂った時に発現する「金焔」。


俺の意思以外では鎮火せず、思った通りに形状が変化する炎。


それの心象転写は、いったいどうなるのだろうか。


もし使った場合、相手を殺さないでいられるだろうか。


……そもそも、使えるのだろうか。


「まぁ、使わないに越したことはないんだけど……。つーか、お前が渡した本から始まった話なのになんで眠そうなんだよ……カイン」


「あ、ああっ。寝てない、寝てないぞぉ……」


「半分目ェ閉じてんじゃん」


「ぐがぁ……」


「寝るな!」


本の角でブッ叩き起こす。


「いってぇ……」


「ったく。で、どうしてこの本持ってきた?」


「いやー、実はよ……このアースリアに勇者が来るらしいんだよ」


「は? あー、そんな知らせあったな……で、それが?」


「行事というか儀式みたいなもんでさ、勇者を異界顕現にブチ込むってのが……」


「断る」


「はや⁉」


だってメチャクチャ嫌な予感するし


「そこをなんとかぁ……ギルドの嬢さんたちにも説得してくれって言われてんだよぉ……」


「……はぁ……出来るかは分からないからな?」


そう答えると、オッサンの顔が嘘のように明るくなった。


「恩に着るぜぇアル坊ぉおっ!!!!」


「あっ、ちょ……抱き着くなゴラァ!」

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