24話 ダンジョンの1階は
ダンジョン1階。入り口の通路を歩いていると、いきなり周囲の景色が変わった。
今は地面も、壁も、天井も土で覆われていて、ところどころに苔が生えている小部屋にいる。周囲を見回しても扉だけしかなく、入口から帰るということはできない。
「色々な戦い方を試してみようか」と、シルクとリルに話しかけて、扉を開いて通路に出る。
扉から出ると真っ直ぐの一本道。向こう側は黒い点になっていて、道中には何もいない。私も、仲間たちも困惑する。
そのまま真っ直ぐ道なりに、10分ほど歩き続けていると、大きい扉の前に着いた。これがボスのいる部屋なのだろう。
それは周囲を囲む土の壁に不釣り合いな、黒光りする立派な扉。撫でてみると、つるりとした触り心地の表面で、綺麗な石の素材であることしかわからない。馬車くらいの大きさの、装飾も何もない、がっしりとした武骨な扉。
その扉の横には、神聖な気配を感じる安全地帯があった。小さい部屋が一つ、入るくらいの範囲が薄い光の膜で包まれている。地面には明滅する文字が、浮き上がっては消えていくを繰り返す。
一匹も敵が出ない。あまりにもな肩透かしに気が抜けてしまう。思わず、ため息をついて今、来た道を振り返る。すると、ぬりぬりとゲル状のスライムが数匹、こちらに近づいて来ていた。
昨日の下水道に続いてのスライム。
仕方ない、できる事から試してみようかと、軽く魔法を使ってみると、そのまま倒せた。シルクが、ぱんっと音を発しても倒せた。リルが、プスッと刺しても倒せた。「外のスライムより弱い……」思わずつぶやく。私と一緒に、シルクとリルも、へちょりションボリと項垂れる。
これなら手応えを感じる分、外で木や岩に攻撃している方が、よほど良い訓練になっただろうに。それにはシルクとリルも同意なようで、ボスへの扉を示している。
この調子だと、1階のボスにも期待はできそうにもない。早く抜けてしまおう。
それはそれとして、ころりころりとスライムが落としていた、りんごやみかんなどの果物を拾って集める。
安全地帯で荷物の整理を行いながら、ふと思う。こんなに食べ物が集まるなら、ここに住む人がいるのも納得だなぁ。
しんみりしながら仲間たちと頷き合って、大きな黒い扉を開く。
そこには――――ただの大きいだけスライムが、ぬとぬとべたべたとしていた。
いらっとしたのか、大きいスライムに向かって突っ込んだシルクさんが、音撃をぱんっ!たんっ!りーん!と連射すると、そのまま大きいスライムは倒れて消えた。
ころりころりころり。大きいスライムが落とした3個のりんごを、プス!プス!プス!とリルさんが貫いて、壁にペイッ!と放り投げると砕けて消えた。
それと同時に部屋の端が光り輝いて、外に帰るための上り階段と、先に進むための下り階段が現れた。
「……先に行こうか」
ぼそっと呟く私にくっ付いてくるシルクとリル。慰めあう相手がいるのはいいものだなぁ。と、思いながら私達一行は下り階段に進む。
次の階層にはどんな冒険が待っているのか、たのしみだね。シルクとリル。
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