白骨に秘密はありますか

水の月 そらまめ

第1話 骨を見つけた



「骨だ……」


 庭の花壇に、花を植えようと思って掘っていたら、骨が出てきてしまった。

 軍手をはめた手で、白く、美しい、人間の骨を持ち上げる。


「わんっ」


海老蔵えびぞう


 愛犬の海老蔵が俺に飛びかかってきた。これでもかってくらい飛びかかってくる。甘えん坊さんだなぁ。よしよし。

 愛たい気持ちを抑えて、俺は立ち上がる。海老蔵はキラキラした目でアタックしてきた。


「ちょっと待て」


「……くぅーん」


 …………。一体誰の骨なんだ。


 今まで看取ってきた妻の誰かなんだろうけど……。

 誰だ? 誰のものなんだ?

 俺はきっちりと燃やして弔ったはずなのにっ。こんなにしっかりと残った骨が出てくるか、普通!?

 骨なんてうっかり落とすものじゃないしな……。


 何か番号が書いている。これは一体……?



 俺は妻たちを思い浮かべていく。


 美智子みよこさんは知的で穏やかな人だ。俺の知らないことをたくさん知っていて、編み物が得意で、字がとても綺麗で……。いたずらが大好きな人。


 愛子あいこさん。彼女は可愛らしい人だった。少々ドジだが、いろんなことに興味を持つタイプだ。好奇心旺盛な笑顔が最高に可愛らしいく。一緒にいてとても楽しかった。


 深冬みふゆさん、慈愛のある料理がうまい人だった。すこし体が弱くて、健康を第一に考える、恥ずかしがり屋さん。そして、一歩下がったところから見ている感じの人だった。


 千代ちよさん、彼女は気が強かったなぁ。でもそこがいいと言うか。たまにデレるところが最高に可愛い人だ。寂しがりやなのか、よく俺のところに来ては一緒に作業したなぁ。


 さて。誰の骨だ?

 全く分からん!



龍郎たつろうさ〜ん!」


 この声は、警察の古木山ふるきやま

 俺はピンポンも押さずに、勝手に入ってくる警官の服装をした古木山を見て、白骨を背に隠す。


「あ、いたいた〜」


 猟犬のはなも一緒のようだ。

 可愛いなぁ。花は強い上に別嬪さんだ。海老蔵とも仲が良いい。


「何かようですか?」


 古木山は土のついた軍手と、花壇の様子を見て笑った。


「いやぁ。そこでイノシシが出たって駆り出されたんだよ。手伝ってくれ。あとで花壇の花植え手伝うからさ」


 そんなこと言って、古木山はいつも用事を済ませてから〜、とか言ってほぼ終わった時にやってくるんだよな……。

 まぁなんにしろ、イノシシがそこで出たのなら大変だ。俺も家を守りたい。

 軍手を片手で脱いでいく。


「わかりました、玄関で待っていてくれますか」


「良かったぁ、ひとりでイノシシ狩るとか寂しくて!」


 古木山が背中を向けた瞬間に、骨を軍手でくるむ。そして、家に入った。


 俺はいま、骨について思い出さなきゃって時なのに。イノシシめぇ……。

 ん? これが動物の骨という可能性は……?

 いや、イノシシや鹿の骨は見慣れてる。明らかに大きさが違う。


 はぁ……。何が悲しくて、いい歳したオッサン二人でイノシシを狩りに行かなくてはならないのか……。

 安全と被害防止のためだよ、チクショウっ。


「行くか」


 銃を片手に、俺は目を輝かせている海老蔵に手を振った。


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