第6話 茶番はこれにてお終いです

ループ8回目


「……という事よ。これは予知夢なの?」

毎回死んで目が覚めるので、流石にセリィは魔法に精通したお偉いさんにアポなしで聞きにきた。

「死ぬ夢…ですか。」

白髭を手で弄りながらお偉いさんは考える。

「最初は断頭台で処刑された!階段から落ちたら傘に刺さった!高いところから落ちた!火事に巻き込まれた!ミミックに食われた!目が覚めたら全部同じ日の朝!」


お偉いさんはんーーーーと唸りながら考える。

ちゃんと考えている。

「これは予知夢の類ではなく『刻戻り』なのかもしれません。」

「刻戻り?」

ざっくりいうとセリィが目覚める日を起点として死んだらループしていると説明したいが、脳みそメルヘンお花畑にはもっと、優しくお子様向けに説明しなくてはならない。


「死んだら5月1日に時間が戻ります。死ぬまでにやった事は無かったことになります。」

「なんですって…!それって美味しいものをたくさん食べて体重が増えても時間が戻れば元通りだし、国宝の壺割っても無かった事になるし、学科のテストなんて答えまるわかりですわ!カンニングや代理で解かせる面倒しなくても済むんですのね!」


ループを使ってやりたい放題しようとしてるが、死ななきゃ戻らないという考えが欠落している。


「早速この能力を有効に使わなくては!」

「待ってくださいセリィ様!

…行っちゃった。」


お偉いさんが呼び止めたが彼女はうきうきらんらんで出て行った。


「……どんな事をしても結局最後は処刑されるのだ…言う必要はなかろう…」

開け放たれたドアを見つめる老人の視線は冷たかった。



「セリィ様、どこにおられたんですか?」

学園の廊下で取り巻きが、何かをしていたがセリィをみつけて声を掛けた。

彼女はふんぞり返って偉そうに言ってのけた。


「私は、刻戻りの力に目覚めたの!どんな事をしても5月1日に戻れるの!どのような事をしてもやり直せるの!」

取り巻きたちはセリィのメルヘン談義が始まったと嘆息した。

この年齢(とし)にもなって、幼少期によんだ有名な童話を嬉々と語られても…アンティーク価値や有名画家の描いた絵本ならそれなりの理解も得られたかもだが絵正真正銘児童書で、脳みそお子様ランチで本当は行き合ってらんねーけど王女だし建前としてね。


「見てなさい!これは魔道研究所にさっき行った時にちょろまかした怪しい薬!飲んで私の能力に驚きなさい!」


完璧に死ななきゃ戻らない事を忘れている王女。


ごくごくごく


「何をやってるの?!セリィ様…

            ……そんな…嘘…」


騒ぎを感じたアティリアが駆けつけたが、そこには呆然と立ち尽くす取り巻きと、ゲームの序盤で出てくるよく踏まれるキノコっぽい生き物がいた。


「セリィ様が突然…」

「ぷしう」

なんかキノコが菌糸撒きながらこっちに迫ってきた。

何も知らない通りすがりの騎士見習いが華麗にサクッと倒してくれた。


経験値はわずかだった。


#####

セリィ我儘で強欲、低脳で無知、王家にいるべきか疑うばかりの人間性。

楽しく時を戻すだけなのか?違う。





     パーティーはこれからだ。








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