リスタート

ゆう

第1話 どこにでもある話

 私は今年で40歳になる、どこにでもいる平凡な会社勤めのサラリーマンである。そんな私が、今や十人に一人が罹ると言われる流行り病の「うつ病」を患った。どこにでも転がっていそうな話だ。しかし、凡人が語る平凡な物語にも、いくらかの教訓がある。そう期待して文章を綴ろうと思う。

 

 さて、この話には2つのテーマがある。

一つは、あなたには、あなた自身の人生を大事にしてもらいたい、ということ。

 そしてもう一つは、人は誰しも平等に価値がある、ということ。


 月並みの言葉である。

しかし、月並みな言葉について、容易に納得できるかというと、そうではない。

 私がこの月並みな言葉を飲み込むには、うつ病という体験と、それに伴う長く苦しい思考という道のりを要した。人生で最も大切なもの、偉人が苦悩の果てに掴んだ真実、あるいは人生を豊かにする賢人の金言は、書店や図書館にでも行けば、その手の書籍は見つかる。ただ知るだけなら簡単である、それを読めばいい。しかしながら、それを自分のものとして了解する、そのことによってその言葉が人生の中で輝くのであるが、それは簡単ではないのである。私がこの話を書くことで、私の思考を追体験し、そのことでもって、あなたの中にあるこの言葉にいくらか輝きを与えることができればと思う。


 話を戻そう。自分自身を大事にすること。あなたは今自分自身にどれだけ目をむけているだろうか。そして、どれくらい理解しているのだろうか。日常に没頭する中で、自分自身を後回しにしてはいないだろうか。うまくいっている時はいいだろう。しかし、歯車が狂い始めると、現実へのピントもずれ、少しずつ心が蝕まれていく。あなたが自分のことに目を向けていれば、心の洗濯ができる。それを怠るとこれから綴る話のようになる。

 もう一つ、人は誰しも平等に価値がある、ということである。飛びぬけた栄光、あるいは凄惨な運命、またあるいは平凡な喜びと苦労。同じ時代を生きている数多くの人生、他者の輝きに目を奪われ、自分だけが輝いていないように思える。でも、そうではないのだ。たとえ地位がなくとも、成果をあげられなくとも、努力できなくとも、それでもいいのだ。人の内なる輝きは皆、平等なのである。それをこの話を通じて伝えたい。


 さて、前置きはこのくらいにして、話を始めようと思う。この話は、2020年の秋から2022年の秋にかけての物語であり、事実とフィクションを織り交ぜつつも、私の思索について概ね現実を記述したものである。

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