俺たちが超能力を手に入れたら

@nluicdnt

第1話 無職だけが持てる超能力があったら



《日時 2xxx年 x月 x日》


「なあ、もし超能力ってのがある日、突然目覚めたらどうする?」


「いきなり何の話?」


 いきなり、友だちの杉本が変なこと言い出した。


「いや例えばだよ。例えば」


 なんか真剣そうな顔してるけど、話してる内容すごく下らないんだよなぁ。え? これ、もしかして、漫才の練習? 俺ら夢掴もうとしてんの? お笑いの。

 

 まあ、とりあえず話に乗ってやるか。


「超能力って言っても色々あるじゃん。好きな場所に行けるとか、空飛べるとか、物の大小操ったり、あと食べればどんな国の言葉でも分かるとか」


「それひみつ道具だよね? 最後の食べれば言葉分かるって、それ、ほんやくこんにゃくだよね?」


「いや、まあそうだけど」


「ちょっと真面目に聞いてくれ頼むから」


 それならちょっと真面目な話をしてくれ頼むから、なんて言いたかったけど、それ言うと面倒臭いこと言いそうだからいいや。


「うん、例えばさぁ……触ったら何でも破壊でにる能力持ったらどうよ」


ヴィランじゃん」


「いやちょっと待ってそう言わないでよ。実際にそういう能力持った人が聞いたら傷つくよそれ」


「ブファッ!? 何だよそれ……傷つくって……クク」


 思わず変な笑いが出てしまった。


「傷つくでしょ、そんなこと言われたら。メンタルブレイクしちゃうから」


「仕方ないでしょ、そっちは物壊してんだからさぁ。物とか壊しといて自分の精神壊さないではそれは違うよ、うん。違う」


「あぁ〜……そっか」


 めっちゃ反省してんじゃん。


「でも分かんないよ? メンタルブレイクしたと同時に、ワールドブレイクしちゃうかもしれないから」


「かっけえなワールドブレイク」


「あ、そうだね。ワールドブレイカーって名前にしよう」


 なんでブレイカーにしたんだよ。ブレイクで良いだろ。


「因みにその能力ってあれ? 自分でコントロールできるの?」


「……できてる」


 まるで能力持ってる奴の言い方じゃねえか。


「まあ全て壊す能力制御できなかったらさ、俺今ごろ、すっぽんぼんだからね。すっぽんぽん」


「それは分かる。たしかにそれは大変だね」


「でしょ? すっぽんぽんは大変だよ。すっぽんぽんだからね」


 すっぽんぽんを何回も言うな。


 何か気持ち悪いわ。多分、もう言わないと思うけど。


「……すっぽんぽん」


「今のすっぽんぽんは要らないでしょ、ね、絶対面白いって思ったでしょ。何回もすっぽんぽん言うの面白いと思ったでしょ! ねえ! ねえ!!」


「いやちが、違うから。ち、ちが」


 なんかすっごい拒否してくるから、思わず突っ込んじゃった。こんなの素人漫才だよ? 夢の一千万なんて夢のまた夢だよ?


「まあさ、こう触って握ったら破壊ができるようになるの」


 杉本は空中に向けて手をグ、パーさせている。


「それ、人にも出来るの?」


「いや、やったことない」


「なんでお前が反応すんだよ」


「あっ……そっか」


「そうだよ、それで? 人も破壊出来るの?」


 そう聞くと何故か杉本は何も答えない。


 深刻そうな顔をして俯いている。


「え、その能力って人体破壊出来るの?」


「……俺、なんだよ」


「……は?」


 何言ってんだこいつ。あまりにも唐突で突拍子も無い答えだったから、声が出なかった。


「俺が、その能力者……なんだよ」


「……は?」


 ある日、友だちが能力に目覚めた。


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