第42話

 レビ平原にてハインの軍勢と戦闘に入ったザフィーア、ルービィ、ディアと彼が率いる軍勢。

 開幕、ルービィの炎で攻撃するものの、ハインの持つ腕輪によって操られているハインの軍勢は炎を物ともせず進軍してきた。

 その後、白兵戦にて戦闘する両陣営。個の戦闘力では圧倒的に優勢なザフィーアとルービィが圧倒していたが、ハインの魔法による妨害で戦況は逆転。ハインの軍勢が優勢という状況になったのであった。


 ――――レビ平原

「ハハハ! 形勢逆転だなぁ!!」

 自身の魔法による妨害が成功し、得意気に高笑いをするハイン。

 一方、ザフィーアやルービィはフラフラと立ち上がるのであった。

「いたたた……。何、さっきの」

 ルービィは青い血を拭いながらそう言う。

「金属性魔法……」

 ザフィーアは赤い血を拭いながらそう言う。

「金属性魔法って、あたし見たことないからよくわからないんだけど……。どんな魔法なの?」

「金属性は物体に干渉する魔法だ。ハインのように物体の形状を変化させたり、他には魔法で干渉して化学反応を起こしたり等……。科学的魔法の属性だな」

「成る程。それでさっき、草で足を絡めてきたわけか~」

 ザフィーアからの説明を受け、自身の身に起きた事象に納得するルービィ。

「しかし、草まで利用されるとは……。ハインの奴を問い詰めたかったとはいえ、向こうの誘いに乗ったのは軽率だったか」

 ザフィーアは、顔をしかめ、そう言う。

「いっそあたしの魔法でこの草全部燃やす?」

 ルービィは軽く笑いながら、ザフィーアに尋ねる。

 ザフィーアは、

「そんな事したらこちらの被害の方が大きいだろう……」

 と、冷静に返した。

「でーすよねー」

 ルービィもまた、ザフィーアの返答を聞き、そう言うのであった。


 ――――ディア陣営・後方

「ザフィーア殿とルービィ殿は無事か……。流石、四柱帝との戦いを経験した者達か」

 前衛の状況を見て、そう言うディア。

「だが、あの様子では何度も耐えられるものではない、か」

 続けてそう言い、ディアは溜め息をついた。

 するとそこに一人の兵士がやってきた。

 兵はやってくると、軽く敬礼をし、

「ディア様、失礼します。『魔弓兵まきゅうへい』の準備が整いました」

 と報告をした。

「そうか! わかった!」

 ディアはそういうと、魔弓兵の元へと馬を走らせた。

 ディアが魔弓兵の元へと辿り着くと、そこには既に弓を構え、魔法で矢を生成している兵たちの姿があった。

 魔弓兵の前に現れたディアは、魔弓兵に指示を出した。

「者ども、構え!」

 ディアのかけ声と共に弓を斜め37度の位置に構える魔弓兵。

 魔弓兵が弓を構えたことを確認すると、ディアは、

「放てぇ!!」

 と、魔弓兵にかけ声をかけた。

 ディアのかけ声と共に、魔弓兵は構えた弓から生成した矢を一斉に放つ。

 放たれた矢は、ハインの陣営に降り注ぎ、ハインの軍勢を次々と倒していった。


 ――――ディア陣営・前衛

「何今の!? すごっ!」

 ハイン陣営に降り注ぐ矢の雨を見たルービィは、思わずそう言う。

「魔弓による攻撃か」

 一方ザフィーアは、ルービィと異なり、状況を冷静に分析し、そう言った。

 魔弓兵の一斉攻撃を受けたハインの陣営。だが、変わらずハインの腕輪による魔法によって表情一つ変えず立ち上がるのであった。

 しかしながら、ハインが腕輪の魔法を発動させてもなお、倒れたままの者もちらほらと見受けられた。

「げっ! また立ち上がった」

 ハインの陣営を見たルービィが、そう言いしかめっ面をする。

「だが、倒れたままの者もいるな」

 ザフィーアは変わらず、戦場を冷静に分析してそう言う。

「もしかして、死んだら効果ないとか?」

「恐らく。あくまで生者を操る魔法なのだろう」

 ルービィとザフィーアは、倒れたままのハインの軍勢の者を見ながら、そう言葉を交わした。

 一方、ハインはというと、

「チッ! まさか魔弓使いが控えていたとはな……」

 と、奥歯を噛みしめるような表情を浮かべながらそう言う。

 だが、直ぐに

「てめぇら! 立ち上がれ! 行けぇ!!」

 と叫ぶと、腕輪を光らせ自軍の人族、魔族を立ち上がらせた。

 ハインの腕輪の魔法によって立ち上がった者達は、立ち上がると再びディアの軍勢に向かって攻撃を始めたのであった。

 向かってくるハインの軍勢に、先ほどと同様、応戦をするザフィーア、ルービィ、そしてディアの軍勢の前衛兵。戦況については当然ながら個人の戦力が圧倒しているザフィーアとルービィがいるディア軍勢側が優勢なのは、変わらずであった。

 だが、その点についてはハインも理解をしていたのであろう。交戦がはじまり少しすると、ハインは再び地面に両手の手のひらをつけたのであった。

 その様子を見たザフィーア、ルービィはまたしても草による足がらめが来ると予想する。案の定、ハインが地面に手のひらをつけ、魔力を込めるとレビ平原の草はうねうねと動き出した。

「来た!」

「同じ手は食わんぞ」

 動き出した草を見たルービィ、ザフィーアはそう言葉にする。

 そして、ルービィは足に炎を纏わせ自身の周囲を足でなぞり、炎の円陣を描いた。円陣を描くと、ルービィもハインのように両手の手のひらを地面につけ、魔力を込めた。すると、円陣内部から円陣の形状に合わせた火柱が発生。火柱が止むと、円陣内部、ルービィの周囲の草は完全に燃焼し、消滅したのであった。

 一方、ザフィーアは刀で自身の周囲を円状になぞる。ザフィーアが円状になぞった地面の箇所は、ザフィーアが刀でなぞると直ぐに凍り、ザフィーアの周囲に円状の氷壁をつくったのであった。

 ルービィ、ザフィーアの行動はハインの足がらめ妨害に対し、効果を発揮。ハインの金属性魔法によって動き出した草は、そのまま足がらめを始めるが、草むらを燃やしたルービィ、そして氷の障壁をつくったザフィーアのところには、魔法の効果が干渉できず、両者にはハインの魔法が届かなかったのであった。

「一度の被害だけでハインの魔法を攻略するとは……。流石だ」

 陣営後方でルービィ、ザフィーアの様子を見ていたディアは、ハインの魔法を攻略した両者について思わずそう言葉を口にする。

 一方、ハインはというと、

「くそがっ!」

 と悪態をつく。そして地面から両手を離すと、

「もういい! 行け、手前ら!」

 と叫ぶと、左手首の腕輪を光らせ、ハインの陣営の人族、魔族を操り、攻撃を仕掛けさせた。

 だが、足がらめの影響を受けなかったルービィ、ザフィーア相手に、ハインの陣営の者達では太刀打ちできるわけもなく、ハインの陣営は次々と両者の手によって倒されていったのであった。

「ふふふ。足がらめ攻撃、完全に破れたり!」

 ハインの陣営を倒したルービィは得意気にそういい、右手の人差し指と中指でVサインをつくる。

 一方ザフィーアは、

「成る程。今見た限り、どうやら操りの魔法と、金属性魔法による行動は、同時には行えないみたいだな」

 と、冷静にハインの行動を分析し、そう言葉にしたのであった。

 そして更に、このタイミングでディア陣営後方より、ハイン陣営に向かって再び矢の雨が降り注ぐ。第二波の準備が整った魔弓兵による攻撃が行われたのであった。

 魔弓兵による攻撃を受けたハイン陣営は矢の雨を受け、次々と倒れていく。少し前までとはうって変わって、戦況は完全にディア陣営が優勢な状況になったのであった。

 自身の魔法に対する攻略、そして魔弓兵による攻撃で一気に不利な状況へと陥ったハイン。

「くそー! くそがぁー!!」

 悔しさに満ちたハインの叫びは、戦場に響くのであった。

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