第3話 変態骸骨紳士の願い。


 マリナはカッツェに連れ出され、庭園の東屋に行った。侍女はいるが、話の内容を聞かない配慮だろう。カッツェを睨みつけているが、距離を取っている。

(変態紳士、だもんねぇ……。変態なのに紳士とは)

 侍女が整えてくれた席に座ろうとすると、カッツェが椅子を引いてくれた。

 カッツェもマリナの正面に座る。

「場所を移動してもらって、申し訳ない。伯爵がいる場所では頼みづらくて」

「頼み、とは?」

「フィルドマウンテン嬢には、ぼくの呪いを解く手助けをしてほしいと思っています」

「呪いを? 申し訳ないですが、わたしは特別な力を持っていません。解呪なら、他の方に頼まれた方が良いと思います」

「いや、マリナでないとっ……あ、いえ、フィルドマウンテン嬢に手伝っていただきたいのです」

「わたし達は婚約者です。シュライネ様がお好きなように呼んでいただければ。話し方もご無理をなさらず」

「それなら、マリナも同じようにしてくれないかな?」

「いたしません。シュライネ様は次期公爵となるお方ですし」

「それならせめて、名前だけでも!」

「それぐらいでしたら。わたしの要求ばかり通しては、夫婦として成り立ちませんもの。今から擦り合わせていきましょう」

 カッツェが、期待を込めた眼差しでマリナを見ている。

「カッツェ様」

「もう一声!」

「……カッツェ様。これ以上はできません」

「マリナ。ぼくは、マリナに名前を呼ばれたい」

「呼んでいるではないですか。カッツェ様と」

 カッツェが、しょぼんと肩を落とす。

 骸骨だから表情はわからないが、落ちこんでいるとわかる動きはずるい。全身で感情を表現する様は、もう二度と会えない幼馴染みを思い出す。

「……カッツェ。これでよろしっ!?」

「ありがとう、マリナ!」

 急に抱きつかれ、驚く。骸骨だからものすごく骨張っている。カッツェの奧では、侍女が臨戦態勢だ。

 しかしそれ以上に、マリナの関心を引くものがあった。

(……幽霊?)

 カッツェの右上に、青白い人が浮いている。そして、思いっきり目が合っていた。

――あなた、私の声が聞こえる!?

 こくり。

 マリナはふだをネックレスのようにかける女性の幽霊から問われ、思わず頷いた。

 そんなマリナの動きを見たカッツェが、ようやく離れた。

「やっぱり、マリナしかいない! ようやく、ぼくの呪いが解ける!!」

――あなた、私に真実の愛を見せて!!

「真実の、愛?」

「っ! マリナ、幽霊の声も聞こえるの!?」

「カッツェは、聞こえないのかしら」

「呪いが現れた初日は、聞こえたんだけどね」

「そう……」

 意思疎通ができるとわかった幽霊は、今すぐにでも事情を話したそうだった。

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