変態と噂される骸骨紳士の解呪方法

いとう縁凛

第1話 転生気づいて、即死ぬ寸前。


 爽やかな初夏の風が吹く頃。

 ここは、山々に囲まれ天然の要塞となっているウィステリア公国。国を治める公爵の気質は穏やかで、次期公爵も健やかに育ち、公国の未来は明るかった。

 唯一の後継者が、呪われるまでは。

 公国は、一夫一妻制。公爵夫人は嘆き悲しんだ。一人息子が難産だったため、次子を埋めない体になっていたから。

 唯一の継嗣を救うため、公爵夫妻は各方面に助けを求め奔走。しかし一人息子の蛮行とも取れる行動以外は、何も進展しなかった。




 継嗣の呪いから三年後。

「マリナお嬢様!!」

(あぁ……わたし、死ぬのね)

 マリナ・フィルドマウンテンは、落馬して頭を打ったとき、自分に前世があることを思い出した。

 治療術士を呼べだの、暴れ馬を献上してきた家の者を呼べだのと騒々しい。

(あぁ、そういえば、勝哉かつやも泣き叫んでいたな。なんて言ってたっけ)

 思い出した記憶によれば、前世のマリナが死ぬ寸前まで傍にいた人物がいる。どこに行くも一緒だった幼馴染みは、今頃どうしているだろうか。

 治療術士が来て、マリナを治療しているようだ。体がぽかぽかと温かい。

「マリナお嬢様!! しっかりして下さい!」

 マリナの侍女だろう。頭を強打して死を覚悟したマリナが、もう治療しなくて良いと伸ばした手を力強く握ってくる。その際、チクリと痛んだ。

(……死に際のお嬢様に、さらに追い打ちをかけるとは)

 顔を歪めるマリナを見た治療術士が、侍女のマリナ毒殺未遂に気づく。マリナの治療中だというのに、侍女の捕縛やら尋問やら自害やらと、また騒々しくなる。

(死ぬときぐらい、静かに死にたい)

 マリナは、体の力を抜いて目を閉じた。




 三日後。

 マリナは天蓋付きの寝台で目を覚ました。

 どうやら、体の力を抜いたことで治療が行き届いたらしい。自害した侍女に盛られていた薬のせいで弱っていた内臓も、元気を取り戻した。

 しばらくは静養するようにと父から言われたマリナは、寝台の上で父を見送る。

 そして一人になり、大きな鏡台の前へ行く。

(あなた、誰ー?)

 マリナは前世、異世界転生ものはもちろん、様々な本を読んだ。乙女ゲームも廃課金者だった。しかし、それらの知識は全く当てにならない。

 オレンジ色のレモンのようなぱっちりとした瞳と、緩やかに波打つ若葉色の髪の組み合わせは、記憶になかった。

(わたしは、何をするべき?)

 悪役令嬢なり、救国の聖女なりであれば、役割があっただろう。役割があるなら、行動理由もある。しかし、記憶の端にもかからない令嬢では、何をすればいいかわからなかった。

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