第34話 仮面ライダー復活

その時、ある建物が広道の視界に入った。

それは軒を連ねる小さな建物の背後にそびえ立っていた。


あれだ!


「いい場所がある!」


広道はグレープの背中に向かって叫んだ。

グレープは走るのをやめなかったが、後ろをちらりと振り返った。

聞こえているというサインのように。


広道は乱れつつある呼吸の間隙を縫って続けた。


「俺と…お前が…決着をつけるのに…最高の場所がある!」


グレープは減速し、ついに立ち止まった。

彼の背中は、その言葉を待っていたとでも言いたげだった。


広道も足を止めた。

グレープとの距離は保った。

電車で向かい合わせに座る程度の距離だ。

呼吸が乱れていた。

すぐに言葉を継ぐことができなかった。


グレープが振り返った。

彼も肩を上下させていた。

グレープの息が上がっていることを知って広道は安堵した。

あれだけのスピードで走った後で平然とされては、持久戦にもつれたとき勝ち目はない。


「どこだ?」


「案内しよう」


「先に場所を言え。潜入捜査官は信用できねえからな」


「あそこだ」


広道はグレープの後方にある大きな建物を指差した。


グレープは振り返った。

デパートだった。


その屋上で広道は仮面ライダーに扮し、ショーのステージに立っていた。

潜入捜査の日々において、己が正義であることを見失わないために。

子供達の声援を浴びながら、正義の鉄拳を振い続け、いつだって勝利を収めた。


あそこなら勝てる。


広道は確信した。


(つづく)

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