豊かなる平原
無限の草原
Chapter1Total
長い長い抜け道を歩み終えた3人の前に、もう一度巨大な扉が立っていた。
「うへぇ……」
「今回はズルできませんね。どうします?」
ズル……前回城壁を登ったときのことを言っているのだろう。
「問題ない。」
ルイがそう言い、扉に手をかける。
両開きの重そうな扉は、簡単に空いた。子供がお人形遊びで使うおもちゃのおうち扉のようにいともたやすく開けられてしまった。
「開いたぞ。」
「嘘……」
「この短期間でそんなに強くなる出来事なんて……」
「オメガを倒した件は?」
「あ……」
前にもこの世界で「レベル」について話したとは思うが、この世界でレベルは「長い間修業を重ねる」又は「力を持つものの命を奪う」という2つの条件のうちいずれかを満たすと上がる。ちなみに後者について、亡者の成れの果て「アンデッド」や“ゴーレム”のような無機物の場合もレベルが上がるケースがあるがそこはどうなんだという理論もあったが、結局「アンデッドや無機物の魔物は、亡骸などに何かしらの魂を無理矢理融合させたもの」としておちついた、なんてこともあったりした。
そんなことはともかく。
扉を抜けた3人の目の前に、どこまでも広がる草原が広がっていた。
腰の高さぐらいの緑色の草原。所々に色とりどりの花と、花の蜜を狙っているであろう虫。時間的にはだいたい10時ぐらい。
映画の演出などじゃないと見れないような幻想的な風景が、広がっていた。
「きれい……」
「こいつはすごいな……」
「うっとりしている所悪いけど……戦闘態勢だ!」
感動的な雰囲気は、緑色の肌を持つ醜い小人たちの乱入(を見たルイの一ミリたりとも空気を読めていない一言)によりぶち壊しとなった。
「“ゴブリン”!?」
「気をつけろよ!こいつらまず100%集団で来るから……」
後ろを振り返ったカールの視界には、血塗られた草原と血しぶき一つ浴びていないルイの姿があった。
「……心配する必要ありませんでしたね。」
「人の心配してる場合じゃねえぜ!前見ろ、前!」
そんなことを口走りながらカールが斧の一撃で“ゴブリン”を真っ二つにする。
「そうですね、集中しましょう。『
空気中に発生したいくつもの透明な空気の刃が、“ゴブリン”たちを容赦なく切り刻む。
「うっひょ〜、えげつねー。」
……そういうお前もおちゃらけながら“ゴブリン”を物理的に叩き潰してるんじゃあない。せめて斬れよ。その斧で叩き斬ってやれよ。
「よし、これでこのあたりはだいたい一掃できたかな?」
結局あたりの草原は、幻想的な雰囲気なんぞかけらもない血まみれ草原となってしまったのであった。ちゃんちゃん、とごまかせたらどれほどいいことやら。
「飯食おうって思ったけど……こりゃお預けだな。」
「そうですね、吐き気がしますよ。」
「そうかな?僕はなんともないけど。」
そんなこんなでその場から30分ほど歩いた3人。普通なら血の匂いの届かないところまで遠ざかるなんて10分もかからないのだが、それまで数回“ゴブリン”の大群に襲われたせいでなかなか昼食をとれる場所までいかせてもらえなかったのだ。
「魔物は……いないな。」
「よし、飯にすっか!俺様が愛情たっぷり込めて作ったサンドイッチ召し上がれだ!」
「バカの愛情いらないからサンドイッチだけください。」
「よし、エミー。お前昼食抜きな。」
「うわぁん!?ごめんなさい!」
実はカールは料理上手、エミーは食いしん坊という、イメージとは逆の正確だ。ちなみにルイはというと「栄養取れりゃどうでもいい」タイプ。とはいえ割と味にはうるさいし、食えるときにたっぷり食う主義だが。
*
カールお手製サンドイッチ×3(カールの自作) 22HP回復 カラフルなサンドイッチ。男子の本性がでたのかボリューミーだが、栄養バランスはカンペキ。
「む、むぐ、多いでふ、モゴモゴ。」
「お前なぁ、食いながら喋ると食べカスがこぼれるだろ。俺様のカンペキな栄養バランスを台無しにすんじゃねえ。ルイを見習え。」
「ごくり、この量を数口で完食するあなたたちバケモノと女子を一緒にしないでください!」
「わかったわかった。ほい、デザート」
*
リンゴ この前通った街で手に入れたやつ。すでにカールがうさぎにしてある。
ルイが、風景の中のどこか一点を見つめていた
「どうしたんだ?ルイ。便所か?」
「っ!食事の時にそんな単語使わないでください!」
「……用事。」
そう言うやいなや、ルイは突如として消えた。いや、一瞬にして十数メートル先に飛んだのだが、もう人間離れしているという点では同じだろう。
「ところでエミー、お前顔についてるぞ。」
「ええっ?嘘?どこですか?」
「まったく、しゃーねえなあ。」
カールがポーチからハンカチを取り出し、エミーの口の周りを丁寧に拭う。
「……こっ、この変態!」
「なんで!?」
エミーが顔を赤くして戸惑うカールに掴みかかる。
「お前ら何してるの?」
ちょっとだけいい雰囲気になりかけていた二人の空気をぶち壊しに、ルイが帰ってきた。
「うおぁ!びっくりしたぁ!」
「と、突然出てこないでくださいよ!ルイさん!」
「?悪いな。」
そこでカールは、ルイが持っていた赤色の宝石に気づいた。
「あれ?ルイ、その宝石どうしたんだ?」
「ああ、これ?行ってきた場所で出くわした“ゴブリン”を殺したらなんか出てきたんだ。」
「ルビーじゃないですか!しかも純正物!これは価値がありますよ!」
「へえ、そうなの?あとこんな売れる店もないここでその価値は意味あるのか?」
「まあいいや、さっさと進もうぜ。」
二人は知らなかった。
このルビーが、もともと“ゴブリン”の集落の宝物であったことを。それを、突然現れたルイが“ゴブリン”全てを殺し尽くした後奪い取ったものだということを。
*
今回の戦利品
棍棒×3(戦闘時に入手) 攻撃力:4 “ゴブリン”がたまに装備している、木をテキトーに削った棍棒。性能同然はゴミだが、火をつけると周りを巻き込む範囲攻撃ができるようになる。→ルイのポーチへ
ノリナの花×8(エミーが休憩中に摘んできた) 魔法のポーションの材料として欠かせない花。香りは正直言って褒められたものではない。
炎のルビー(ルイが奪取) 火属性の魔力を宿した真紅のルビー。持っていると感情が高ぶる。感情のプラスマイナスおかまいなしで。
Louis Karl Amy
Lv 20 11 13
Kills 629(+168) 217(+34) 343(+33)
EXP 9814(+1344) 1577(+272) 2421(+264)
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