第5話 自分を愛する みかん入りポテトサラダ

 リナは次の部屋に入ると、目の前に大きな鏡が現れた。鏡の中には、疲れた顔の自分が映っていた。彼女はその自分を見つめ、何度もため息をついた。


 「どうして、こんなにも上手くいかないんだろう……」


 リナは鏡に映る自分を見て、無力感に包まれていた。試練の度に感じる不安や、時折襲ってくる自己嫌悪が心を締めつけていた。自分のことを大切にできていない、そんな思いが胸にこみ上げてきた。


 「私、もっと強くならないといけないのに……」


 そのとき、鏡の前に小さなボウルが現れた。中には、色とりどりの具材が盛り付けられている。よく見ると、その中にはみかんが爽やかに散りばめられているのが見えた。




 「リナ、私を食べてみて。」


 みかん入りポテトサラダが、柔らかな声で語りかけてきた。


 「……食べ物が話しかけるなんて、どういうこと?」


 リナは驚きつつも、心に引き寄せられるようにボウルに手を伸ばした。みかん入りのポテトサラダを一口食べると、その味わいが口いっぱいに広がった。ポテトのまろやかさとみかんの酸味、そしてほんのりとした甘さが、驚くほどの調和を生み出していた。


 「おいしい……」


 「ありがとう。あなたは今、自分を愛するために大切な一歩を踏み出しているんだよ。」


 リナはその言葉に驚いた。ポテトサラダは、ただの食べ物ではなく、心の中に優しく語りかけてくる存在だった。


 「自分を愛するって……どうすればいいの?」


 みかん入りポテトサラダは、優しく答えた。




 「自分を愛することは、最初の癒しになるんだよ。自分を大切に思うことで、心がやっと軽くなる。そして、自分に優しくできるようになることで、他のものにも優しさを分け与えることができる。」


 リナは、ポテトサラダを口に運びながら、その言葉を噛みしめた。今まで、自分に厳しすぎたかもしれない。あまりにも「完璧」でなければならないと思い込んで、自分を許せなかった。


 「私は……こんな自分でも大丈夫なのかな?」


 「大丈夫だよ。」


 ポテトサラダは温かく微笑んだ。「みんな、どんな自分も愛すべき存在だって、最初に気づくことが大事なんだ。そして、あなたは今、自分を愛し始めている。最初の一歩を踏み出したことを、誇りに思っていいんだよ。」


 リナはもう一口ポテトサラダを食べ、心が少しずつ軽くなっていくのを感じた。彼女の胸の中で、何かが少しずつ解けていくような感覚が広がっていった。


 「自分を愛することが、こんなにも大切なんだ……」




 リナはもう一度鏡を見つめた。今度は、自分の顔が少しだけやわらかく、優しい表情に見えた。


 「私、もっと自分を大切にしよう。」


 リナは鏡の中の自分に微笑みかけ、心の中で決意を固めた。


 みかん入りポテトサラダの爽やかな味が、彼女の心をさらに癒し、自己肯定感を取り戻すきっかけとなった。彼女はもう、前よりも少しだけ、自分を愛せるようになった気がした。


 次の扉が開くのを、リナは静かに待ちながら、再び歩みを進めることを決めた。

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