第2話 被害者意識がもっとあなたを苦しめる 小豆のおかゆ
リナは扉を抜け、新しい部屋に足を踏み入れた。期待に胸を膨らませていた彼女の表情は、一瞬で曇った。そこは薄暗く、冷たい水が膝まで溜まった部屋だった。天井からはポタリ、ポタリと水滴が落ちてくる。
「何これ……どうしてまたこんな場所に?」
水の冷たさがリナの足元から心にまで染み込むようだった。さっきのスープのおかげで一度は希望を見いだしたはずなのに、状況は一向に好転していない。
「私はどうしてこんな目に遭うの?私ばっかり……こんなに苦しむなんて不公平だわ。」
彼女の胸には不満と悲しみが渦巻き、次第にそれは苛立ちと諦めへと変わっていった。
すると、水面に小さな波紋が広がり、中央に何かが浮かび上がってきた。それは湯気を立てた小さな椀だった。近づいてみると、中にはほんのり甘い香りが漂う小豆のおかゆが入っていた。
「また……食べ物?」リナは眉をひそめた。
「こんにちは、リナ。」小豆のおかゆが温かな声で話しかけてきた。「冷たい場所で震えている君を助けにきたよ。」
「助けるって……あなたに何ができるの?私はこんな状況にいるんだよ!ここから出られる気もしないし、寒くて足も動かない……。」
リナの声は涙声だった。しかし小豆のおかゆは、落ち着いた声で答えた。
「リナ、まずは一口私を食べてごらん。少し体が温まれば、心も少し楽になるはずだよ。」
リナは半信半疑ながらも、冷え切った体を温めたくて椀を手に取り、小さじ一杯の小豆のおかゆを口に運んだ。その瞬間、口の中に広がる甘さと優しさが、彼女の体を内側からじんわりと温めていった。
「どう?少し落ち着いたかな。」おかゆが微笑むように問いかける。
「うん……少し。」リナは驚いたように答えた。「でも、それでもこんな状況、どうしようもないじゃない!」
おかゆは優しく答えた。「リナ、君の心の中に、被害者意識という毒が広がっていることに気づいているかい?」
「毒?」
「そう。『どうして私ばかりこんな目に遭うの』という思いは、自分の力を奪い、心を冷たくしてしまうんだ。その冷たさが、今君が感じている水の冷たさそのものなんだよ。」
リナは言葉を失った。小豆のおかゆの言葉は、自分の心を見透かしているかのようだった。
「でも……どうして私がそんな思いを抱くようになったの?」
「それは、君が自分の状況を受け入れられず、誰かや何かのせいにしたい気持ちから来ているんだ。だけど、そんな気持ちに囚われていると、君はいつまでもこの冷たい場所から抜け出せない。逆に、自分ができる小さなことを見つけて行動するだけで、道は開けるんだよ。」
リナは再びスプーンを取り、小豆のおかゆを一口、また一口と食べた。食べるたびに、体の冷えが取れていくのを感じた。それだけでなく、心の奥にあった苛立ちや悲しみが、少しずつ溶けていくようだった。
「ねえ、小豆のおかゆ……じゃあ私は、どうすればこの状況を変えられるの?」
「まずは、現状を冷静に見つめ直すことから始めてみて。被害者意識を手放して、自分にできることを探してみるんだよ。たとえ小さなことでもいい。それが、冷たい水から抜け出す第一歩になるから。」
リナは深呼吸をした。おかゆの温かさが、彼女の冷えた心に灯をともしていた。そして、彼女の目には新たな光が宿り始めた。
「分かった……やってみる。」
すると、不思議なことに、冷たい水がゆっくりと引いていくのを感じた。足元にあった水が消え、部屋がほんのりと暖かくなっていく。
「そうだよ、リナ。君の心が変われば、周りの状況も変わっていくんだ。これが君の力だよ。」
リナはお椀を置き、微笑んだ。「ありがとう、小豆のおかゆ。あなたのおかげで気づけたよ。」
その瞬間、新たな扉が現れた。今度は鮮やかな赤色で、見るからに力強い扉だった。
「さあ、次のステップへ進むんだ。君ならできるよ。」
リナは頷き、扉を開けた。その先にはさらなる挑戦が待っているようだったが、彼女はもう怖くなかった。小豆のおかゆの言葉が、胸の中で力強く響いていたからだ。
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