第9話

魔法適性試験が終わった翌日――。


「よし、今日から本格的な訓練を始めるぞ!」


「えぇ……」


僕は王宮の訓練場で、全身の筋肉を引き締めた屈強な騎士たちに囲まれていた。目の前に立つのは、女騎士エリナ。鋭い眼光で僕を見下ろしながら、腰に佩いた剣を軽く叩いている。


「レオン、お前は剣の適性も魔法の適性もあると証明された。ならば、騎士としての実力も身につけてもらう。覚悟はいいか?」


「ちょ、ちょっと待ってください! 僕、護衛になるなんて一言も――」


「陛下の命だ。逃げられると思うな。」


エリナがニヤリと笑う。


(あああ……またしても既成事実が積み上がっていく……!)


昨日の魔法試験で"規格外の魔力量"を持つと認定されてしまったせいで、僕はすっかり宮廷の重要人物扱いになってしまった。


さらに、王様から「セシリアの護衛としての責務を果たすために、鍛錬は必要だろう?」と強引に納得させられ、今こうして騎士団の特訓を受ける羽目になっている。


(いや、僕、村では普通の少年だったんですが!?)


そんな僕の困惑など意に介さず、エリナは腰の剣を抜き、木剣を僕に投げ渡した。


「さあ、構えろ。」


「え、いや、その……本当にやるんですか?」


「当然だ。お前の剣の腕を試す。」


「僕、昨日の模擬戦では奇跡的に勝っただけで――」


「謙虚なことだ。だが、一度でも副団長を打ち負かした以上、言い訳はできないぞ?」


(あれ、ただの事故だったんですけど!?)


逃げ場がないことを悟った僕は、しぶしぶ木剣を構える。


すると、エリナはニヤリと笑い、いきなり地面を蹴った。


バッ!


速い――!


反射的に僕は剣を横に振る。


ガキィィン!


木剣同士がぶつかり合い、火花のような衝撃が走った。


(うわっ、なんだこれ……!? 体が勝手に動いた!?)


「ふむ……やはり、お前の動きは普通じゃないな。」


「いや、これは……!」


「次!」


エリナは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。


僕は必死に防戦しながら、異様な感覚に戸惑っていた。


――どうしてだろう?


初めての戦いのはずなのに、まるで体が戦闘を"知っている"かのように動く。


村で剣の修行なんてしたことはなかった。なのに、なぜか"やり方"がわかってしまう。


(まさか……これが"大賢者の生まれ変わり"とかいう話に関係してるのか?)


そう考えた瞬間――


エリナの一撃が僕の木剣を弾き飛ばした。


ガシャン!


「ふっ、さすがに経験の差はあるな。」


「うぅ……。」


地面に倒れ込んだ僕を見下ろしながら、エリナは腕を組んで微笑んだ。


「だが、お前の動きは確かに異常だ。これから訓練を重ねれば、王国でも屈指の剣士になれるかもしれないぞ。」


「いや、ならなくていいです……!」


「ふふ、そんなことを言っても、王命は絶対だからな?」


(あああ……これ、絶対に逃げられないやつだ……!)


その後、僕は朝から晩まで鍛え抜かれ、全身筋肉痛になったのだった。




___________________________________________________



感想や改善点をコメントして頂けると幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る