第7話

「――レオン様、試験の内容が決まりました。」


翌朝、僕は執務官に呼び出され、王宮の訓練場へと向かうことになった。


(試験か……。ここで無能さを証明して、誤解を解くんだ!)


そう決意していたのに――


「お前が"大賢者の生まれ変わり"か。」


鋭い眼光を放つ屈強な騎士が、僕の目の前に立ちはだかった。


「王国騎士団副団長、ガイル・フォン・ラグナスだ。」


ガイルは重厚な鎧をまとい、手には巨大な剣を携えている。その圧倒的な風格に、僕は思わず後ずさった。


(ちょ、ちょっと待て!? これって魔法の試験じゃないのか!?)


「今回の試験は、騎士団との模擬戦だ。」


「えっ?」


「実戦での戦闘能力を測るため、お前には騎士団員と剣を交えてもらう。」


(いやいや、僕、剣なんてまともに振ったことないんだけど!?)


「ご安心ください、レオン様。」


そう言いながら、僕の隣に立ったのはセシリアだった。


「模擬戦とはいえ、命に関わることはございません。騎士団も手加減を――」


「いいや、俺は本気で行くぞ?」


「は?」


ガイルは不敵な笑みを浮かべ、剣を肩に担いだ。


「"大賢者の生まれ変わり"の実力、試させてもらうぜ。」


(うわぁ……嫌な予感しかしない。)





「それでは、レオン様とガイル副団長の試験を開始します!」


審判役の騎士が号令をかける。


ガイルは軽く剣を振り、構えを取った。対する僕は、手にした木剣をどう構えるべきかすら分からず、ぎこちない動きになってしまう。


(これはもう……わざと負けるどころか、普通にやっても負けるやつだな。)


僕がそう考えていると――


「行くぞ!」


ガイルが地面を蹴った。


(速っ!?)


一瞬で間合いを詰められ、鋭い斬撃が襲いかかる。


「わわっ!」


僕は咄嗟に身を引いた。その瞬間、木剣が目の前をかすめ、髪がふわりと揺れる。


(これ、本当に模擬戦!? 手加減してないよね!?)


ガイルは容赦なく追撃を仕掛けてくる。僕は必死に逃げ回り、なんとか直撃だけは避け続けた。


「おいおい、逃げ回るだけか?」


「そ、そんなこと言われても!」


僕が木剣を振るうと、ガイルは軽々と受け流した。腕の差は歴然だ。


(このまま適当にやられて終わらせれば――)


そう思った瞬間、ガイルの剣が大きく振りかぶられる。


(やばっ!)


僕は反射的に地面を蹴り、後方に飛んだ。


「……ん?」


ガイルが驚いたように目を見開く。


僕は無意識に身を翻し、体勢を立て直していた。しかも、地面に足をついたとき、不自然なほど軽やかだった。


(え? 何これ? 俺、こんなに動けたっけ?)


自分でも驚いていると、観戦していた騎士たちがざわつき始めた。


「今の動き……まるで熟練の剣士のようだったぞ。」


「大賢者の力が影響しているのか……?」


(えええ!? ただの反射で避けただけなのに!?)


「ふっ、やるじゃねぇか!」


ガイルが嬉しそうに笑い、再び攻撃を仕掛けてくる。


僕は必死に防御しながら、適当に負けるタイミングを探した。


(……もうダメだ! 適当に転んで負けるしか――)


しかし、その瞬間。


バキッ!


衝撃とともに、ガイルの木剣が折れた。


「……へ?」


ガイルも僕も、一瞬動きを止める。


どうやら、僕の木剣がガイルの木剣に当たり、そのまま折ってしまったらしい。


(そ、そんなことある!?)


「さすが大賢者の生まれ変わり……!」


周囲の騎士たちがざわめき、観戦していたセシリアが感動したように手を組んだ。


「レオン様……やはり、すごいお方……!」


(違う! これは偶然!!)


「ふっ、完敗だ。」


ガイルは破損した木剣を見つめ、満足げに笑った。


「お前、ただの村人じゃねぇな。」


「い、いやいや、本当にただの村人なんですって!」


「強者は皆、そう言うもんだ。」


(何その理屈!?)


こうして、僕の"戦闘試験"は、意図せず勝利で終わってしまった――。




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