第7話
「――レオン様、試験の内容が決まりました。」
翌朝、僕は執務官に呼び出され、王宮の訓練場へと向かうことになった。
(試験か……。ここで無能さを証明して、誤解を解くんだ!)
そう決意していたのに――
「お前が"大賢者の生まれ変わり"か。」
鋭い眼光を放つ屈強な騎士が、僕の目の前に立ちはだかった。
「王国騎士団副団長、ガイル・フォン・ラグナスだ。」
ガイルは重厚な鎧をまとい、手には巨大な剣を携えている。その圧倒的な風格に、僕は思わず後ずさった。
(ちょ、ちょっと待て!? これって魔法の試験じゃないのか!?)
「今回の試験は、騎士団との模擬戦だ。」
「えっ?」
「実戦での戦闘能力を測るため、お前には騎士団員と剣を交えてもらう。」
(いやいや、僕、剣なんてまともに振ったことないんだけど!?)
「ご安心ください、レオン様。」
そう言いながら、僕の隣に立ったのはセシリアだった。
「模擬戦とはいえ、命に関わることはございません。騎士団も手加減を――」
「いいや、俺は本気で行くぞ?」
「は?」
ガイルは不敵な笑みを浮かべ、剣を肩に担いだ。
「"大賢者の生まれ変わり"の実力、試させてもらうぜ。」
(うわぁ……嫌な予感しかしない。)
◆
「それでは、レオン様とガイル副団長の試験を開始します!」
審判役の騎士が号令をかける。
ガイルは軽く剣を振り、構えを取った。対する僕は、手にした木剣をどう構えるべきかすら分からず、ぎこちない動きになってしまう。
(これはもう……わざと負けるどころか、普通にやっても負けるやつだな。)
僕がそう考えていると――
「行くぞ!」
ガイルが地面を蹴った。
(速っ!?)
一瞬で間合いを詰められ、鋭い斬撃が襲いかかる。
「わわっ!」
僕は咄嗟に身を引いた。その瞬間、木剣が目の前をかすめ、髪がふわりと揺れる。
(これ、本当に模擬戦!? 手加減してないよね!?)
ガイルは容赦なく追撃を仕掛けてくる。僕は必死に逃げ回り、なんとか直撃だけは避け続けた。
「おいおい、逃げ回るだけか?」
「そ、そんなこと言われても!」
僕が木剣を振るうと、ガイルは軽々と受け流した。腕の差は歴然だ。
(このまま適当にやられて終わらせれば――)
そう思った瞬間、ガイルの剣が大きく振りかぶられる。
(やばっ!)
僕は反射的に地面を蹴り、後方に飛んだ。
「……ん?」
ガイルが驚いたように目を見開く。
僕は無意識に身を翻し、体勢を立て直していた。しかも、地面に足をついたとき、不自然なほど軽やかだった。
(え? 何これ? 俺、こんなに動けたっけ?)
自分でも驚いていると、観戦していた騎士たちがざわつき始めた。
「今の動き……まるで熟練の剣士のようだったぞ。」
「大賢者の力が影響しているのか……?」
(えええ!? ただの反射で避けただけなのに!?)
「ふっ、やるじゃねぇか!」
ガイルが嬉しそうに笑い、再び攻撃を仕掛けてくる。
僕は必死に防御しながら、適当に負けるタイミングを探した。
(……もうダメだ! 適当に転んで負けるしか――)
しかし、その瞬間。
バキッ!
衝撃とともに、ガイルの木剣が折れた。
「……へ?」
ガイルも僕も、一瞬動きを止める。
どうやら、僕の木剣がガイルの木剣に当たり、そのまま折ってしまったらしい。
(そ、そんなことある!?)
「さすが大賢者の生まれ変わり……!」
周囲の騎士たちがざわめき、観戦していたセシリアが感動したように手を組んだ。
「レオン様……やはり、すごいお方……!」
(違う! これは偶然!!)
「ふっ、完敗だ。」
ガイルは破損した木剣を見つめ、満足げに笑った。
「お前、ただの村人じゃねぇな。」
「い、いやいや、本当にただの村人なんですって!」
「強者は皆、そう言うもんだ。」
(何その理屈!?)
こうして、僕の"戦闘試験"は、意図せず勝利で終わってしまった――。
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