PROLOGUE 2

キェ!!???


怪鳥の動きが止まる。本能が反応したのだ。

すぐそばに現れた巨大なカラスとの、に……

あまりに強烈なオーラにより、思わず掴んでいた少女から手を離してしまう。

そのまま少女は、足元からドサリと地面に落ちた。

『あっ勝手に萎縮してくれた、ラッキー……これで女の子は大丈夫か。』

カラスの中に宿っている玲がそう呟き、オーラがゆらりと揺れたと思ったら……

!!!

異常なスピードで空気を切り裂く、破裂音が響いた。カラスが目にもとまらぬ速さで突撃したのだ。

ギュエ!!??

当然怪鳥は避けられるはずもなく、喉元にまともに突進を受けた。その勢いのまま空中に放り出される……それは明らかなる隙。カラスはそれを見逃さなかった。

『トロくて助かったよ……【シック・ビーク】!』

その詠唱と同時に、カラスは空高く舞い上がった。そしてただでさえ大きいカラスのオーラがさらに巨大化し、巨大なドリルのような形になって……

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!

『そいやあぁぁ!!!!!!』

怪鳥に向かって上から突き刺さった!

ズゴズゴズゴズゴズゴズゴズゴズゴ!!!!!!!!!!!!!!

凄まじい威力の攻撃が多段ヒットすることで、規格外のオレンジの閃光、音、振動が生まれる!!!……怪鳥は落下しながらただ、蹂躙されるのみだ。

『これで、終わり!!!』

ズガァァァン!!!!!……

そして怪鳥は地面に打ち付けられ、すっかり動かなくなった。

『……ふう。思ったよりはタフだったな……」

オーラがほどける。そのまま変身を解き、一息ついた玲。しかしまだ彼女の仕事は終わりではない。

「そうだ、女の子の様子はどうだろう……?」


―――

少女は、手放された位置から変わらず、そこにいた。意識もある……

すぐさま、玲が駆け寄る。

「……ハァ、ハァ……」

「大丈夫?ケガはない?」

「……はい、一応……」

「よかった……あの化け物は倒したから、安心してね。」

「ありがとうございます……あ、あなたが、CROSSの……玲さん?」

「おっ、知ってるの?ありがとう!」

「はい……テレビとか、新聞とかで、よく見ます……あとyoutubeも。」

―――

CROSSは地道な広報活動も欠かさない。市民の前に立って戦う者として、親しみやすさはまさに命。広報活動は最早必須ともいえる。

そのおかげで、ここら辺――川添の人でCROSSを知らない者はいないといってよい。この少女も例外ではないわけだ。

―――

「……ありがとうございます。助けてくれて。でも……」

「……どうしたの?」

「……あの、あれ、殺したんですか……?」

倒れた怪鳥を指差しながら、少女は声を絞り出した。

玲は優しく微笑みながら、答える。

「え?……ふふ、まさか、気絶させただけだよ。うちの職員がすぐに保護して、意識が戻ったら解放する。だから大丈夫だよ。」

確かに、いつの間にかたどり着いた職員らしき人たちが、怪鳥を回収し始めている。

「……そうですか。よか、っ……」

そう言ってようやく笑顔を見せた瞬間、少女の動きが止まった。興奮で紅潮していた顔が一瞬にして青ざめたと思ったら……

「……っ、っ……」

……

「こ、これはっ……まずい、みんな、早くこの子も搬送して!」


―――


……まただ。


どんなに周りからの親切を受けても……


発作のせいで、感謝をする暇もなく、かえって迷惑をかけてしまう。


サイアク、本当にサイアクな気分だ。


……あぁ、また病院行きか……


……


「……」


「……あれ?」


……病院じゃない。病院にしては天井がカラフルだ。その違和感で目がすっかり覚めてしまい、反射的にベッドから起き上がった。

「ここ……どこだ?」

青色の装飾がきれいな、学校の保健室をスタイリッシュにしたような部屋……本当に、どこなんだ?

(ウィーン)

……ん、誰かが来たみたいだ。

「あっ……目、覚めた?」

「は、はい……あっ!」

寝起きのわたしに声をかけてくれたのは……さっき助けてくれた……玲さん、だった。さっきと変わらず、オレンジのアクセントがおしゃれなCROSSの隊服に身を包んでいる。写真とかで何度も見たことはあるけど、やっぱりカッコいい!

「よかった……突然倒れたものだから、心配しちゃったよ。」

「す、すいません……昔からの病気で……」

「……病気?どういうこと?」

玲さんは、怪訝けげんそうな顔を浮かべる……そりゃそうだ。

「あ、わからないですよね……あの、わたし、場所とか関係なく突然意識を失っちゃう症状があって……」

「……ホント?」

「はは、目の前で見ましたよね、玲、さん……あの通りです。あの通りに、どこでも気絶しちゃって……」

「ねー。本当に驚いたよ。すぐに病院に搬送してもらったけど、もう心配で心配で……」

「すみません、迷惑かけちゃって……」

「いいのいいの。自分でコントロールもできないだろうし、そんなに気に病む必要はないって!」

みんなそう言う。やっぱり気を遣わせてしまっているみたいだ。うぅ……

「……でも、ここって病院じゃないですよね?こんなスタイリッシュな壁……」

「あ、あぁ、そうだよ。ここはCROSS本部の休憩室。病院じゃないよ。ちょっと伝えたいことがあって……容体が安定してから、病院からCROSS本部に送ってもらったんだ。」

「そ、そうなんですか……?」

「そうそう。……ところで、えーと、あなたの名前は……」

「あ、そうか……朱音あかね 巳友みゆうです。みんなからは『みゅう』って呼ばれてます……」

「『みゅう』……いいあだ名だね。ところで、朱音さん……」

玲さんの口調が変わった……急に、真剣な顔つきになって、こちらを見つめてくる……

一気に緊張感が漂った休憩室。一瞬の沈黙の後、玲さんは口を開いた。

「……?」

「……え?」


……え?

……それ、だけ?

「……右です。」

「そうか、そうだよね……ありがとう。これではっきりした。」

「……?」


どういうこと?利き手を聞いただけで『はっきりした』って……わからない。何がなんなのかさっぱりわからない。そもそも、わたしを態々わざわざ病院から送ってもらうほどの「伝えたいこと」が何なのかもさっぱりだし、CROSSの一員、つまりみんなのヒーローである玲さんが、こんなただのJKのわたしに「伝えたいこと」がある、ということ自体も意味不明だ。どうして……


そんな風に困惑したわたしの脳内は、次に玲さんが発した言葉のせいで……瞬く間に


CROSS?」

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