自堕落論青春

幅田明

青春って辞書で引け。 上

僕は、田中ひとし。辞書を読むのが趣味だ。

将来小説家を目指し語彙を仕入れるため 父の本棚から拝借し、少し古ぼけた辞書を選んで読んでる。

そんな古風な趣味と言えるものを父や母は喜んでた。 SNSとは無縁な生活を 母は喜んでいた事を覚えてる。


僕は、成長した。 高校1年に進学したのだ。執筆したいから。偏差値は36の高校に入った。

勉学より、より良い早咲きを目標に執筆し、輝かしい文壇に上がるのだ。 それが僕の青…

「青春部〜 青春部1年の佐藤あきらです! 部員は僕しかいません! 僕は、この学校生活を青春をし永遠と続けたいです!1年部長佐藤あきらです!よろしくお願いします!」

僕は、その声量が耳に入ったが、右から左へ流した。関係の無い 外聞は聞かない主義だ。

さて、クラス表を見たが【佐藤あきら 】という名前があっても この時僕は、気づかなかった。


クラスに着き、席を探す。無駄のない動きで自分の席に座った。脇目も振らず、辞書を開いた至福。 この言葉に尽きる。すぐ夜の執筆のことを考えた。 辞書を開き、意味を知る 満たされる。 小説は読まない。それはプライド云々では無く、小説1冊を参考にせず 自分の構築されてく意味の数々の方が織り成す、文章が好きだった。

感情は無い。意味はある。 僕は、そういう文字を書くのだ。

「青春部だ!」

爆発みたいなクラスメイトの大きい声に僕は顔を上げた。

坊主頭が教室のドア付近にいた。

「興味あります?! 青春部!」

「興味も何も…」

「青春したいなら僕が君の人生の礎になるよ!」

「馬鹿だと思ったら礎とか知ってるんだな」

「何故かですかね あと僕は馬鹿です!」

僕は再び辞書に目を落とした。

関係ない。 それに尽きる。


小説は読まないが、入学式の祝辞と新入生の首席の言葉は好きだ。

「新春、新しき成長をする階段は私たちは上がってると思います」

季語の使い方 丁寧語 聞くだけで季節を興味のない外の世界を実感できる。 寝てる奴らは、この瞬間を損してるな。と僕は思った。


入学式も終わり、クラスの自己紹介は「よろしくお願いします」だけを言い、下校時刻になった。

夜の執筆に構想を立てて下校とするか…

「君、田中くん同じクラスの君!僕が外の世界を教えてあげる」

その声を聞いたこの日のことは僕は小説に書くだろう。

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