第4話 不安の種

「所属不明艦隊、通信活発化、戦闘態勢を解いた模様。」


「そうか、こちらのレーダーにもバグズの反応は無いし……ちょっと、それ画像出して。」


「脱出ロケットですな。」


オペレーターがコンソールを操作し、モニターに映像が表示される。

そこには、アメリゴ連邦軍およびコロンブス共和国の脱出ロケットが映し出されていた。

ロケットは比較的安定した軌道を進んでいるが、一部は酸素供給や動力系に問題がある可能性があった。


「……救助に向かうべきかな?」


その言葉に、オペレーターは 一瞬「ム……」 と嫌悪感交じりの表情を浮かべた。

だが、すぐに姿勢を正し冷静に報告する。


「脱出ロケットの耐久状態はおおむね良好ですが、いくつかの機体は回収圏外に離れてしまう可能性があります。」


クロード艦隊長官は穏やかな口調で答えた。


「こういう時、宇宙で助けてもらえると思うから、我々は戦えるのです。彼らを助けることは、我々の責任でもあります。」


その言葉に、ブリッジの空気が一瞬だけ引き締まった。


「そっちじゃなくて……、いや所属不明という事に警戒しすぎていた、ただ救助人員は最低限の武装を、俺にとってはバベルのメンバーが誰一人かける事の無い事が一番大事だという事を忘れないで欲しい。」


「ははは、ええ了解しました各員に徹底させます。」


通信が終わりその場にほっとした空気が広がった。同時に照れ臭さも交じる。

オペレーターの何人かは、小さく笑みを浮かべながら静かに頷いた。

それぞれが持ち場へと戻り、救助態勢の準備を開始する。


バベル駐屯艦隊の各艦が数度通信の光を発し、脱出ロケットが返答を返す。


「オーナー少しお話が、すこし突拍子もない話なのですが、このバベル自体が転移現象に巻き込まれた事もあります。ここが……統合運用計画が行われる前の時代、過去かもしれません。」


そうかとしか思わなかった、俺にとってはゲームの世界であり歴史を変えるうんぬんの実感は無かった、ただそれが本当なら、有利になるとしか思わなかった。


「リアム副官、転移現象と言うと何だ?」


「ええ、オーナーが睡眠中に移動要塞バベルは宇宙嵐に遭遇、直掩艦隊や所有艦船を収納し航行中に現在の戦場に転移しました。」


艦隊が格納、武装のモスボール処理がされていたのはそれが原因かと俺は納得する。


「情報処理室にログを調べさせていますが転移の原因は不明、ただ修復中のゲートウェイ付近にこのバベルが出現した事から、ゲートウェイ関連の未知の事象と推測できます。」


ゲートウェイには解からない事の方が多い、設定では古代の遺物、その繋ぐ先やつなぎ方、イベントにより休眠状態のゲートウェイが起動したり事故によりその繋がりが途絶える事があったが、文明を育てると言う意図があるのではと考察されているが今は良い。


惑星間の航行にも数ヵ月単位の時間がかかるゲーム内の文明が、多種族と接触したり気軽に別の惑星に行けるのかの答えがこの巨大なワームホールであるゲートウェイである。


「ゲートウェイの不思議で大抵の事を納得できる世界観ですら過去への転移は恐ろしい事なのか。」


青い顔で報告してきたリアム副官の顔を思い浮かべる。


冷静沈着のアビリティーを持つ人間を副官にしていたなと思い、過去に来た事実よりもそれが人員に与える影響にこそ注意するべきなのかもと、一人頭を抱えた。

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