【カクヨム10 短編用作品】心優しき姫様は、悪姫は偽り、更に偽りの新婚生活を始めます!
斉藤しおん
第1話
緑にあふれた農業が盛んな国イーベリア。
諸外国と違い、武力の弱いこの国では外交が不可欠。
姫の婚姻が唯一の国を守る術になっている。
この国で姉姫達は武力の強い国へと嫁ぎ終え
結婚していない姫は悪姫以外にもう居ない。
しかし、彼女は未だに婚姻を断り続けている。
「はぁ……断るだけのお見合い相手を選ぶなんて非効率だと思わない?」
「はい、姫様」
ツカツカと王城を進む悪姫を見ると誰しもが頭を垂れる。
長い金髪を結い、派手派手しい赤いドレスをまとった悪姫。
それに従うキャップを被って結った髪を覆い隠した何人もの侍女達。
派手派手しい侍女を何人も連れて庭に出るだけでもこの有様だ。
ヒソヒソと大きな声で悪評を言えない臣下たちが声を潜めて彼女を非難する。
彼女に名前を呼ばれた侍女一人だけは化粧っ気のない
生気のない目で静かに悪姫の隣を歩いている。
悪姫は諸外国でも有名な嫌われ者だった。
学生時代は諸外国の王子が何人も言い寄ってきたにも関わらず
「姫(わたし)にはふさわしくなくってよ」と
派手に蹴散らしたことでも有名な、不敬にも程があるプライドの高い女。
最近では自身の美貌を際立たせるために
傍仕えの侍女一人だけに化粧すら許さない性悪女。
そのくせ、傍仕えの侍女一人以外には贅沢を許し、
何人もの専属侍女が派手派手しく着飾り、国の財政を蝕んでいる。
『いくら美しくともこんな悪女では誰とも結婚できないだろう』
外に出る度、その美貌を讃えるものはおらず、国中の誰もがそう囁く。
その度に、悪姫や着飾った侍女達がグッと手を握りしめているとも知らずに。
「今日も退屈ね。気が変わったから部屋に戻りましょ」
悪姫が一瞥すると凪ぐようにヒソヒソ声が止まり、
くるりと後ろを向いて部屋に戻れば、「またか」と溜息と共に臣下達は静かに呟く。
「まだ美しいうちにどこかの国の王子と結婚してくれれば……」
「姉姫様達は全員務めを果たしているのに」
「昔はあんなにも従順で素直だったのに……」
「どこであんなに歪んでしまったのだろう」
彼らは知らない。
彼女が悪姫となった理由を。
これからも、ずっと、ずっと知らなくていい。
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