第20話:ダンジョン

 結論、エリィの用意してくれたお弁当は本当に美味かった。腹も膨れたので、いよいよメインディッシュを喰おうではないか。


「さて、何が出るかな?」


 扉に手をかざしてゆっくりと押していく。門はゴゴゴゴと音を立てながら開いていくと、中は真っ暗でよく見えない状態だ。

 ライトボールだけを部屋の中に入れて様子を伺おうとしたが、扉のあった場所から部屋に入ると掻き消えてしまった。何度か繰り返してみたが、どうやらボス部屋は外からの干渉を受けないような不思議な力が働いているのか全て無駄に終わった。

 姿が見えたら一気に魔法で殲滅しようと思ったが、どうやら上手くいかなくなっているらしい。


「しゃーない、入りますか」


 中に入ってみると、暗かった部屋が急に明るくなる。部屋は非常に広い作りをしており、天井も高い。相変わらず壁は洞窟を掘り出したようなゴツゴツした壁だが、所々に光源が設置されているのか、さっきまでの暗さが嘘のように明るく部屋を照らしている。

 その光源に照らされた魔物が奥の方に鎮座していた。


「あれは……ゴブリンか」


 緑色の肌と小さなツノを頭に生やしている小鬼と呼ばれている存在、ゴブリン。頭頂部に髪の毛はなく、小柄なりにも筋肉はしっかりついており、一匹ならそこまで脅威ではないにしろ知恵も多少あるので集団だと苦戦する……だったか。

 俺の眼前には少なくみても10匹はいそうに見えるな。


 入口から一歩しか踏み入れていないが、向こうはこっちを見ていても襲ってくる気配はない。入口が完全に閉まってから本番が始まるのだろう。

 せっかく動かないでいるんだから、先に解析アナライズさせてもらうか。


 ゴブリンは全部で11匹。前に7匹のゴブリンが構えており、その後ろに杖を持ったゴブリンメイジが3匹、さらにその後ろに一回り以上大きいのがホブゴブリンだ。

 ホブゴブリンは斧を持っており、ゴブリン達は棍棒を持っている。さて、このまま燃やして終わるのもいいが、それでは味気ない。

 せっかくだし、肉弾戦で多対1がどこまで通用するかみてみようじゃないか。


 手にかけていた扉を話すと、ゆっくりと扉が閉まり始めた。その間に魔力布衣の出力を上げ、魔導法鎧まどうほうがいへと変化させる。予想通りなら取るに足らない存在であるゴブリンだとしても、万が一を考えればこれぐらいの準備はしてもバチは当たらないだろう。

 俺の知っている以上に強いなら、魔法も使って撃退するだけだ。


 扉が閉まり切ると、ゴブリン達が一斉にこちらを向いた。どうやら侵入者として認識されたらしい。

 ホブゴブリンが号令をかけると、前にいたゴブリン達が一斉に俺目がけて走ってくる。その後ろでゴブリンメイジは何やら詠唱を始めた。


「ははっ。そりゃ悪手じゃねーか? ゴブリンよぉ」


 得体の知れない相手なら、まずは遠距離攻撃などで様子を探るのが定石だ。そのためにゴブリンメイジが魔法詠唱をしているのかも知れないが、それ以上にゴブリンの方が俺に到達するのが早い。

 横一列に並び横っ飛びなどで回避させないようにしているのか、少し広めに俺を囲うように走ってくる。それならこっちはその包囲を崩させてもらうだけだ。


「はぁっ!」


 真正面にいるゴブリンに一気に近付き、相手の勢いも利用して頭に蹴りを入れる。派手な音と同時にゴブリンの頭が弾け飛び、蹴った足は抵抗感なくゴブリンの頭を撃ち抜いた。

 その光景に、一瞬何が起きたかわからないような顔をして他のゴブリンの足が止まる。その隙をついて、隣にいたゴブリンの頭を殴りつけると、派手な音と共に地面に汚い花火模様を描いた。


「……こんなもんか」


 魔力をレールに乗せて、その都度魔力量を調整し魔素を取り込み攻撃をしていく。振るう拳や脚は魔力で強化され、武器にも劣らないぐらいの強度や鋭さを誇る。

 コレを神剣と呼ばれる剣に纏わせた勇者は本当にめんどくさかったなぁ。俺の魔力ごと切り裂いてくるから、より強固にしたりそもそも近付けないように色々したっけな。


 俺の事をヤバい奴だと認識したのか、ゴブリンが遠巻きに俺を囲んでいる。そこに詠唱の終わったゴブリンメイジが叫んで魔法を発動させてきた。

 3匹とも放った魔法はファイアバレット。俺からすれば込められた魔力量も練度も低いお遊び程度の魔法だ。そんな残念な魔法を放ったゴブリンメイジは、なぜか俺を見て勝ち誇ったような顔をしている。せっかくなので、弾き返すのを近くのゴブリンへ変更してみるか。

 俺はファイアバレットに向かって腕を振るいゴブリンへ魔法を逸らせた。まさか魔法が弾かれるとは思っていなかったのか、弾かれた魔法にゴブリンがそのまま焼かれていく。

 また出来た隙をついて、もう1匹のゴブリンを始末する。特攻してきた最後のゴブリンは尻尾を巻いてホブゴブリンの元へと逃げていった。

 ホブゴブリンは逃げてきたゴブリンを出迎えるのかと前に出てきたが、そのまま持っていた斧で一刀両断した。


「グギャギャー!!」

「「「ギャー!!」」」


 なるほどね。敵前逃亡は許さないってことか。

 ホブゴブリンが雄叫びを上げると、またゴブリンメイジが詠唱を始めている。今度はホブゴブリンがその場から動かず、こっちを睨みつけながら魔法の詠唱が終わるのを待っていそうだ。

 近付いてこないならこっちから向かってやろう。俺は一歩ずつその場から進み始めた。


「「「ゲギャギャ!」」」


 ゴブリンメイジが叫ぶと、魔法が淡い光となってホブゴブリンを包んでいく。どうやら身体能力向上の魔法を付与されたらしい。

 腕力増加、速度増加に防御力上昇……なかなか強化されてるではないか。この世界でも魔法を使って能力を向上させ、一気に戦闘の主導権を握るような戦略があるらしい。


 能力向上魔法を受けたボブゴブリンが雄叫びを上げると、今度こそ俺に向かって突進してきた。

 手に持った斧を大きく振りかぶり、強化された腕力に任せて大きく振り下ろしてくる。

 俺もそれに合わせて手を伸ばすと、一瞬ボブゴブリンがニヤけ顔になったように見えた。


 大きな音共に衝撃で砂埃が舞う。ボブゴブリンの強化された一撃は、確かに大きな効果をもたらしていたのだろう。

 俺の足を中心に地面が少し凹んでおり、叩きつけられた衝撃が大きいことが窺える。

 まぁ、その衝撃を俺は片手で止めているわけだが。


「グギャッ!? ギャギャギャ!!」


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