第17話:地獄の始まり
俺はエリィを中心にファイアボールを展開して、四方八方から放ち始めた。
最初こそ時間差でゆっくりと発射し、はたき落とすのに余裕を持たせながらコントロールしていく。それを段々と早いテンポへと変更していき、間髪入れずに魔法を追加する。
森で身体を動かす以上に魔力を消費し続ける防御の練習は、20分ほどで段々と身体に当たり始めた。
集中させていた部位の魔力も減り、身体を覆う魔力布衣も少なくなっている。そのうち腕や足が上がらなくなり、ファイアボールをまともに受け始めてしまった。
魔法を止めるとエリィがその場に倒れ込んでしまったので、近くまでいき俺もしゃがみ込んだ。
「どうだい?」
「はーっ、はーっ……も、もう無理ぃぃ……」
「うん、頑張った方だね。ファイアボール……と言うよりも、火属性の熱さや威力なども体感できたかな?」
「お腹いっぱいに……なるぐらいですよぉ……」
息も絶え絶えなエリィに「ハイヒール」をかけてやる。威力を弱めた上に魔力布衣で守っているとは言えども、火の魔法を喰らえば身体に傷や火傷を負うので、キチンと回復してやるのがこの修行の肝だ。
どんな怪我でも治せるのがわかれば、もっと積極的に魔法の打ち落としも出来るようになる。戦うにあたって、恐怖などの感情が強すぎるのもよくない。徐々に威力も上げて、込められた魔力量を観察させ、その量から与えられる痛みなどを慣らしていけば、戦闘時の大きなアドバンテージになる。
今回のエリィは魔力が尽きたと言うよりも、魔力コントロールが追いつかなくなったと言った方が正しい。
魔法が当たる場所に魔力を集中させはたき落とすと口では簡単に言えるが、はたき落とす手足にその都度魔力を移動させ続けなければならず、集中が切れると魔法に袋叩きにされる。
最初は必要魔力よりも多く動かしてしまうだろうから、何度も繰り返して慣れていくしかない。
傷が治ったエリィが立ち上がったのを確認したら、次のラウンドだ。
俺はエリィと距離を取り、さっきと同じように魔法を展開すると、「えっ? まだやるんですか?」と言いそうな顔でエリィがこっちをみている。
「えっ? まだやるんですか?」
「当たり前だろ?」
何を言ってるんだこの弟子は。昼飯にもまだ早いし、魔力も使い果たしてない。ぶっ倒れるまでやっても、俺が食糧をとりに行けばその分休めるし問題ないな。
それにこの修行はまだまだ始まったばかりだ。集中、操作、維持など効率よく魔力を鍛えるには最適な修行だと分かってもらえるだろう。
いやー、腕がなるな。
「んじゃ続きを始めるぞ。魔力布衣!」
「もー!! やってやりますよ!!!」
◇
案の定昼過ぎには動けなくなったエリィだったが、昼飯を食って仮眠を取ったら少しは元気が戻ってきたらしい。
魔力は寝てる間に少量回復はするが、本来ならこんなに早く回復する事はない。今までもそうだが、俺が魔力譲渡でエリィに魔力を分け与えているのもある。
修行をし続けるならそれが一番効率がいいからな。自然に回復するのを待ち続けるほうが時間の無駄だ。
夕方の修行として火属性魔法のイメージ練習をさせる。さっきまではたき落とし続けた魔法を、今度は自分で再現するのだ。
その間に俺は森を散策しつつ軽い運動で体力の底上げ。
夕飯後には、完全に元気を取り戻したエリィに火属性の魔法を発動出来るかを試させる。
「さてエリィ、ファイアボールの感覚などはもう身に染みたかな?」
「はい……。それはもうバッチリと……」
「よし、それなら今度はエリィがファイアボールを出してみるんだ」
「……はい!」
エリィは今まで火属性の魔法を使ったことがない。それは自分が風属性しか使えないものだと誤認識しており、他の属性魔法も試したこともあるそうだが、詠唱しても発動しなかったため諦めていたそうだ。
しかし今回は違う。魔法を発動するための基礎は固めてあるし、今さっきまでファイアボールと言う火属性を身をもって体感し続けた。
あとはエリィのイメージ次第では火属性の魔法発動も出来る様になるだろう。
エリィが立ったまま目を瞑って集中している。俺は念のため目の前に土壁を出して待機だ。
魔力が身体の中心から右腕に流れて、前に出した手のひらに集まっていく。
今日体験していた熱さ、炎の形、色などをイメージしているのだろう。風魔法を出す時よりも少し魔力操作が荒いが、いい感じになっている。
「ファイアボール」
エリィが目を開いて魔法名を口に出した。右手に集まっていた魔力が火属性へと変化し、ファイアボールとして飛び出そうとした。
だが、確かにファイアボールは一瞬出現したが、そのまますぐに霧散してしまう。
ちょっと泣きそうな顔をしながらエリィが俺をみてきた。
「うぅ……師匠ー……」
「最初はそんなもんだ。むしろ一瞬でも炎が出ただけ凄いんだぞ?」
「そうなんですか?」
初めて使う属性魔法は失敗が起こりやすい。明確なイメージを持っていても、ちゃんとその魔法の特性などを体感してなければ本当にイメージが固まってるとは言いにくいのだ。
適性がある魔法は確かに感覚で覚えられるが、得意ではないとなる位置の魔法は何度も何度も繰り返す必要がある。
ただ、エリィはファイアボールが一瞬発動できていた。つまりもっと研鑽すれば問題なく使える属性である証明だ。
「うむ。初めてにしては上出来だ」
「やったー!!」
「だから、今後も毎日同じことをしていくからな?」
「……同じ……こと!? えっ?」
「体験した事をぶらさないように、系統は1日1系統にする。魔力布衣の練習にもなるし、夕方には属性魔法の練習もしていこう」
「えっと……あの
「心配するな。ちゃんと回復はしてやる」
「いやぁぁぁぁ!!!」
修行の段階も引き上げられたし、これからの毎日もまた楽しくなりそうだ。
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