第11話:魔力布衣
最近はもっぱら罠を仕掛けて、そこに獲物が引っかかってるかの確認がメインだ。
今日もうさぎが2匹ほど罠にかかっていた。そのまま仕留めると、今度はテキパキとエリィが捌いていく。
汚れた手は俺がウォーターボールを小さめに出して、そこに手を突っ込んで洗い流す。完全に冷たいよりも少し温くした方が汚れも落ちやすい。手を突っ込んだエリィが、少しばかり目を輝かせている。
あれから魔獣とは出会っておらず、魔石も増えてはいないが、平和に修行が出来るのでありがたいことだ。
山菜や果物も食べる分だけもいで帰宅し、少しのんびりしてから夜の修行だ。
腹一杯食べて休憩したエリィもだいぶ魔力が回復している。修行を再開すると声をかけると、狩りに出かけた時よりも表情が明るくなっていた。そんなに飯が美味かったのか?
改めてエリィを自分の前に立たせる。朝は座らせてみたが、体制によっても若干感覚は変わるので、今回は立ったままだ。
「さてエリィ、朝と同じ修行だが悲観的になる必要はないぞ」
「はい! 絶対に成功させます!」
「うむ。エリィは常人の数百倍で成長している。この魔力布衣は最初の難関とも言われており、ここで培った感覚はその後の魔法発動にも大きな影響が出る。ただ時間はまだまだあるから、まずは手を中心に魔力布衣を」
「出来ました!」
「うむ。霧散しても繰り返すうちに感覚を掴ん……ん?」
「師匠! 出来ましたよほら!」
「……天才じゃったか……!」
朝の時点では片手すら出来なかったはずだったが、今はもう両手に魔力布衣を完成させている。
どうやってその感覚を掴んだのか聞いてみると、どうやらさっきのウォーターボールがヒントになったらしい。手から魔力を放出しつつその場に留めるのではなく、まずは球体に魔力が溜まっているイメージをし、そこに手を洗う時と同じように両手を重ねて突っ込んでみた、と。
俺にはよくわからん原理だが、出来たのなら問題ないだろう。ただ、それだと少し疑問が残る。
「そうなると、エリィはその状態から両手を離しても
「えっとね……」
エリィがゆっくりと手を離していく。離す際にもちゃんとイメージが出来ているのか、魔力が餅のように伸びるとそのまま二つに分裂した。
魔力を留めておく感覚をちゃんと身につけた証拠だ。ただ球体に魔力を注いでその場に留めているだけなら、手を離した時に霧散してしまう。
それが起きずにそのまま手にくっついているのは、具現化したイメージから掌へ感じる魔力を操った事になる。
そうなると次は全身に広げる操作だが、このままならすぐに出来るだろうな。
「師匠! 全身にも魔力が! 出来ました!!」
ほら、な。魔力がちゃんとエリィの体に合わせて揺らめいている。細かく見れば霧散し始めている部分もあるが、導入としては十分だろう。
軽くその場でしゃがんだり回転したりしても布衣が解ける様子はない。魔力に長けているエルフの血筋なのかわからないが、弟子の成長はゾクゾクするものだ。
「よし、そしたらその状態のまま垂直に飛び跳ねてみろ」
「はい!」
エリィが言われたままに垂直跳びをする。最近狩りのために森を走り回っているせいか、体力も向上して飛び跳ねられる高さは60cmほどにもなっている。前の世界で魔力を使わないTOPクラスの冒険者と同じレベルだ。
魔力布衣をただしているだけでは特に変わらない。
「よし、今度は魔力を意識して足に集めてから飛び跳ねてみろ」
「はい!」
今度は少し貯めてから飛び上がる。すると、今度は簡単に1mを超えるぐらいの高さが出た。急に高さが変わったことによってエリィが変な声を上げているが、こんなもんで驚くにはまだ早い。
無事に着地すると、目を輝かせながら俺に迫ってきた。
「凄い! これ凄いよ! 今私の体がブワーって! 飛んだよ!」
「はははは。これは扱える魔力量が増えればもっと高く飛べるぞ。ちょっと見てろよ?」
少し離れてから足に魔力を貯める。集まってきた魔力を足の裏へ集中させ、ジャンプするタイミングで一気に放出。俺の身体は魔力の勢いに乗り、森全体を見渡せるような高さまで跳ね上がった。
「ほう……これは……なんとも綺麗な世界だ」
生い茂った森の外には草原や山が広がっていた。前の世界に比べれば、まだまだ発展途上の世界なのだろう。日が沈もうとする山から夕陽が美しく照らしており、遠くには街のような姿も見える。地平線も水平線も遥か彼方に顔を出しており、修行が終わったらぜひ散策してこの世界を余すことなく楽しんでみたいものだ。
もし今後世界を征服するなら……そんな考えを持とうとした瞬間、身体が一気に落下し始めた。
このまま何もしなければ地面に叩きつけられて痛いダメージを負う。そこで登場するのが風魔法のクッションだ。
「ウィンドクッション」
地面まで数mの所で魔法を発動させる。柔らかい弾力を持った風が俺を包み込み、地面までの落下に急ブレーキをかけてくれる。本来は飛び道具などに対して発動する魔法だが、こんな時でも役に立つ。
出来る事なら
それに今回のように一瞬だけなら、足に魔力をためて解放する方が速くて楽だ。
無事に地面に着地すると、目を爛々と輝かせながらエリィが近付いてきた。この程度ならエリィもすぐに習得できるだろう。あとは魔力量を増やしていけばいいが、本命は魔力布衣を習得する事から。
その後、完全に暗くなるまではエリィの魔力布衣維持を中心に修行を行った。
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