第6話:後始末

「ねぇなんで!? なんでそんなに色々な魔法を……!! しかも無詠唱とかそんなの魔族とか魔法に長けてないと無理なんだよ!? いやそれよりもヒューマンは魔力量が少ないからそんなに魔法を使えないんじゃないの!?」

「はぁ? だからそれを補うために魔素を……いや、まさか?」


 矢継ぎ早に質問攻めのエリィをひとまず落ち着かせる。エリィも聞きたいことが多すぎて興奮してしまった事にハッとすると、すぐにいつものエリィへと戻った。

 とりあえず倒した魔獣を食べられるように血抜きをしなければ。それにはエリィもすぐに賛成してくれたので、またアースウォールで魔獣を吊るす台座を作り、木の魔法で縛り付ける丈夫な蔦を作り出す。

 そのまま魔獣を吊るして血抜きをしていると、エリィが猪の頭を抱えてやってきた。


「ん? それをどうするんだ?」

「えへへ。牙は加工できるし、目玉なんかも調合したりできるんだよ」

「ほぉ! エリィは調合が出来るのか!」


 エリィ曰く、魔獣は皮や骨などを使って加工品を作ったり出来るらしい。

 母親は冒険者も行っていたらしく、いつかサバイバル生活になった時用にあれこれエリィに教えていたそうだ。

 そのため魔法は得意ではないものの、魔獣や動物の死骸などからもナイフや罠などを作って生活していたそうだ。


 さらに解体を進めていると、ボアから淡く光る石をエリィが取り出した。


「見てみてアーベル! こんなにおっきい魔石!!」

「ほぉ? 魔石なんてものが存在するのか」

「えっ? 知らないの!?」


 いや、魔石自体は知っている。だがそれは前世で宝石などに魔力をこめて、魔法が使えない者でも使えるようにしたものだった。

 こうして魔獣から魔石が出てくるのを書物以外で見るのは初めてだ。

 拳大の大きさの魔石を受け取ってマジマジと見つめる。魔力を目に集めることにより対象を解析アナライズすることができるのだ。


「これはね、売ることができるんだよ! 鍛治職人とか細工師とかなら加工も出来るらしいけど」

「うん、これは確かに素晴らしいな。相談なんだが、これを貰ってもいいか?」

「うん! もちろん! アーベルが倒したんだから、アーベルの物だよ!」


 宝石が保有できる魔力量をはるかに超える蓄積ができると解析できた。つまり俺の魔力が尽きることがあっても、魔石に最初から魔力を蓄積しておけば取り出したり発動させたりできる。

 これはいい拾い物だ。色々実験をしてみたい。どうやら鍛治が出来ずとも、魔力をこめて練れば形も変えることが出来るらしい。


 そして調合だ。薬草などを掛け合わせたりして回復薬などの他にも解毒剤や逆に状態異常を引き起こす薬など色々な薬にも出来る。

 魔力も無くなれば意味がなく、節約する為にも魔法だけに頼るわけにもいかない。その為に調合された薬などは魔力の節約の観点からも重宝するだろう。


「素晴らしいな。俺は魔法は得意だが調合にはとんと疎くてね。エリィがいて助かるよ」

「えへへへ」


 褒められて嬉しそうにするエリィ。やはりエルフは美人である事に間違いはないな。

 それから俺は解体などを一緒に手伝っていたが、どう見てもアジト木の根の中に入りきらないほどの量が生まれているのに気付いた。このまま置いておけば腐ってしまう可能性もある。

 するとそんな俺に気付いたのか、エリィがアジトに戻ると一つのバックを持って走ってきた。


「ふっふーん! これはね、マジックバックと言って…….」

「おぉ! マジックバックまであるのか!」


 マジックバックとは、見た目以上に物を収納できる魔法道具だ。時空魔法が使えるものならアイテムボックスという名前で同じ性能を持つものもある。

 基本的には時間停止などが施されるので、食材などを入れて保管するのにもってこいだ。

 アイテムボックスは使用者の魔力量によって容量が異なり、マジックバックは込められた魔力量によって容量が異なる。エリィ曰く、このマジックバックはそんなに大きい容量はないらしいので、今後暇を見て俺が育てればいいだろう。

 マジックバックもアイテムボックスも魔力を与えれば育てて容量を増やす事が出来るからな。


 そうなると、最初に食材が乱雑に置かれてたのが気になる。話を聞いてみると、今日食べるからいいだろうと置いといたとか……。

 もしかしたらエリィは片付けが苦手なのかもしれんな。俺もそんなに人のことを言える立場ではないが。


 俺たちが解体などを終わらせると、すっかり日も暮れてしまっていた。

 エリィは野草を探しに森に入り、俺は薪に火をつけ暖を取る。先程から探索魔法で周辺の警戒とエリィの居場所も把握しているが、特に危険もなさそうだ。

 帰ってきたエリィがボアの肉を使い料理を奮ってくれたが、これが本当に美味かった。

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