第7話



「瀬川柊です、どうぞよろしく」



そいつは、少しだけ訛りがあるそのしゃべり方が特徴的で、それだけでも目を引いてしまうのに圧倒的にその整った顔に目が奪われる。


よろしくといいながらクラスの誰も見る気もない態度が余計に気高さを感じさせて、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。



「(うんうん、瀬川くんは俺の隣になるみたいだね〜あずさちゃんナイス〜!)」



第一印象で気圧されそうだったけど、担任の梓ちゃんのおかげで話す機会は多そうだな〜と感謝しているうちに瀬川くんが隣の席についたみたいだ



「瀬川くんはじめまして〜!俺は阿久津あくつ凜っていうんだ!この学校の生徒会にも入ってるから分からないことがあったらなんでも聞いてね〜☆」


「ああ、よろしくね。そしたら早速なんだけどさ、成瀬咲希のクラスを教えて欲しいな」



はじめましてって言った時は凄く面倒そうな顔だったのに名乗った途端に空気が変わった。急ににこにこして、真っ先に咲希の居場所を聞いてきた。



「う〜ん……はそんなに暇じゃないんだけどなんの用かな〜?もし用事があるなら俺が代わりに伝えておくよぉ?」



相手は西の若頭だ、俺だと役不足なのはわかってるよ、それでも…



「(そんな簡単に咲希を売り渡すほど落ちぶれちゃいないからね〜)」



俺は笑っていない目を瀬川くんに向けた。大して瀬川くんは面白そうににこにこしていて何を考えているのか掴めない。



「あはは、そんな警戒しないでよ。そうだな、俺は咲希に会うためにここに来たんだ。何年もこの機会を待ってたんだよね。」


「……うん、でもそうだな…いいや、自分で探すさ。どうせ今日中には会えるんだ。あと数時間の辛抱なら、自分で探して早めるぐらいしなきゃな。」



そう言って立ち上がった瀬川くんは今にも踊り出しそうなくらい嬉しそうにしていて、それでいて目が餌を前にした猛獣みたいにギラギラしていて俺は背筋がゾッとした。


そんな俺をよそに「ああ、」と呟いた瀬川くんは俺の近くによって一言耳元で囁いてから担任の静止を無視してそのまま教室を出ていってしまった。


俺はその一言を聞いて、「こいつには絶対に勝てない」と思わされてしまった。それ以上に頭が混乱していて、しばらくそこから動くことが出来なかった。



『咲希は俺のものだからね』



そういった瀬川の意図がわからない、いや理解したくない


さっきまでの咲希の態度は絶対に瀬川を知らないって雰囲気だったし、知ってたとしても俺たちに一言ぐらいあるはず…


それに瀬川が俺のものだからと言った時のあの目…



「(………人を殺しそうな目をしてた…)」



咲希に限って、瀬川にどうこうされるとかはないと思うけど嫌な予感が拭いきれない。同じ教室に琉生もいるし、近くのクラスには誠也も綾斗もいる。家に帰れば、成瀬組の厳重な守りもある。


何より咲希が負けるところを俺は知らない



「……大丈夫、だよねぇ…」



仮にも西の若頭、多少の牽制ならともかく俺ごときが咲希に会うのを無理やり止めて介入してしまうとよろしくない。


こういう時、組の一員として動いてる光や琉生が羨ましくなる



「(俺だって、咲希の側に立ちたいのに…こういう時に動けないのが悔しい)」



気がついたら朝のSTは終わっていて、周りに女の子たちがいたけどどんな会話をしたのかも、俺はいつも通り答えていたのかも覚えていなかった。


ただどうしようもなく、不安だけが胸の中に残っていた











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