華姫

にしみや

第1話


夢を見た。世界で1番私を大切にしてくれた人がいなくなっちゃう夢。


夢の中で泣き叫ぶ声が聞こえて、喉が痛くてようやく泣き叫んでいたのは自分だと気づいた。



「また、おなじゆめ」



いつも同じところで終わっちゃう夢、思い出すのもつらくて、でも忘れるのはもっと嫌で……胸にぽっかり穴が空いたみたいな喪失感とどうしようもない苦しさに私はいつもあの人を忘れてないことに対しての安心感を覚える


もう声も思い出せない、あの人を忘れないことが私の贖罪だから


少しずつドタバタと廊下を走る音が近づいてきた。私はいつも通り、仮面を被る。にこにこと無害で、それでも大切な人を守る仮面を。


部屋の和室の扉がスパンッ!といい音を立てて開いた



咲希さき、おはよう」


「おはよう、しんちゃん。扉壊れちゃうからもう少し静かに開けよ?」


「む、すまん」


「いーよ。それでどうしたの?朝から私の部屋に来るなんて珍しいね」


「ああ、組長が咲希を呼んでる。俺も同席で、とのお達しだ。」


「わかったよ、すぐ準備して向かうから部屋前で少し待ってて」



そう言うと大人しく扉を閉めて出ていってくれる慎ちゃん。それを確認したあと、すぐにクローゼットを開いて制服に着替え始める。



「(あの慎ちゃんが廊下を走ってまで呼びに来るなら急ぎの案件のはず、急がなきゃ)」



我が家、成瀬なるせ組は組長の祖父と5人の側近から出来ている関東トップの組でもある。成瀬組を初めとして大規模な連合を組んでおり、規模だけで言うなら国内最大の連合となっている。成瀬組の本家にあたるうちは若頭が空席でありながら、その穴を祖父と側近たちが守り抜き今のポジションについたという話は耳にタコができるほど聞いた。そのトップでもある祖父の呼び出しは珍しくもないが、急ぐに越したことはない。


早々に着替え終わった私は、すれ違う組員たちに挨拶を交わしながら足早に廊下を進んだ。この屋敷の一番奥、1番守りが固いこの部屋は見た目は他の部屋と見た目は変わらず、一見するとただの和室。ただ周りには監視カメラやセンサーで死角無しで守られてる部屋だ。私はその場で1度深呼吸をしてから声をかけた。



「咲希と慎、参りました」


「入れ」



その言葉と同時に部屋の扉を開けて、祖父の前に座った。部屋には祖父と側近のげんさんがいて雰囲気からして祖父としてではなく組長としての話らしい。



「朝早くからすまんな」


「いえ、、話とは…?」


「ああ、瀬川せがわ組は知っているな。そこの若頭がどうやらお前のいる学校に転校してくるみたいでな、、、」


「え?」「は?」



私と慎ちゃんの声が被った。組長も全くだと言わんばかりに額を抑えていた。



「それもさっき瀬川から連絡を貰ったばかりなんだが、今日にはもうこちらに到着するらしい。本格的に通い始めるのは明日かららしいが。」


「それはまた、急ですね」


「まあ、向こうの状況からして仕方ないと判断せざる負えなくてな、、」


「なるほど」



1ヶ月ほど前から瀬川組の本拠地である関西では大規模な粛清が行われていると耳にしていたから、十中八九それかな



「それに伴って、うちで預かることになったから気を引き締めておけよ。同盟を組んでるとはいえ、相手は若頭だ。気は抜くな。」


「はい」

 

「慎、お前は少し早いが咲希の補佐として動け。部屋もしばらくは咲希の隣室に変えておくから用心するように」


「承知いたしました」


「よし、もう行っていいぞ」



その声とともに私たちは部屋を後にしてそのまま大広間へと向かう。


瀬川組は関東トップのうちと対をなす関西トップの組だ。関東で祖父が連合を作る際に同盟についた組でもある。それでも少数精鋭といわれる瀬川組は底が知れない、その若頭といえば私と同い年でありながら相当な手練という噂もある。警戒しておくに超したことはないかな



「咲希、開けるよ」


「あっ、うん」



考え事をしてるうちに大広間に着いたらしい。慎ちゃんが開けた襖を通り抜ける。









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