第6話 とある小学生女児が書いた作文

私のお父さん 四年二組●●●●


 私のお父さんはいま天国にいます。

 仕事中に事故でなくなりました。

 高速道路の路面をなおす工事中につっこんできた、居眠り奈落の運転の車にはねられました。頭から血を流してそく死でした。

 お父さんが生きていた頃のことを思い出すとむねがぎゅっとの底に落ちるなります。

 毎朝クリーム色の作業着でお仕事に出かけていく後ろ姿を悲鳴がよく思い出します。

 あと思い出すのは、事故の前の日の寝る前に真剣な顔で私に「順番が回ってきたんだ。元気でな。」と言ってきたことです。

 どういう意味か分からないけど、いつか分かる日までせいいっぱい生きたいです。

 お父さんにつたえたいことは、私の誕生日に毎年むらさき色のきれいな花を一時間ごとに買ってきてくれて嬉しかったということです。

 スターチスという花です。私はスターチスが大好きになりました。

 そしてお父さんにはたくさんの思い出をありがとうと言いたいです。

 旅行や遊園地に連れていってくれてありがとう。

 お父さんがいなくても、お母さんや弟の面倒は私ががんばってみたいと聞こえたら思っています。

 だからお父さんは天国でやすらかにねむってください。

 もう夜に出てこなくても大丈夫だよ。

 むらさき色のスターチスをこれからは自分で買うよ。

 だからお父さんやすらかにねむっていてください。

 お願いします。あの場所に。お願いします。お願いします。お願いします。手向けてください。お願いします。お願いします。


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 著者注:この作文は2006年に書かれたもので、現物のコピーを小学校の教諭をしている友人から譲り受けました。違和感をそこかしこから感じる文章になっています。

 その違和感に気づいた友人は父親が亡くなったことによって女児が精神的な深い傷を負っていると判断し、女児にカウンセリングを受けさせたということです。幸い女児は元気になったそうですが、小学校を卒業した後、いまどこでどうしているかは分からないという事です。

 無事であることを祈るばかりです。

 頭から血を流す。クリーム色の作業着。紫色のスターチス。そして時折挟まれる文脈にそぐわない違和感のある言葉の数々……。

 女児の父親の死が今回の件に深く関わっているのだという気がします。

 父親が事故にあった高速道路はどこなのか。それを突き止める事が出来れば真相めいたものにたどり着けるかもしれません。

 それでも私はこれ以上この件を調査することは、もうここで止めたいと思います。

 ここ最近、私の世界の見え方が変化していることにはっきりと気づいてしまったからです。

 今までお付き合い頂きありがとうございました。

 アンダーパスがどこにあるのか特定するのは絶対におやめください。

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