邪神と一緒にダンジョン運営していたら、いつのまにか魔王と呼ばれていた

微糖

第1話 転生しました


「はあ。明日も仕事か。働きたくない」


 自宅でゴロゴロしながら愚痴る。といっても、働かなくては生きていけない。寝返りをうつと安アパートのボロい床が軋む音がする。こんなボロアパートでもそれなりの家賃はかかるのだ。アルバイトをして最低限の生活費を稼ぐ以外は基本家でゴロゴロしているのが俺のライフスタイル。でも、本音を言うと1分1秒でも働きたくない。俺の理想は一生家でゴロゴロゲームでもしながら最低限食うに困らない環境で生きることだ。


「何か上手い話はないかな〜。寝てるだけで金がもらえる仕事とかあれば最高だ」


 まあ、そんなのありえないのはわかってる。だから多大な苦痛を感じながらも一生懸命働いているのだ。でも、何事にも適性というものがある。仕事が好きな人もいれば、趣味に生き、それで生計を立てる人もいる。少なくとも俺には労働の適性はない。


「とはいえ、俺に趣味なんてゲームくらいしかないしな。ゲーム配信でもやるか? でも喋りの才能もないしなあ」


 一緒に遊ぶ友達もいないし、もちろん彼女なんているわけない。毎日食って寝てシコって寝る。ただそれだけの人生。

 

「お主、ダンジョンマスターにならないか?」


「うおおっ!?」


 寝返りをうつと同時に突然女の人に話しかけられ、めちゃくちゃにビビる。いや、ビビりすぎて少しちびったかも。だって、自分の部屋に知らない奴がいたら誰だってビビるだろ!? 怖すぎるって。


「だだだだだだれっだ! おおまえ!」


 目の前には桃色の髪の少女がいた。その姿を見て一瞬時が止まったかと思った。この世のものとは思えないほどの美少女だ。間違いなく今まで人生で見た中でも1番の。まだ歳は幼いといってもいいくらいだが、成長すればとんでもない美人になるだろう。


「落ち着くがよい。私は怪しいものではない。お主に危害を加えるつもりもない。大人しく話を聞くがいい」


 見た目に似合わない尊大な口調だ。いや、人の部屋に勝手に入るような奴だ。どんな危険人物かわからない。見た目に騙されてはいけないのだ。


「な、なんだよ。何をしにきた」


「ふむ? 呆れるほど礼のなっていない言葉遣いだが、まあよい。さっき言ったであろ? お主、ダンジョンマスターになる気はないかとな」


「ダンジョンマスター?」


 まあ、聞き覚えはあるというか。小説とか漫画でよく出てくるやつだろ? でも、目の前の少女が言いたいことがなんなのかが全くわからん。


「お主を異世界に送り、そこでダンジョンマスターになってもらう」


「いやいやいや、何いってんの」


「信じられないか?」


「当たり前だろ」


 こいつ、ヤバいぞ……。頭がおかしいみたいだ。俺がそんなことを考えていると、目の前の少女が白けた目で睨んでくる。


「誰の頭がおかしいと申すか。失礼極まりない」


 こいつ、俺の考えていることがわかるのか?


「そうだ。そのほかにも、お主のことはなんでもわかるぞ。田中一たなかはじめ32歳、身長168センチ体重65キロ。天涯孤独の童貞」


 おいやめろ。俺のプロフィールを勝手に見るな。でも、こんなことまでわかるとかこいつ本物なのか?


「私のことを性的な目で見ていることもわかっているぞ。世界一の美少女だと思ったな?」


「うぐっ。せ、性的には見てない」


 ここまで俺の考えていることを当てられたら流石に信じるほかない。あまりにファンタジーすぎて理解が追いつかないが……。


「それでは早速いくとしよう。私たちの世界へ」


「え、ちょ」


 突然両手を取られ、しっかりと握り合う。初めての女性の手の感触に心臓がはち切れそうなほど早くなる。めちゃくちゃ柔らかくって……てそんな場合じゃない! 足元には魔法陣が現れ、眩いばかりに光りだす。視界が真っ白く塗りつぶされ、重力も感じなくなる。


「これからは私とお主は相棒となる。そういえば名を名乗っていなかったな。私の名はカーラ。今から行く世界では邪神などと呼ばれている。よろしくな、ハジメ」


「じゃ、邪神!?」


 それって、もしかして俺かなりヤバい状況に巻き込まれた?


 圧倒的な不安に塗りつぶされながら、俺は意識を手放した。


 

 

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