第22話 断ち切った繋がりが残した物

「ささささささ、寒いぞ!!!!」


 肩を抱きながらナンバーレスが、抜け道から這い上がってきた。


「今はまさに氷河期だからね……」


 外に出たことがない少女には荷が重すぎる天候だろう。


「こいつ、本当に死んだのか……?」


 恐る恐る骸骨の死神グリム・スケルトンの近くによる。


 早くも肉体には雪が積もっている。


「神殺化しない――、神の座から引き落とされたんだな」


 自分の両手を見ながらナンバーレスは、骸骨の死神グリム・スケルトンを見下ろした。


「よく迷宮の外だと倒せるって気がついたな、ナイン!」


「気が付いたのは倒してからだけどね」


 猛吹雪ではためくローブをきつく締めて、私は気が付いたことをナンバーレスに伝えた。


「薔薇に限らずだけど、植物は寒さに弱いんだ。

だからこの異常な寒さに弱かったんだと思う」


 私は元死神の体力を有していて、ナンバーレスも人間よりは強そうだ。


 だから一瞬でバナナが凍る環境でも、多少なら軽装でも耐えることは出来る。 


 ――寒いけど。


 だが骸骨の死神グリム・スケルトンは、死神ではあるけど、死の黒薔薇と繋がり、攻撃も植物に近い行動だった。


 だから植物が苦手なものなら、効果的だと思ったのだ。


「次に迷宮の外で骸骨の死神グリム・スケルトンを見かけたことが無かった。

 だから一か八か出してみたってだけ」


「ふうん、メメント・モリの子どもたちはほとんど死滅してるからな。

 今は迷宮にしか、メメント・モリはいない。

 迷宮から離れるほど、繋がりは薄れるかもしれない」


「偶然、繋がりのある蔦を切れたのもあるけどね」


「しかし豪運だったな。

 ナイン、さすがだ!」


「そうだね、本来ならこうはいかなかったと思うよ」


 豪運。


 それは欲しくても手に入れることができないモノ。


 今回、その持ち主は縁の下の力持ち役だけど、居るだけで確かにその恩恵には授かっている。


 私は心の中で、彼女に感謝しながら、力尽きたミクニの遺骨を抱き上げた。


「埋葬しようか」


「良いのか、ナイン。

 お前たちを苦しめてきた奴だぞ」


「手伝ってくれる?

 ナンバーレス」


「……それはあたしの台詞だ。

 あたしを埋めるのを手伝ってほしい、ナイン」


 けど猛吹雪の中、適当に埋める訳にもいかず、迷宮に戻ると復活しかねない。


 城の中で見つけた壺の中に遺骨を納めて、とりあえずフィオルンたちと合流することにした。


「なあ、ナイン。

 仲間に死神がいるんだよな」


「そうだね」


 骨壺を抱えながら、階段を上がっているときにナンバーレスが、不安げに声を上げる。


「あたし、神殺化しちゃうかもしれないから、やっぱり行かない方が良いと思うぞ……」


 悲しそうに弱音を吐いた。


「大丈夫だよ多分」


「多分って……もし殺しちゃったらどうするんだよ」


 神と名の付くものに反応して自動的に狂戦士化してしまうナンバーレス。


 ずっと地下に住んでいたのだから、一人でさみしい思いもしていたと思う。


 私も病院でずっと一人だったし、余計なお世話かもしれないけど、友達を紹介したかった。


「そういうのも、どうにかなっちゃうタイプだと思うから」


「うううっ、人の心配も知らないで……ナインは本当にお人好しで自由気ままだな!」


 涙目になりそうなナンバーレスを連れて、私たちはフィオルンとナナナが待つ城の天辺へと向かった。


◆ ◆ ◆


「この子が、死の黒薔薇の管理者?

 可愛いじゃない」


 癖のある黒髪を優しくなでながら、ナナナは膝を折ってナンバーレスと視線を合わせる。


「な、なんで神殺が反応しないんだ!?

 こいつ死神なんだろ!?」


 あまりの動揺にナンバーレスは私の後ろへと隠れる。


 人見知りが発動しているのかもしれないけど。


「ナナナは死神だけど、ちょっとだけ特別なんだよ」


 死神管理番号777――通称スリーセブン。


 三桁席の死神でありながら、どんな任務も軽々とこなしてしまう。


 ちなみに一般的な力を持つ死神は五桁席、四桁席。


 少し強いのが三桁席となる。


「名前の通りなんだけど、何もしなくても豪運なんだ」


 私も詳しくは知らないけれど、それだけで十分すぎるともいえる。


「常時じゃないから、過信はしないでよね、ココノ」


「覚えてるよ」


 ナナナの注意を流しながら、私はフィオルンへと歩み寄る。


 ベッドですやすやと寝息を立てていた。


 身体に巻き付いていた過剰な死の黒薔薇の蔦は消え去ったようだ。


「この子が豊穣の聖女か。

 メメント・モリの過剰反応も安定してる。

 ミクニと繋がりが消えた今なら、すぐに良くなるはずだ!」


「ありがとう、ナンバーレス。

 詳しい人がいて安心するよ」


 褒められ慣れてないのか、モジモジとしつつ、ナンバーレスは頬をかいた。


「じゃフィオルンが目を覚ますまで、これまでのことを共有しよう――」


 私はナナナへ、ナンバーレスの紹介と死の黒薔薇のこと、骸骨の死神グリム・スケルトンの最後を伝えた。


 彼女は最後まで静かに聞いていた。


「頑張ったね、ココノ」


「あ、ありがとう」


 ナナナに褒められると、私も気恥ずかしくなり、視線をそらしてしまう。


「じゃあ、死の黒薔薇が正常に戻ったのなら、もう豊穣の聖女は大丈夫なの?」


 フィオルンを雑に見下ろしたナナナはナンバーレスに疑問を投げかけた。


「ああ、目を覚まして体力が戻れば、死の黒薔薇は消えていくだろう。

 ニブルヘイムも死属性に偏ってるからな、大地もろとも生へと向かわせる力が働き、聖女はすぐに生へと傾くはずだ」


「これで一件落着――」


 ナナナは外の風景を見ながら、口元に指を当てる。


 何か疑問が残っているかのように。


「――のわりに気温が下がってない?」


「そんなはずないぞ、死神姉さん!

 生死の傾きを正すなら、天候は元に戻るはず――」


 そのとき私は、微かに感じた骸骨の死神グリム・スケルトンが最後に放出した力を思い出した。


「も、もしかしたらなんだけど……骸骨の死神グリム・スケルトンが、最後に、最大級の氷河期を呼び出したのかもしれない……」



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🔨次回:第23話 選ぶこと

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