死神の『石』
流星成上
第1話 賢い生き方
人間は賢い生き物である。自然界で生きる生き物は常に命懸けでいつ死ぬかも分からない。
その代わり自由である。何をしてもいいしなにもしなくてもいい。それが、自然界である。
しかし人間は違う。人間は自由を捨てた代わりに金により命がある程度保証できる生き方をしている。つまりは、命を懸ける自然界と違い人間は金を懸けて生きている。
だがしかーし! 動物の中で一番知能の高い人間よりも賢い生き方をしている動物がいるそれこそが…猫である!
その究極の可愛さとふわふわな体毛で人間の心に幸福感を与え飼ってもらうことで命も金も懸ずただただ自由に生きることのできる他の生き物とは格が違う能力を持つ動物こそが猫なのである。
そうこの俺なのである。全く野良猫共はこの能力を合理的に利用しないからあんなことになる。猫の生活だって楽では無い。まあ俺も元野良猫なのだがな、過去のことはどうでもいい。
今の結果は俺が合理的に『猫生』詰みポジ生まれから這い上がる行動をしたからあるものだ。
おっと、そろそろ飯の時間だ。
「ニャー(さっさと起きて飯よこせ)」
「ああー相変わらずお前は早起きだなツァーリ」
こいつは自分のことを飼い主と呼ぶが俺はこの下等生物が飼い主だなんぞ微塵も思っていない。俺がこいつの飼い主だ。俺の命令で動くのだから当然だ。全く、人間は頭がいいのか悪いのか。
俺はこいつを下僕からゲボっくと呼んでいる俺の日課は朝五時にこいつを叩き起し、飯を与えさせ、仕事に遅刻しないようにする。そしてその後出かける。
この間抜けは俺を家猫にしたいようだが俺は普通にこいつのいない時間外に出かけている。
ゲボっくが会社に行くと俺はすぐに通気孔の隙間から外に出た。それにしても、今日も桜島の火山灰が降っているせいで目が痛い。
そして、他の猫と『飼いビト』の愚痴でもいいながら雀を捕まえて賭け事をする。家から最高級の餌を持ち出しそれを賭ける。その後は、新入りやよそ者の報告を受ける。
「ニャー(以上なし!)」
部下の猫が報告をすると俺がそれに答える。
「ニャー(ご苦労さん)」
{※以降猫語の所は日本語でお楽しみください}
ちなみに、猫には二つの秘密がある。一つ目は、人間の言葉が割と認識できること。割とだ。猫によってかなり認識度にはばらつきがあるし発音が似ている単語は特に分かりにくい。
口の形から話すことは不可能だ。それに、言葉がある程度理解していることは人間に知られないようにしている。俺は特に猫の中でもずば抜けて人間の言葉を理解することができる、らしい。
二つ目は、猫は前世の記憶を持つ動物であること。
そして猫は前世も来世も猫であること。これについては特に言うことは無い。
ゲボっくは一人暮らしで大体仕事をしている。俺がわざと起こさなかったときは遅刻してもうすぐクビになるとこだったらしいがそれは俺も困る。だから毎日朝早く起こしているのだ。
昼になると家から持ち出した飯を食い、そしてその後は俺が人間の中で唯一心から尊敬できる人物に会いに行くのだ。
坂の上の方に夏の風が爽やかに揺らす大きな桜の木が見える。そこに学校があるのだ。この火山塵高校は海の向こうの島々がよく見える…はず、今日は火山灰でなんにも見えない。
計算通りの時間に着いた。ちょうど昼休みのチャイムがなった。
校舎の横にあるさびれた階段の一番下の段に俺は座った。
すぐに一番上の扉が空いて女子高生が降りてきた。彼女こそが俺の尊敬する人、
だが、学校ではずっと一人でいて悲しそうだからなんだか気の毒で来れるときは俺が遊びに来てやっている。
「よくこんなタイミングの良い時間で毎回来れるね。やっぱりツァーリは天才なのか?それとも転生猫なのかな?」
どっちも正解だ。と俺は内心思いながら眠そうな顔をしていた。まあ転生する前も猫だけどな。
水綺はよく俺に悩みを打ち明けてくれる。時に猫相手に泣いてしまう時もある。
猫に嘘を付く人間は少ない。しかし猫相手に本気で悩みを打ち明ける人も少ない。水綺はいつも誰にも相談できず本当の悩みを猫である俺に仕方なく打ち明けるのだ。
「ツァーリ、私の人生には辛いこと以外起きたことが無い。幸福が訪れたと思っても一瞬にして灰になっていく。この先、もう生きる気力は…ない」
水綺の声は悲しみで震えていた。このままでは本当に死んでしまうかもしれない。でも、この話しを俺にしたのはきっと助けてほしかったからだろう。いくら猫であってもきっと何かを求めていたに違いない。
しかし猫なんかに何ができるだろうか?人間を救うことができるのだろうか?
よそう…猫だろうがなんだろうが水綺を救うことができるのは俺しかいないんだ。絶対に水綺を死なせない。
俺はこの日から、水綺を守ることを心に決めた。
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