コンセプトカフェ『風林火山』!

阿弥陀乃トンマージ

風林火山……?

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 山梨県甲府市の商店街の一角にある、おしゃれな雰囲気をこれでもかと醸し出したお店、なるほど、若い女性客を呼び寄せるだけの雰囲気・ムードは漂っているような気がする……そのお店がやや小汚い雑居ビルに入っていなければ……。

「……単刀直入に申し上げます、このお店での営業は今月までということに……」

 短く整えた茶髪でスーツ姿の人物申し訳なさそうに口を開く。

「……」

 広くない店内に静かに動揺が走る。人物は真面目な顔つきと、しっかりとした肉体、かつそれなりに長い手足を、これでもかと申し訳なさそうにして、淡々と告げる。

「……今月分の給料……それにプラスして退職金に関しましてですが、これまでの出勤状況などから算出させていただきました……来週から順次お渡しできますので、お渡しした名簿の上の順から、こちらの方に顔を出して頂きます………え~説明は以上になります」

「……マコちゃん」

 長すぎず、短すぎない白髪を後ろでひとつにまとめた青年が声をかける。

「えっと……」

 しかし、声をかけられた茶髪でスーツの人物は書類に目を落としていて気が付かない。

「マコちゃん!」

「!」

 青年が声を上げ、人物はハッとした様子で顔を上げる。

「ふふっ、気が付いたようだね……」

「……祖母にはそう呼ばれていましたから……」

「……おばあさん、もとい、店長とはよく電話のやりとりをしていたみたいじゃないか?」

「ええ、そうですね……」

「盗み聞きをしていたわけじゃないが……店長はマコちゃん……アンタがこの店を継ぐことを期待しているようだったのが、言葉の端々から伝わってきたんだが?」

「ああ……まあ、祖父と立ち上げた思い出の喫茶店――やや細かい業種転換はあったみたいですが――を潰したくは無かったのでしょう。店の業績は決して悪くはないだけに……」

「後継者なら、君がなれば良い」

「ええ?」

「……おばあさんが可愛がっていたマコちゃん、君が……!」

「……丁重にお断りします」

「! 何故……?」

「まず、僕は武枝真虎たけえださねとら、男性です。祖母のカラーを受け継ぐというのはなかなか難しい……まして……コンセプトカフェ『風林火山』……? どういうお店なのかさっぱり……」

「明日また来てくれ、本物のコンセプトカフェっていうのを教えてあげるよ」

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