第14話 古代竜との最終決戦
朝早くからの薄雲がやがて晴れ、見上げる空は異様に青みを帯びていた。
翔太たちはライラやグラナスら騎士団と合流し、焦げた建物や瓦礫が立ち並ぶ近隣都市の郊外へ向かって進軍を始める。
町の奥には依然として黒紫色の巨大な竜がうずくまり、時折低くうなるような咆哮を響かせていた。
その威圧感は画面越しに見るのとは比較にならないほど圧倒的で、翔太は喉がからからに渇くのを自覚しながら進む。
梓は封印術に必要な陣形を記した紙を手に、ライラと話し合っている。
「円を作り、騎士たちが魔力を込めた剣を地面に刺す。 そこへお茶を用いた触媒を注ぎ込み、封印の呪文を一気に発動するって聞いてるけど、本当に効果あるの?」
ライラは鎧のすき間から覗く青い瞳で、静かにうなずく。
「この国に古くから伝わる儀式だ。
やはり大量の魔力がいるが、あなたたちのお茶がその不足分を補う形になる。
私たちも信じがたい話だが、今はすがるほかない」
消防車や救急車も数台加わり、後方では大吾が人員を指揮して火炎対策を準備している。
ホースから勢いよく放たれる水は魔法ではないものの、周囲の騎士団員は興味津々らしく、「あれが機械の力か」とひそひそ声を立てる。
翔太は周囲の様子を見回し、急須の中に特別濃く煮出した茶を準備していた。
「これが魔力の増幅になればいいけど…」
自分の無鉄砲な発想だとわかっていても、やらなければ誰かが命を落とす。
グラナスが長剣を抜き、荒れた大地の中央へ歩み寄る。
竜は遠くでその動きを監視しているかのように、低くうなる声を響かせる。
「今だ!
円陣を作るぞ」
ライラが声を張り上げ、騎士たちが陣形を整える。
梓と翔太はその内側に急須や水筒を置き、大吾は外周で消防車と協力しつつ、もしもの火災に備えている。
空気が一瞬にして張りつめ、竜が大きく翼を振り上げると、黒い炎の渦が彼方から飛んでくる。
大吾は「今だ、放水!」と叫び、消防車が強力な水流を放ち、ライラや騎士団員も盾を重ねて守りを固める。
激しい爆音が響き、地面が揺れるほどの衝撃が走るが、なんとか耐えきった。
「翔太、梓、こっち来い!」
大吾が合図を送り、二人は急須の中身を魔方陣に注ぐために走り寄る。
グラナスが古代語で呪文を唱えはじめ、ライラも剣を地面に突き立てて目を閉じる。
騎士たちが剣先にそれぞれの魔力を集め、円陣が青白い光を帯びてきた。
「今だ!」
梓が指示を出し、翔太が急須を傾けて濃い静岡茶を注ぎ込む。
緑の液体が光に溶けるように広がり、騎士の剣先がさらに強い輝きを放つ。
大吾は背後で火炎への警戒を続けながら、「頼むから成功してくれ」と唇を噛む。
そのとき、竜が満を持して飛翔し、巨大な影が頭上を覆う。
黒い鱗が夜空を思わせ、ありえない規模の息吹が周囲を焼き尽くさんと迫る。
「あと少し…!」
グラナスの声が震え、ライラが剣に全力で魔力を注ぎ込む。
すると円陣から無数の光の束が立ち昇り、竜の脚や胴体に絡みつくように束縛の鎖を形作った。
悲鳴にも似た竜の咆哮が響き、一瞬、世界が揺れるような錯覚を覚える。
騎士たちは耐えきれず何人かが地面に倒れ込むが、その間も封印の光は途切れない。
梓は頭が割れそうなほどの耳鳴りに耐えながらノートを握りしめ、翔太は足がすくむのをこらえて陣の真ん中に佇む。
大吾が「もう少し耐えろ!」と叫んだとき、グラナスとライラが最後の呪文を唱え終えた。
風が一気に巻き起こり、緑と青白い光が束になって竜の体を包む。
ずしん、という衝撃が大地を揺らし、竜が息絶えたように動かなくなった瞬間、封印の鎖が光の壁となって収縮した。
残されたのは燃え焦げた地面と、崩れ落ちるように座り込む人々の姿。
「封印……成功したのか」
翔太が膝から崩れ落ちるように倒れ込み、大吾は地面に拳を当てながら空を見上げる。
梓は震える手でノートを抱きしめ、うなだれる。
やがて、騎士団員たちの間から歓声や泣き声が混ざったような響きが広がる。
グラナスは剣を支えに立ち上がり、ライラも肩で息をしながら「これで終わった……はずだ」と深く息をついた。
遠くで消防車や住民たちが拍手と歓声を上げはじめ、みるみるうちに疲れ果てた現場が祝福の声に包まれていく。
こうして、静岡茶と騎士団の魔法を組み合わせた竜封じの作戦は成功を収めた。
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