第2話 朝の静岡、いつもの笑い声
「今日の部活、きつそうだけどやる気あるよ
昨日の試合で勝ったし、気分はまだ乗ってる」 雨宮翔太は、くせっ毛の黒髪を揺らしながら足取りを急いでいた
身長はそこそこだが体格は引き締まっており、サッカー部のスポーツバッグを背負っている
隣には三島梓が静かな面持ちで歩く
彼女は黒髪のポニーテールを揺らし、大学に向かう途中だった
「体力だけはすごいね
でもちゃんと授業には間に合うの?」 ひとつ小さく息をつきながら問いかけると、翔太は苦笑気味に肩をすくめる
「大丈夫、大丈夫
さわやか行く予定もあるし、遅刻してたらハンバーグ食べ損ねるからね」 梓は呆れながら「はいはい」と返す
朝の街は穏やかな光に包まれていて、車の音や人々の足音がいつも通りだった
「今度またおでん巡り行こうよ
この辺、最近新しい店が増えたって噂だし」 そんな話題に翔太は目を輝かせる
「もちろん行く
静岡おでんは飽きないし、新しいダシに挑戦するのも好きなんだ」 梓は少し笑みを浮かべつつ、バッグの中から水筒を取り出してひと口飲む
二人の会話はごく平和で、特別な事件とは無縁に思えた
しかし、次の瞬間、微かな振動が大地を揺らし始める
続いて空が白く光り、踏切の警報音が耳障りな雑音に混ざって割れたような音を立てた
「な、何だ…?」 翔太は驚いたように周囲を見回し、梓も少し後ずさる
「急に明るすぎる
…まさか地震?」 二人の会話が続かないほど、強い光が視界を奪う
やがて辺りから悲鳴や車の急ブレーキ音が響き、踏切の向こうに見えるビルの輪郭が歪んで消えていくように見えた
「嘘でしょ
あれ、ビルが…」 目の前の景色がほんの数秒の間に変容し、静岡の街がどこか別の場所へ吸い込まれようとしているように感じられる
「さっきの話、冗談だったのに」 翔太の肩からずり落ちそうになったリュックが、地面にかすかに触れた瞬間、光がさらに強さを増した
そのまま二人は踏切から動けなくなったが、次々と駆け込んでくる周囲の人々のざわめきや、スマートフォンのエラー音が辺りを埋め尽くす
「梓、どうしよう」 短く問いかける声は震えていたが、梓もただ唇を噛んで前を見つめるしかなかった
こうして突然訪れた閃光が、静岡県全体を包み込んでいった
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