オシュワルドの二次創作SS
コタニコータ
オシュワルドSS その1
ここはとある村のとある宿屋。
旅の途中で立ち寄った村の宿屋で、料理をしている秋潮の姿がみえる。
俺の名前は長好(ジャンハオ)。相棒の秋潮(チウチャオ)と世界を旅しながら料理を作ってる。
今は秋潮が、宿屋の女将さんに断りをいれて料理をしているみたいだ。
なにやら今日手に入れた食材を使って料理を作るらしい。
何の食材を使って何を作るかはまだ聞いていない。
今からもう楽しみだ。
秋潮の料理ができるまで、まだ時間がある。
俺も手伝おうかと申し出ては見たものの、『いい、邪魔』の一言で追い出された。
俺だって料理が出来ないわけじゃないのに。そりゃあ秋潮には敵わないけどさ……。
とりあえず厨房を追い出された俺は、食堂の席で料理の出来上がりを待つことにした。
「ねぇ、長好」
「あぁお柳さん。今日は食材をありがとうございます」
食堂の客席には先客がおり、キセルをふかしながらこちらへ親しげに声を掛けてくる。
この褐色肌の美人さんはお柳(おりゅう)さん。俺達のように世界中を旅しているらしい。
聞いたところによると、依頼を受けて食材や素材として魔物を狩って回っているらしい。
らしいらしいと伝聞のような言い回しになってしまうのは、実際に戦っているところを見たことがないから。
実際あの見た目で切った張ったが得意と言われてもにわかには信じられない。
とはいえ本人がそう言うんだから、きっとそうなんだろう。
今日はこの人が持ってきた食材を秋潮が調理している。たまにこうして食材を持ってきてくれるのだ。ありがたいなぁ……。
「秋潮はさっそく料理に入ったみたいだね」
「そうですねー何を作るか決まったんでしょうね」
「そっ。で、もちろんアタシも食べていっていいんだよね?」
ニッコリとした笑みをこちらに向けるお柳。
なんだろう、笑顔のはずなのに背筋に冷たいものが伝う。首筋に刃物を当てられているような緊張感を感じる……。
「食材を提供してもらっておいて、追い返すようなマネしたら秋潮に嫌われちまいますよ」
なんなら泣かれて怒られておたまでボコられるかもしれない。俺は脳内の秋潮をなだめつつお柳さんの申し出を快諾する。
「そっ。ありがと」
霧散する殺気。唐突に現れた死の危険は去ったようだった。
「そういえば、長好」
「なんです?」
「あんた達、普段はどこで食材を手に入れてるんだい?」
「あぁ、もちろん旅途中の村や行商から買ってますよ」
俺と秋潮の旅はこれと言って目的地がない。強いて言えば全世界を回ることだけど、別に急ぐ旅でも無いし、ゆっくりのんびり歩き旅だ。
色んな料理を作ってくれる秋潮だが、主に使う食材はその地域の特産品や名物品だ。その土地土着の料理法なんかを聞いて、料理のスキルを高めている。俺? 俺も一通りできるけど……まぁお察しだよ。
「ふぅん、そうなの。つまんない」
言葉通りつまらなさそうに口を尖らせるお柳さん。美人がやると、可愛らしい仕草でも絵になるもんだなぁ。
「普段からそんなバチバチにやり合ってるワケじゃないですよ……?」
「じゃあなぁに? その腰に差してるものは飾りなのかい?」
「いやそういうワケじゃありませんが……」
「ま、いいわ。でも全く無いってワケでも無いんだろ?」
「そうですねぇ……食材になる獣や魔獣を狩ったりはたまにありますよ」
俺はちょっと前の出来事を話すことにした。
「俺と秋潮が街道を歩いていたときの話なんですけどね」
🦊🦊🦊
前に旅の途中で出くわした『クロコラビ』っていうデカい魔獣がいた。
そいつは鈍く光るワニの外皮を持ち、馬よりも大きな体で、ウサギのように素早い動きをする。
「こいつはデカいな……」
「ほえーおっきいワニさんだねぇ。あ、でも頭にウサギの耳つけてるよかわいい」
まるで取ってつけたようなウサギ要素。この要素いるのか?
「しかしまぁなんでこんなところにこんなデカい魔獣がいるんだ?」
「うーん? どしたのかな。家族とはぐれた?」
秋潮はちょっと眉尻を下げながらクロコラビを眺めている。
「とはいえ、こいつを放っておく訳にもいかんよなぁ」
「だねぇ」
秋潮がこちらを向く。
「森に連れて行くってことも、ちょーっと無理そうだな?」
「だねぇ」
秋潮が長好の言わんとすることを理解したみたいだ。
「ということは、だ」
長好は秋潮にニンマリとした顔で言った。
「今日の昼飯はワニ肉で決まりだな!」
「……」
秋潮が思案顔でこちらを見つめている。どうしたっていうんだ? あ、もしかして家族のもとに返してあげたい、なんて言うのか?
「どうした? 秋潮」
「うん、こんなに大きいなら、お昼だけじゃなくて晩御飯もワニ肉になりそうだなぁって……」
あぁ、うん。そうだな。もうお昼の時間だから、秋潮もお腹が空いてるんだな……。
どうやらこのクロコラビという魔獣は普段森の中の湖畔に生息しているらしい。普段はめったに街道に出てこない。
それはそうだろう、こんなデカブツが頻繁に現れるようならこの街道はとっくに使われなくなってる。
森の中に住んでいる、というのは予想でしかないが、この街道が森を迂回するように作られていることからおそらく間違いないだろう。
「秋潮はちょっと離れて隠れててくれ。こいつは俺がやる」
「わかった!」
言うが早いかシュタタタと駆けていく秋潮。
「判断が早い! だが、それでいい!」
そう言ってクロコラビに向き直る長好。
水場を求めて彷徨ってるうちに森の外に出てしまったってところか? 本物のワニは結構獰猛だと聞くが、こいつはどうだろうな。
クロコラビはこちらに顔を向けると、わずかに目を細めた。
腹が減っているのか、肉食獣特有の縦長の瞳孔がキュッと狭まったように見える。
「そうだよなぁ、もう昼時だからなぁ……腹が減るのは仕方ないよな」
腰に佩いている剣鉈を取り出し、スッと構える。
「俺もそうだからな。いくぜっ!」
長好が駆け出す。ここは街道だ。あまり長引かせると他の利用者に迷惑がかかる。
だから最短距離で詰める。
「オラッ、まずは一発!」
振りかぶった剣鉈を頭に叩きつけるように振るう。
が、そこはクロコラビ。その巨体に似つかわしくない素早い動きで飛び退る。
「クソッ、ワニのようなナリして素早いのかよ……」
「ウサギの耳もあるよっ!」
「そういうことを言ってるんじゃないの!」
体の比率から言ってウサギの要素一割にも満たないのに……。
秋潮のヤジをいなしてクロコラビへと意識を戻す。
「よーしよしよし、いいじゃねぇか。そう簡単にはやられねぇってか?」
長好の言葉を肯定するように、クロコラビはその身を低くし、四肢に力を溜めている。
「黙って狩られるようなタマじゃねぇってことかよ。いいぜ……さぁ来い!」
長好が叫ぶと同時に、相手がこちらへ飛びかかってくる。
デカい体を存分に伸ばして迫ってくる姿は有り体に言って恐怖である。
しかもかなりのスピードで突っ込んでくる上に、上下にギザギザな鋭い歯が生えた大顎をこれでもかと開いている。
これは大抵のヤツは足が竦んで動けないだろう。
「俺は違うけどなッ!」
大顎をサイドステップで避ける。すぐ隣でガチン、と大きな音がなり、ヤツと目が合った。その瞳孔は狭められており、こちらを獲物として見ているように感じられた。
「ハッ、そんな直線的な攻撃で俺に当てようなんざ100年はウオオッ!?」
横に飛んだ長好を襲った強い衝撃。
「なんだ!?」
吹っ飛びつつも体勢を整え、なんとか立膝の状態で着地する。
「長好気を付けて! アイツしっぽでも攻撃してくる!」
長好の体を打ち据えたのはクロコラビの尻尾。横に飛んだ長好を見て、すぐさまその太い尻尾を振るってきたようだ。
「デカい上に頭も回るってか……こいつは骨が折れそうだ……なっ!」
尻尾で打たれた左腕を気にしつつ、再度駆け出す。
「テメェは素早いけどな、俺だって負けてねぇぞ!」
一気に詰めてヤツの側面から斬りつける。正面からはあの顎が危険でやりにくいからな。
「!」
クロコラビはその斬撃を避けるためにサイドステップを踏む。
「だが甘い!」
長好はさらに一歩踏み込み、クロコラビの外皮を剣鉈で切りつけた。
「ガアァッ!」
野太い悲鳴を上げるクロコラビ。しかし。
「かってぇぇ! コイツの皮硬すぎだろ!!」
切りつけた箇所はわずかに傷付いてはいるが、あまりダメージを受けた様子はない。
すぐさまバックステップで距離を取る長好。
「コイツは厄介だな……」
何か手を打たないと、コイツは倒せない。なにせ全身をこの硬い皮が覆っているのだ。
こういう手の魔獣を狩るときの鉄則といえば、柔らかい部位を狙うことだが……。
「こいつの柔らかいところなんて目か耳くらいしか無いだろ……」
クロコラビの外皮以外に露出してる部分といえば太い爪と大顎から上下に伸びた牙、目、そしてかわいいうさぎ耳である。
正直耳の部分は斬りつけるのは難しい。なんせ馬のような大きさを持つのだ。ジャンプしてやっと届く程度の高さである。そうなると、他の柔らかい部分って言うと……
ヤツは再度こちらを向き直り、大きく口を開けた。再度飛びかかって来るのだろう、またしても四肢に力を込めている。
「やるしかないか……」
力なく呟いた長好が取った行動は――
「逃げるんだよオォォォ!」
――逃走だった。
「オラ追いつけるもんなら追いついて見やがれこのデカブツ!」
背中を見せ脱兎のごとく逃げる長好。ウサギの名前を持つクロコラビも型なしである。
「ガアァァ!!」
一瞬の間を置いて慌てて追いかけるクロコラビ。流石にここまできて逃げられるとは思わなかったのだろう。
苛立たしげに唸り声を上げ、長好に噛みつこうとその大顎を振り回す。
「秋潮! スパイスパウダーを投げてくれ!」
近くまで走ってきた長好が秋潮に向かって叫ぶ。
スパイスパウダーとは、秋潮が調合した粉末香辛料である。唐辛子を使ったものや、黒胡椒やチリペッパーを使ったものなど多岐にわたる。
「ッ! わかった!」
秋潮が長好の考えを悟り、腰に結わえ付けている小瓶を投げ渡す。
「サンキューチウちゃん! 愛してるぜッ!」
「っな!!」
投擲したポーズのまま顔を真っ赤にしている秋潮。かわいい。
スパイスの入った小瓶を受け取った長好は、立ち止まって未だに追いかけてくるクロコラビを振り返る。
「おうおう凶悪なツラしてんなァ!」
追いついたクロコラビはその勢いのまま長好に襲いかかった。
右足を後ろに下げ、体を半身にしてギリギリのところで噛みつきを回避する。またしても目の前でガチン、と大きな音がする。
「芸がねぇんだよテメェは!」
そうして下げた右足を一気に踏み込み、持った剣鉈の柄頭でクロコラビの顔面を思い切り殴りつけた。
「グギャアァ!」
流石にこれは効いたのか、ヤツは大口を開けて悲鳴を上げながらたたらを踏む。
「それじゃ、こいつでも味わってくれよ」
秋潮から受け取った”赤々とした”スパイスパウダーを、クロコラビの口内へ放り込む。
ワニという生き物は、舌の上に異物が触れた瞬間口を閉じてしまう習性がある。また、ワニは口を閉じる力に比べて、口を開く力が弱いと言われている。だから……。
「グギュウウウ!!」
真っ赤な香辛料が口の中に充満したクロコラビは、たまらず吐き出そうとする。か、しかし。長好はそれをさせない。
「オイオイオイワニさんよ。うちの秋潮がせっかく作ってくれたスパイスパウダーなんだ、しっかり味わって食ってくれよ!」
ガバっとその大顎にヘッドロックをかけるように抑え込む。
あまりの辛さに目を白黒させるクロコラビ。よく見ると涙も浮かべている。ワニって涙流すんだな……。
「それじゃ、最後の仕上げと行きますか!」
口を抑え込んだまま、もう片方の手で逆手に持った剣鉈を眼球めがけて突き込む。一瞬反発を感じるが、柄をぐっと握り込み押し込んでいく。
「グギュウウウ!!」
口内は辛さで、眼球には刃を突き立てられ、くぐもった悲鳴を上げるクロコラビ。
「悪いなワニ野郎。こっちもチウちゃんにカッコ悪いところは見せられないんでね」
刃を根本まで差し込み、トドメに刃をねじったところで絶叫が止んだ。
「ふー、こいつは厄介だったなぁ」
四肢の力を失い、ズシン、と倒れたクロコラビから手を離す。刺さったままだった剣鉈も回収した。
「うひゃあ、服がボロボロじゃねーか」
ヤツの口を抑え込んでいた時だろう、露出した牙に服が――なんならその下の皮膚まで――引っかかってしまったらしく、上半身の服がズタズタになっていた。
じんわりと血も滲んでおり、気づいてしまうとだんだんと痛みが上ってくる。
「うっし、とりあえず討伐完了だな!」
秋潮に完了報告をしようと踵を返した直後だった。ドン、と腰のあたりに衝撃が走った。
「!?」
――まさか倒したはずのワニ野郎がまだ生きてたか!?
長好は慌てて衝撃の発信源を見下ろす。と、そこには長好の腰に抱きついて顔を埋めている秋潮の姿があった。
ほっと胸をなでおろす長好。そして顔の見えない秋潮に向かって。
「チウちゃん、ワニは倒したよ」
「……」
「俺すっかり腹減っちゃったよ」
「……」
「このワニさっさと捌いて、昼飯にしようや」
「……」
秋潮は長好の腰に抱きついたまま、何も言わない。困ってしまった長好は、優しい手つきで秋潮の頭を撫でた。
サラサラしていて手触りの良い絹のような髪を梳くように撫でる。頭の上に生えた耳がピクピクと動いている。かわいい。
しばらく撫でていると、秋潮が抱きついたままゆっくりと顔を上げた。そしてその目尻には涙を湛えている。
「ち、チウちゃん?」
「心配……した……」
「うん……ごめんな……」
「すっごい……心配した……」
「うん」
「服も血だらけだし……」
「うん」
「あんな大きいワニに飛びついちゃうし……」
「うん」
「……スパイスも全部使っちゃうし」
「それは本当にごめんなさい」
「でも……無事で良かった……!」
「おう」
手を離した秋潮は、そのまま後ろに2、3歩下がり、笑顔で言ってくれた。
「おかえりなさい、ジャン!」
そんな秋潮に向かって、長好も。
「おう、ただいま。チウちゃん!」
笑顔で返すのだった。
🦊🦊🦊
「っていう感じで、その時食ったメシはバカ美味かったですね」
「今のって、それで済ませていい話なんだね……」
話をしている間に結構時間が経っていたらしく、秋潮が厨房から料理を持って姿を現した。出来上がったようだ。
「おまちどうさま! りゅうりゅうもぜひ食べていってね!」
秋潮が満面の笑みで料理を配膳する。どうやら自信作のようだ。若干のドヤ顔が伺える。
「うおおおお美味そう! いただきますッ!」
そして俺は一も二も無く料理に手を付け始めた。
「ありがとうね、秋潮。今日のメニューは何だい?」
「貰った食材がね、火喰い鳥だったでしょ? もうね、すーぐ決まった!」
ここでもドヤ顔の秋潮。作れたのがよほど嬉しかったらしい。
「そうだねぇ、鳥のくせに体が燃えてる危ないヤツだったよ」
お柳はその時を思い出したのか、気だるげに煙をくゆらせる。
「そう! 燃えてる鳥でしょ! ボーボー燃えてるんでしょ!? ボーボー、鳥……ぼうぼう鶏……」
「あぁ、それで棒々鶏ね……」
ダジャレできまった昼ご飯になんとも言えない表情のお柳。ドヤ顔はこれのせいだったか。
でもせっかく秋潮が作ってくれたのだと、次の瞬間には目を輝かせて食べ始める。
先に食べ始めていた長好は「うまい」「無限に食える」と叫ぶように繰り返している。
「何食べてもこれしか言わないんだ……」
「秋潮がいろんなもの食べさせてるはずなのに、語彙力は増えないんだね……」
長好はそんなことを言われているとはつゆ知らず、幸せそうな顔で昼ご飯を頬張っている。
その顔をみた秋潮とお柳も、一緒になって料理を食べ始めた。
昼の間中、その3人の笑顔は絶えることがなかった。
~終話~
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