第7話 夜の魔女と黙認

 夜の同衾事件から、夜の魔女には遠慮がなくなった。

 現れる時間に変わりはないし、花菜に迷惑をかけるような事はしない。

 姿を見せてみたり、晩ご飯を作ってみたり、布団に潜り込んで一緒に寝たり。

 夜しか活動できないのに、その大半を寝ることに使うなんて……、

「よっぽど私に甘えたいんやな」

 悪い気はしない。そっちの気はなくとも、可愛い少女に甘えられることに悪い気はしないだろう。

 ただ、布団の中で抱きついてくるのはまあいいとして、いろいろ触ろうとしてくるときは花菜も抵抗する。

 つまりはいつの間にか双方向の意志疎通が成り立っていたのだ。これは花菜が夜の魔女の存在を認識していることを、魔女が分かっているということだ。

 それでも夜の魔女が花菜を害しようとすることはない。むしろ積極的に甘えてくる始末。


 とうとう今夜は風呂場への進入を許してしまった。

 そして軽くシャワーすると、花菜のつかる湯船に強引に入ってきた。

 花菜が魔女を抱っこする姿勢だ。

「なあ、あんた。名前はないんか?」


 あるよ……でも忘れちゃった


 花菜はつい魔女な話しかけてしまった。しまったと思ったが、魔女は普通に語り返してきた。

「そっかぁ」


 カナの前にしか出てこないから……不便じゃない、でしょ?


「結局、私に何がしたいん?こうやってても、全然襲って来んし」


 私は、仲良くしたい……だけ


「そっかぁ。でもたまにエッチな事しようとしてるよね」


 興味は、あるよ……カナだってこの前あのひとと、そのぉ……


 (あいつ、何しとんねん!)

 あの様子から予想はしていたが、目撃者がいるなんて。

「まあええわ。エッチな事は勘弁な。これから仲よう頼むわ」


 カナ。私と目を合わせちゃダメだよ。契約になるから……


 それを言うと突然、魔女は姿を消した。

 浴槽の中はひどく波打った。

「おい……なんて事してくれるんや。……身体、ちゃんと拭けよ」


 今夜も魔女は布団に入ってきた。

 ずっと背中を向けているので、魔女が抱き枕にされる構図だ。

 しばらくすると、魔女が話し出した。

 

 カナに言わなくちゃならないことがあるのに……ちゃんと目を見て言わないとダメなのに……

 でもカナ、きっと私のこと嫌いになる

 でも言わないと……

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