ダイアローグーモノローグたちの英雄譚ー
梓川 駿
第1話モノローグのプロローグ
一人での冒険はつまらない。ただ新しい国に行って、依頼を受けて。それが永遠と続くだけ。それならと、ギルドパーティーに加入し一緒冒険しようと思うけど、いつも思うだけで行動しない。ギルドパーティー入りたいな。と、毎日同じことを考えながらギルドに入り依頼を受けようとすると、背後から女性の声がした。
「あのーすみません。毎日独り言を喋っている方ちょっといいですか。」
もしかしたら私に声をかけたのかなと期待をしたけど、毎日独り言を喋っていないから違うな。
「違くないですよ。今も独り言を喋った貴女ですよ。」
ん。なんで会話が成立しているんだろう。私、独り言を喋ってないし、もしかして私の心の声を。
「ねぇもしかして、あの子自分が独り言を喋ってる自覚ないんじゃない。」
「それなら尚更面白い。だって毎日かなりの声で独り言を喋ってるだけで面白いのに、それを自覚してないなんて傑作にもほどがある。」
「笑わないの。これからギルドパーティーのメンバーになるかもしれない子に失礼じゃないの。」
声が二人に増えた。なんか楽しそうな会話だな私も混ざりたいな。
「じゃあ、一緒に喋ろうよ。」
目の前に黄色髪でツインテールの子がこちらを覗き込むようにして私を見ていた。顔が綺麗で第一印象でもわかる明るい顔立ち。それに加えて八重歯が出ている。この子、可愛い。
「あの、別に独り言はいいんだけどさ、ちゃんとした会話しようよ。それに人前で言われるの恥ずかしい。」
すると彼女の頬が赤くなっていた。より一層可愛くなったような。すると私の肩に背後から手がおかれる。少しびっくりしつつも後ろみると。
「もっと言ってやりなよ。その無自覚の独り言で。」
黒髪ショートでクール系女子が今にも笑いそうな顔で私に話しかけた。なにか面白いことでもあったのかな。
すると彼女が盛大に笑いだした。人生で一番面白いものを見たかのように。
「エーラ笑わないの。ごめんね、別にエーラは悪気があって笑った訳じゃないからね……多分。」
なんで謝るんだろう別にこの子は悪いことしてないと思うけど。
「よし決めた。この際だからはっきり言おう。貴女さっきから、いいえこの国に来てから毎日独り言を喋っていたんだよ。」
私に指を指しながら明るい顔立ちの彼女が言った。
え。私ずっと独り言を。だからクールな子が笑ったのか。急に泣きたくなってきた。
「えっと別に独り言を喋ってることを自覚させたわけじゃなくて、そのいつも貴女がギルドパーティー加入したいなって言っていたから。加入しないかなって声をかけたの。」
そうだったんだ。優しいな。でも、こんな独り言を無自覚で喋って、パッとしない私なんかが入っていいのかな。
「勿論だよ。たとえ独り言を無自覚で喋って、パッとしない人でも入っていいんだよ。」
他人に言われるとすごく傷つく。しかも、満面の笑顔で言うなんてなおさら。
「ロロ逆に傷つけてどうすんだよ。まぁ私は面白いからいいんだけど。」
「エーラ笑わないの。ごめんね。それで無理にとは言わないけどよかったら私たちのギルドパーティーに入らないかな。」
その言葉は私の物語が始まりのように思えた。このチャンス絶対に逃してたまるか。
「あの、おね。お願いします。」
初めて家族以外と喋った。
「初めて喋ったんだ。」
「やっぱり面白いぜ。」
「こちらからもよろしくね。えっと。」
「モノローグ•ロッキンです。」
「じゃあモノロちゃんて呼ぶね。それと私の名前はプロロ•ドラーミー。ロロって呼んでくれたら嬉しいな。」
ロロさん。いい名前。
「じゃあ次は私か。私は世界一クールな女。その名はピエラ•ベリスタ。ピエラ様とお呼びになさって。」
ピエラ様、世界一クールな女の子。なんてかっこいいんだろう。
「モノロちゃん、エーラのことは大体が嘘だから基本無視でいいよ。」
「あの、ロロさん、ピエラ様。改めてよろしくお願いします。」
私これで家族以外と喋るの三回目すごい成長したな。
「これで成長したんだ。」
「やっぱり面白いぜ。」
「じゃあ早速だけど魔獣討伐の依頼一緒行こう。」
「レッツラゴー。」
「よろしくお願いします。」
また成長してしまった。
私は心を弾ませながら魔獣討伐へと向かった。今までじゃ絶対に体験できない仲間との協力。今こそ私の力を最大限に発揮するぞ。
魔獣を一匹も倒せない。やっぱりこうなるか。
私たちは魔獣の凛(まじゅうのもり)と呼ばれるこの国セオリエで一番有名な場所へと向かった。そこは強い魔獣から弱い魔獣、様々な魔獣が生息しているとても危険な森。
私も一度観光で行ったことがある。そのときはこの森で一番強いケルベロスを余裕で倒したけど……討伐依頼である弱い魔獣ゴブリンを一匹も倒せないのはどうしてだ。
「ついに戯言を言い出したぞモノローグのやつ。」
「そんなこと言わないの。それにゴブリンだってそれなりに強いし……多分。」
はー。やっぱり私にはギルドパーティーに向いていなかったんだ。いっそう辺り生えている木のようになって、魔獣の鳴き声という音楽を聴きながら生涯を。
「モノローグやめろ……腹が……。」
ピエラ様笑ってくださっている。そうだこれを私の生き甲斐に。
「ストップ。そんなこと考えないでよ、モノロちゃん。それにエーラもいい加減にしてよ、可哀想。」
「ごめなさい。反省しています。」
「棒読み。もっと真剣に謝って。」
「これが私のちゃんとした謝り方。ちゃんとした謝り方も人それぞれですぜロロ。」
「生意気な奴だな。エーラもとりあえず謝ってるみたいだし許して。」
「いえ、大丈夫ですよ。私が弱いのが悪いですから。」
「別に弱いことはたいしたことじゃ」
「たいしたことでしょ。ロロが本当にモノローグをギルドパーティーに加入させるんだったら、弱すぎる。ゴブリンならこの国にいる子供たちだって倒せるレベルだよ。夢を叶えるなら尚更。」
「そんな言い方はないよ。」
やっぱり、私はこのギルドパーティーにはお邪魔なのかな。ゴブリンを倒せないし、無自覚で独り言喋るし、パッとしないし当たり前か。せっかく物語が始まると思ったのに。
そのとき邪悪なオーラが私を包んだ。なにか来る。
「伏せて。」
ロロさんの言葉どうりに私は伏せる。
瞬間、私の上に爆音とともに突風が吹き荒れる。誰かから攻撃されている。攻撃が終わり辺りを見るとさっきまで生えていた木が全て切り株となっていた。
なにこれ。
「モノローグ早く逃げろ。次の攻撃が来る前に。」
ピエラ様が必死に言う。
その瞬間、爆音、爆風とともに地面に衝撃が走り砂煙が舞う。砂煙が止むと目の前に細い身体をした白髪の青年が立っていた。
「あれ、死んだと思ったけど生きているんだね。守護関連の魔法でも使ったの」
「サンダーパールス《夢追い人》。デスビアサンダー。」
青年の話を遮りロロさんが杖を振り魔法を放つ。瞬間、黒の雷が青年を穿つ。しかし、青年が風の力で魔法をかき消す。
「礼儀がなってないなー、君。まずは自己紹介から」
「マジックバッド《騙される方が悪い》。死鏡。」
ピエラ様が青年の話を遮り杖を振り魔法を放つ。
「自己紹介するきないのかな君たちは。まぁいいや、僕は礼儀正しいからね。僕の名前は七星悪魔(しちせいあくま)。白星(びゃくせい)のメラクよろしく頼むよ。そして君たちを殺す者でもある。メラク《白星》」
青年がそう言うと風の斬撃が辺りを襲う。ロロさんとピエラ様が守護魔法で私を守る。
「モノロちゃん。こんなことに巻き込んでごめんね。今からモノロちゃんだけでもギルドに転移させるから、助けを呼んできて。」
喋る余裕はないのに。
「でも、二人はどうするんでか。」
「誰が相手するのこいつ。」
「じゃあ、頼んだよ。ルート《大樹の根》。」
「まっ。」
私の言葉は届かず私はギルドへと転移された。
私と違ってすごいなあの二人は。それに比べて私はまだ過去を引きずって魔法を人の前でまともに使えない。そのせいで二人をピンチにさせている。
まだ二人が戦っている。魔素の動きで二人が青年といい勝負をしているのがわかる。二人は強い。多分、今まで会った人の中で一位、二位を争うぐらいに。でも、このままだと死んでしまう。なんだって彼は七星悪魔なのだから。
七星悪魔。魔族の頂点で各魔素を最大限までに活用できる奴等だ。歴代の勇者が何人も敗れたか。しかも彼は七星悪魔で最強の悪魔だ。
もし私がまともに魔法を人の前で使うことができたら。
ギルドを見渡す。
今日、ここでロロさんとピエラ様に会った。毎日変わらない日常が永遠に続くと思っていた。でも、二人が声をかけてくれた。ロロさんは明るくて優しくて、ピエラ様は少し嫌な所はあるけど面白くて、まさに二人との出会いは物語のプロローグみたいだった。
まだ物語のプロローグなんだエピローグにはまだ早い。今は自分の気持ちを抑えろ、そして二人を助けて物語のチャプターに繋げるんだ。そう決心して短い髪を結び二人の元へと転移した。ルート《大樹の根》。
転移すると大地が崩れ、魔獣の凛の半分以上が崩壊していた。その中で二人が彼と戦っていた。戦況は悪化していた。
「クソ、あいつ思った以上に強いんだけど。」
「もうギブなのロロは。」
「いいや。まだやれるけど。」
「そろそろ限界かな。おや、さっき逃げた子じゃないか。」
彼がそういうと二人も私に気づく。
「モノローグどうして戻ってきた。死にたいの。」
「モノロちゃん、応援呼んでっていたよね。なんで戻ってきたの。」
「応援は呼んでないし、死ぬ気もない。それに二人をこれ以上傷つけさせない。」
「それはつまり僕を倒すことを意味するけど。」
「そう言っているんだけど。」
「ほう、それは舐められたものだな。」
風がいっそう強くなる。
「モノロちゃん、よくわかんないけどこいつを倒せるんだよね。信じてもいいかな。」
「モノローグ。さっきとは雰囲気が違いすぎて別人になってないか。私、今モノローグだったらこいつを倒してもおかしくないと思う。」
「うん、ありがとう。じゃあ終わりにさせるね。アウトバースト《七魔素爆破》」
「終わらせてたま」
彼の声は七つの光とともに散った。
これで終わった。でも、二人の心が折れてないといいけど。私は二人にほうを見る。どちらも浮かない顔だ。やっぱり昔と同じで心を
「すご。モノロちゃん本当によくやった。」
泣きながらロロさんが抱きついてきた。
「私、実は怖かったんだ。だってあいつ強いんだもん。それをモノロちゃんが助けて。心が折れるはよくわかんないけど、とにかくありがとう。」
「えっと、でも私、小さい頃魔法を他人に見せてそれで沢山の人の心を折ってきたから。その本当に大丈夫なのかなって。」
「心なんて折れるわけないだろ。もはやすごすぎて頭がおかしくなりそうが勝つよ。その証拠に見ろよ自分が魔法を放った跡を。」
振り返って見ると、水平線まで真っさらだった。
「ね。頭おかしさのほうが勝つだろ。それにロロの夢を叶えるためには、このぐらいの強さが必要だし。」
「夢って言うのは、」
「それはね、四大クエストと呼ばれるギルドの最難関依頼の全制覇だよねロロ。」
「そうだよ。」
ロロさんすごい。こんなに大きな夢があるなんて。
「すごいってさ。ロロさん。」
「もう茶化さないでよ。」
「すみません。」
「また棒読み。それでモノロちゃん一緒に夢を叶えるお手伝いしてもらっていいかな。私モノロちゃんが必要なんだ。」
始めて人に必要とされた。
「私も面白いモノローグが必要だ。」
また人に必要とされた。
「だからさ、これからもよろしくね。」
もう限界だ。早くこの場から逃げよう。
「限界ってどういうこと。て、いっちゃった。」
「マジかよ。あいつ。」
「どうしたの、エーラ。」
私は見た。さっきまで真っさらだった地面が元通りなり、木が生い茂り、元に戻っているのを。そして私とエーラの傷が全て治っているのを。
急いで二人から離れるため森を抜ける。やばいもう我慢できない。でる。
「超幸せ!!」
私の声が魔獣の凛に響いた。
「限界って、そういうことなのね。」
「やっぱり面白いぜ。」
「また明日ギルドでまってるね!!」
ロロさんの声が響く。二人に聞かれた、でも恥ずかしいよりも
「嬉しい!!」
が勝った。私の物語のプロローグ、モノローグのプロローグが終わり、モノローグのチャプターが明日から始まる。
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