最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記
犬鈴屋
第1章 新しい世界へ
1-1 俺とゲーム
突然だが皆は何を求めてゲームをプレイしている?
クタクタになるまで働いた後の休日を充実に過ごすため?見たことない未知の世界を冒険したいから?それとも暇な時間を潰すため?
質問しておいてなんだが、俺はこの問いに一般的な正解なんてないだろって考え方。
だって皆ゲームを好きなように遊べばいいとは思わないか?強くなって敵をボコボコにしたい奴もいれば、ゆったりとのんびりとした時間を過ごしたい奴もいる、もしかしたら出会いを求めてゲームしている奴もいるかもしれない。
俺、
ゲームする理由が無いと他人にあうだこうだと言われる筋合いはないはずで、それこそ俺の勝手だろ。
まぁでも強いて言うなら、ゲームの中だったら自分の脚で走り回って、自分の触りたい物を好きなだけ触れるっていうのが理由かもしれない。
たったそれだけの理由と笑う奴もいるかもしれないが、俺からしたら恥なんて何もないほど立派な理由だ。
スポーツやストレッチの方が心身にいいだとか、ゲームに熱中する子どもを早く卒業しろと罵られても知ったことじゃない。
俺はゲームを楽しんでるんだよ。ごちゃごちゃ文句言う奴は黙ってろ!
さて今日も今日とてゲームを小馬鹿にするモブNPCと無為な時間を消費した俺は、やっとの思いで自室にと戻ってこれた。
ゲームを馬鹿にするくせに、そのゲームに登場するモブNPC以下の定型文しか話せないのは実に滑稽としか言いようがない。
だがそんなモブNPCは平気で俺の貴重な時間を奪いに来るのだから質が悪い。
ベッドごと移動してるから肉体的な疲労はないが、それでも無駄な時間を消費させられるのは精神的にかなり辛く、苦行と言っていいだろう。
せめてモブNPCよりも会話の選択肢が多いのならば攻略とかを考えて楽しめるが、それも早々に終わったし何なら今の方が会話の選択肢が少なくなっているから、余計につまらなくなっている。
そんな溢れて止まることを知らない毒を心の中で吐きつつも、俺は今日もベッドを移動させてくれた人に、あ、いつもの付けてくださいと一声かけた。
声をかけられた人は俺と目が合っているにも関わらず顔を歪めるが、さっさと俺にシースルーグラスを付けると無言で部屋から立ち去った。
恐らくあの人は新人なんだろう、慣れてきたらシースルーグラスを付けるだけで世話いらずになると喜んで付けてくれるようになるからな。
最初はその態度はどうなんだと怒りが沸き上がっていたが、今ではそんなことも気にも留めずシースルーグラスに映し出される映像を待ち続ける。
起動に少し時間がかかったが、すぐにグラス中央に『NRG』と何千何万回と見てきた文字が映し出された。
よしよし、今日もちゃんと問題なくプレイできる。
ちょっと前にシースルーグラスを完全放電させられていたり、廃棄品として処分されたこともあったが、そんなことでめげる俺じゃないんだよ。
さてさて、グラス中央に表示された開発会社やゲームエンジン、関係会社をぼんやり見つつ考える。
今日は……おっとそうだ、今日は新しく追加された装備を試そうと思っていたんだったな。
あの装備は鍛造素材があり得ないくらい地味な魔物のドロップアイテムだったから、集めるのに時間かかって作っていなかったんだった。
ん?そういや次の最新アップデート情報っていつ出るんだったっけ?
気になった俺は頭の中で見慣れた3色が
これだけで操作できるからこそ今の俺でもゲームがプレイできている。本当にゲームデバイス開発者には感謝の念しかないな。
さて、ブックマークからNRG攻略情報……これは違う。NRGデータベース……これも今は必要ないな。
友達の作り方……これは一時の気の迷いでブックマーク付けたサイトだ。後で削除したらいいから今はこのままで。
……NRG公式、おっ、あったあった。このページに視線を合わせて、ページを開く。
すると豪華なNRG公式ホームページが表示されるが、そのサイトのNEWS欄には新しい情報は更新されていない。
公式で出ていないならどこにもない気がするけど、こういう時は先にSNSで上げられている可能性もある。
俺は新しいタブを作って検索窓に、
作り方フレンド……違う。作り方友達……ええいうるさい。作り方仲間……もう何も言うまい。
1番最後の下の方に
公式サイトも
ま、もし新情報が出たとしても、ゲーム中に表示されるだろうからそれを見ればいいことだ。
俺は気持ちを切り替えブラウザを全て消して、さっきからずっと目の端で捉えていたSTARTの文字に視線を合わせる。
すぐにSTARTの文字が消えたのを確認すると、俺はゆっくり目を閉じ何も考えない。
するとフワリと浮遊感が覚えながら俺は、NRGの世界へと飛び立っていった。
◇◇◇◇◇
NRG、正式名称は
最後のGはGameのGで、これが無いとNRで
名前の由来は9とラグナロクを掛け合わせたもので、世界観も剣と魔法で戦う中世ファンタジーだ。
育成システムが日本人が大好きな某国民的RPGに酷似しているのに、戦闘はかなりアクション要素強めになっているから、人気に出るのも必然だろう。
それ以外にも他のゲームとは一線を画す特徴があり、それは
まず
だがここまでならば、ジョブ数が多いだけで他のRPGと大差はないだろうが、NRGは違う。
本作のジョブはレベルマックスの100、
ステータス値とは3つの数値の合計であり、その3つとはキャラクターステータス、装備ステータス、そしてジョブステータスだ。
基本的にキャラクターステータスは据え置き、装備ステータスは装備している武器・防具によって、ジョブステータスはレベルで決まる。
当然ジョブステータスは転職したら初期化されてしまい、また1から鍛え直しとなる。
つまり全ジョブカンストさせた奴とそのジョブしかカンストさせていない奴とでは、キャラクターステータスに雲泥の差ができるのだ。
キャラクターステータスに差があるということは、合計ステータスにも当然影響し、ジョブによっても補正値は変わる。
しかもジョブをカンストさせるのはかなり頑張る必要があるので、同じジョブであっても補正値によって大きくステータスが違うキャラクターが生まれるようになっているのだ。
もう1つの歴史システムはこのゲームは時間が戻らない、不可逆性であること。
MMOゲームのプレイヤーならば、一度は疑問に思ったことあるだろう。
なんで世界にプレイヤーはたくさんいるのに、みんな同じクエストやストーリーをこなしてるんだよ、と。
チュートリアルでお馴染みの薬草の納品クエストなんて初心者全員やっていたら、ギルドの倉庫がすぐに薬草倉庫になってしまうだろう。
だが本作にはそんな決められた、全てのプレイヤーがこなすべきクエストなんてものは存在しない。
始める時期によってチュートリアル場所は変わるし、最初のクエストも世界情勢に合わせた最も簡単なものに変更される。
砂漠で一定数のサボテン集めであったり、森の中の果物数個なのがその最たる例だ。
だからNRGでは初めてのクエストで何をやったか、初対面の人に聞くのが鉄板ネタになっている。
下水のネズミ退治や草原で薬草摘み、墓地掃除、酔っ払いの鎮圧を受けた者など、本当に多種多様な答えが返ってくるため、話の切り出し口として打ってつけだからだ。
こうして歴史システムはプレイヤーにランダム性のある体験させてくれるシステムであると同時に、もう1つ大事な意味を含んでいる。
それはゲームは時間が戻らない、不可逆性であること、つまりNPCも同じ時を過ごしていることだ。
これを簡単に言えばNPCも歳を重ねていき、一度完全に死んだら二度と復活しない現実世界と同じような状況となる。
いつまでも幼いNPCも、老いることなく存在し続けるNPCは存在せず、時がくれば代替わりを迎える。
それはプレイヤーたちに興された国や最強と謳われたモンスターに例外は無く、種族によって寿命の差はあれど代替わりしていくのだ。
これこそまさにNRGにはNRGの歴史が紡がれていくシステムであり、他のゲームには無い唯一無二の特徴と言えるだろう。
だからこそNRGには他のゲームには無い瞬間が生まれていく。
例えばダンジョンを最初に攻略して、初回踏破者として自分の名が表示され続けるところ。
例えば有力プレイヤーが興した国が歴史の一部になり、そしてまた他のプレイヤーがその歴史を語り継いでいくところ。
他にも多数の真新しいシステムが組み込まれたNRGというゲームだが、新田央幸が1番気に入っているポイントはジョブシステムでも歴史システムでもない。
気に入っているポイント、それはMMORPGなのに1人でプレイできることであった。
新田央幸は他の人よりプレイ時間が長い。超長い。圧倒的に長いと言っていいほどに長い。
だから人と足並みを揃えるゲームは苦痛ばかりであった。
もちろん彼もNRG以前に他のMMRPGをプレイ中、他プレイヤーの歩調に合わせたこともあったが、1日中レベルを上げ続ける新田央幸と時たまゲームにログインして他プレイヤーの差は決して埋まらない。
もっと次に進みたい新田央幸と、もっとゆっくり楽しみたい他プレイヤー、この差はパーティー内が不和の原因となり、そして1人また1人と彼の前から消えるだけであった。
他プレイヤーからシングルゲームをやれと言われた経験もあるが、なぜか新田央幸はMMOに固執し続けた。
そんな時、たまたま新田央幸の目に入ったのがNRGだった。
ソロクリア目指すプレイヤー──別名ボッチ──でもゲームを楽しめるよう、NPCを仲間にできるシステムが実装されていたのだ。
NPCを仲間にできるゲームは数多くあれど、NRGには歴史システムがあるおかげでNPCには生まれや育ち、思考パターンなど、他ゲームとは比較にならないほど設定が盛り込まれているためNPC感は覚えにくい。
それにNPCには独自のAI技術が搭載されており、育ち方や設定により言動や性格が変わるため、プレイヤーと遜色ないコミュニケーションも取れる。
このシステムがボッチでMMOを遊び続ける新田央幸に突き刺さった。
多くのプレイヤーが仲間にしたNPCを荷物持ちや雰囲気を出すだけの置物とする中、ただ1人新田央幸だけは持てる知識とお金をつぎ込み、最上級プレイヤーと同じくらいに育て上げた。
プレイヤーたちが何人も集まって攻略するダンジョンを、新田央幸はNPCを連れて攻略するほど強くなる頃には、ソロプレイでも全く寂しさなど覚えない。
ただ惜しむべきは、この鍛え上げた仲間たちをただ1人で眺めるだけで、他プレイヤーに自慢や話できないことくらいだろうか。
しかしそれ以外は、間違いなく新田央幸が望むゲーム生活を送れていると言っても過言ではないだろう。
これまでも、そしてこれからも、新田央幸はNRGと言うゲームをプレイし続けるだろうと考えていた。
そう、あの大きく運命を変える時が来るまでは……。
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